入学式はすぐ終わりそうで終わらない
まだ走る人たち!
走りながらまだ叫び合っていた。
「なんで先生はー、ハンカチ探してくれたのー!!?」
七宮のショートカットが揺れる。
「俺はなあー、急いで体育館に行こうとしたらなあー、お前らがなんか泣いてるからなあー、探してあげたんだぞー!!!」
青山先生の天パにはまだ桜の花びらが付いている。
「俺は泣いてませーん!!それでそのハンカチはー、どこにあったんですかー!!?」
七條の癖っ毛は風にのって更にハネていた。
「俺がー、隠れてお前らを見てた所になあー、風で飛ばされた感じであったぞー!!!」
「嘘つけー!なにその花びらはー!!」
「隠れてる所から出ようとしたらなあー、何かに引っかかって転けただけだちきしょー!!」
「だせーなあー!青山先生ー!」
「うるせえ…あ、ここからは静かにしろ。体育館まで丸聞こえだ」
目の前には、ドーム型の体育館があった。
3人は走るのをやめ、青山先生を先頭にドアから入る。
そこには靴を入れるであろう、靴箱が所狭しと並んでいた。
3人はどんどん進む。
「お前らはここの靴箱だからな。覚えろよ」
扉に小さく番号が記してあるが、まるで見分けがつかない。
七條と七宮は、通学カバンから体育館シューズを取り出し、靴と取り替えた。
(体験入学の時から思ってたけど、マジで多いな靴箱…何人分だよ)
七條は靴箱の異様な光景に、少し引いていた。
「あ、ここのドアから階段な。今は音立てたらすげー響くから、気をつけろよ」
ぎい…と、怪しげなドアが開く。
鉄製でできた骨組みのような階段。
「えっ、先生。体験入学の時と2階の入り方が違うんですけど…」
「ん、ここは関係者以外立ち入り禁止の近道だからな。今回は特別だぞ」
そう言って青山先生はウインクを決めた。
「先生!私は初めてなんで間違って覚えちゃいます!」
「後から覚えろ。てか体験入学は大事だから行っとけよって言われなかったかー」
「そんなことより早く行きましょう」
急いでいた事を思い出した七條は言った。
そうして3人は、2階に辿り着いた。
中から騒がしい声が聞こえる。
「何やってるんだろ?」
七宮は不思議そうに言った。
「やべえよお前ら!もう行事紹介始まってる!」
青山先生は焦りながら言った。
「え!?入学式でそんなことまでやるんですか!?」
七條はびっくりした。
「ああ。代々、梨原学園は入学式が終わった後、始業式があって、生徒会と委員会の紹介、学校行事の紹介、それから部活動紹介とか、全部いっぺんにやるんだ。だから弁当持ってこいってことだったんだよ」
「「めんどくさー…」」
「まだあれだ、最初のショートムービーやってっから大丈夫だ」
「何がですか!」
七條はツッコんだ。
(もう入学式終わってるかもって思って急いで来たのに!なんだコレ!!)
だが問題は、どのタイミングで入るか、であった。
うわっ!早く体育館の中入れよ!!!←お前が入れさせろ