煮るなり焼くなりのくだり!!!
重要物、ハンカチが消えちゃいました!
七宮と七條は呆然とした。
なぜなら、あの桃色でバラの刺繍がついた可愛らしい、女の子っぽいハンカチが、
七宮の手によって掴まれていないからだ。
先程まで、このハンカチのために(?)走っていたというのに。
「え…?ない…ですか」
さすがに長身の人も、少し驚いていた。
「おい…嘘だろ七宮…なんでちゃんと掴んでないんだよ…!!」
春だというのに、冷や汗だくだくの七條は言った。
「わ、わかんない…!無我夢中で走ってたから…」
恐怖とその他よくわからない感情が巡って、涙目な七宮が言った。
すると、意を決したのか、七宮は長身の人に向かい合わせになった。
「ご、ごごっ、ごめんなさいっ!!!犯人は私だけですううっ!だからっ!えと!死ぬ覚悟はできてるんでっ!!煮るなり焼くなりのくだりは私だけで十分ですううう!!!」
土下座して七宮は叫んだ。
「ええっ!?」
長身の人は更にびっくりした。しかし表情は目を少し見開いただけであった。
「んなこと言うなよ七宮!!俺の方こそすいません!!なんかいきなり逃げちゃってすいません!煮るなり焼くなりのくだりは俺だけでいいんで本当許して下さい!!!!」
こちらも土下座して七條は叫んだ。
「あの…煮るなり焼くなりはしませんし、怒ってないんで、謝らなくても大丈夫ですよ!」
冷静に判断したのか、長身の人は2人に応えた。
「「ええっ?」」
2人は驚きと長身の人の優しさにときめいて顔を上げた。
「ハンカチなくなっちゃったなんて、よくありますし。それに、少し楽しかったです。追いかけるの…」
長身の人は、少し微笑んで言った。だがぎこちない微笑み方ではあった。
((怖いけど…いい人!?))
2人の発見は、少し遅かったかもしれない。
「あ…ありがとう!!私を殺さなくてありがとう!!!」
「本当ありがとう!!俺も殺さなくてありがとう!!!」
「殺しませんよ?面白い2人ですねっ」
それから3人は笑いあった。
「あ、もう50分…入学式に遅れちゃいます!早く行きましょう!」
気がつくと、辺りにはほとんど人がいなかった。
「おう。行こうぜ」
3人は立ち上がった。
「あっ!あの、私トイレ行ってくるから、先に2人で行ってて!」
「え?大丈夫ですか?」
「なんでだよ。急に」
「ちょっとお腹痛くてさ〜!大丈夫、追いつくから!じゃあね〜」
そう言って七宮は北館へ向かっていった。
「…」
「じゃあ、行きましょうか!」
2人は早歩きで体育館に向かっていった。
トイレ行ってくるから先行ってて〜←あるある