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第4話 春の夜風に誘われて

Side 楓



「ふぁ・・・」


今日はなぜか早朝(五時)に目が覚めました、これは私にとってとても珍しいことです。

私は普段七時に起こしていただいていますからそのことを考えると自分で起きれたということだけでも驚きです。

今日は土曜日だということもあり早く起きることができた喜びを噛み締めつつ寝

間着から洋服に着替え、あることを思いつきました。

そして私は思いついた「それ」を実行すべく携帯を手に取りました・・・



Side 仁



俺は今、真紅に染まった両眼で正面を見つめている。

その視線の先にあるのは暗い部屋の中で唯一光を放っているテレビがあり、その画面には先ほどまで見ていた映画の終わりを告げるスタッフロールが流れている。

この映画を見始めたのは夜の十一時、しかし映画が終わった今はすでに朝の五時だ・・・長作だとは書いてあったが長すぎだろう。

俺は映画を見終わると映画を見終わったことに対する妙な達成感を感じつつも睡眠をとるためにベットにダイブした。そして深い眠りの海へと瞬く間におれの意識は沈んでいった・・・


・・・ルパンザサ〜ド♪

しかし俺の意識は携帯の着信音により海の底からサルベージされてしまった・・・

携帯のディスプレイには見覚えのない番号が映っていたので無視して寝ようとしたが急用だったら困るため電話に出ることにした。


「もしもし?」

睡眠不足のため軽く不機嫌だったので声が普段より低くなっているのが自分でもわかる。


「あ、狗桜さんですか?」

受話器からは聞き覚えのある澄んだ声が聞こえてきた・・・って


「卯月さん!?」


「ええ♪ おはようございます」


「あ、おはようございます・・じゃなくて!」


「どうかしましたか?」


「こんな時間にどうしたんですか?」


「今日は休日だから皆さんと遊ぼうかと思いまして♪」

いつもながら卯月さんはいきなり突拍子もないことを言ってくるな・・・いつもだったら喜んで遊びに行くのだがいつ睡魔によって倒れるか分からない状態ではさすがに遊びに行くことはできない。


「すいません、今日はちょっと用事があるんで行けないんです」


「そうですか、なら仕方ありませんね・・・でも写真をお渡しするために一度狗桜さんのお宅に行かせていただきますね」

写真? 俺には楓と写真を撮った記憶はない。


「写真なんていつ撮ったんですか? 俺には写真なんて撮った記憶がないんですが」


「数日前に狗桜さんを車でお送りしたとき狗桜さんが私の膝に頭を乗せて寝ていた時、あまりに寝顔がかわいらしかったので牛飼さんに写真を撮っていただいたんですよ」

頭を膝に・・・膝枕ですか!? そんな写真を他人に見られたらからかわれるにきまっている。


「えっと・・・その写真はどうするつもりだったんですか?」


「学園で皆さんにお見せしようかと♪」

なんですと!? そんなことをしたら全ての男子に殺されてしまう・・・何としても阻止せねば!


「それは勘弁してください! さすがに恥ずかしいです」


「そうですね・・・今日遊びに来てくれたらネガごとお渡ししましょう♪」

つまり行かなければ写真を学園中にばらまくということか・・・って卯月さんってこんなことする奴だったのか!?


「・・・アソビニイカセテクダサイ」

結局俺は睡眠よりも自由を取り戻すための冒険を選択した。


「では後で牛飼さんと迎えに行きますので準備しいていてくださいね」

卯月さんはそういうと電話を切ってしまった。


そのあと俺は洗面所で顔を洗い、眠気を一時的に消すことに成功した。

このままの顔で女の子と会うわけにはいかないからな。

そして家の前に出て数分すると最近ではすっかりおなじみとなったベンツが目の前に止まった。


「おはようございます、狗桜さん♪」


「よぅ、ずいぶんと楽しそうだな・・・」

卯月さんはとても楽しそうな顔をして後部座席から本日二度目のあいさつをしてきた。

俺は卯月さんの座っている後部座席の扉を開けると楓の隣に腰をおろし本日の予定、もとい卯月さんの計画を聞いた。


「で、どこに遊びに行くんだ?」


「言ってませんでしたか? 私の家ですよ」

な・・・まさか俺は知りあって一週間足らずの女の子の部屋に入れてしまうのか、いやまて落ち着けまだ部屋で遊ぶとは言っていないぞ、もしかしたら庭でキャッチボールをするだけとかあるじゃないか、期待をするのは良くないぞ・・・


「どうかしましたか?」

顔に出ていたのか卯月さんが不思議なものを見ているような顔つきでこちらを眺めている。


「いや、大丈夫だ問題ない」

俺はそう言いながらごまかすように手を振った。

それから俺たちは10分ほどくだらない話をして笑っていた、運転手の牛飼さんはただ前を見て運転をしていたが時折微笑んでいるように見えた。


「とまってください!!」

いきなり卯月さんが声を上げた。もちろん牛飼さんもびっくりだ。

車が止まると卯月さんは車から降りて小走りで駆けて行き角を曲がるとおれたちから見えなくなった。


少し時間がたち卯月さんが戻ってきた、その横にはおれの知っている人物が満面の笑顔でこっちを見て手を振っている。


「く〜ちゃ〜ん♪」

なぜ? なんであいつがここにいるんだ?


「おまたせしました♪」

卯月さんはそういうと巳琴と一緒に車内に戻ってきた。


「なんでお前がいるんだよ・・・」


「朝の散歩だよ〜」


「今日は一日中暇なそうなので家に来て一緒に遊ぼうかと」

卯月さん、とっても嬉しそうですね・・・。

そのあと俺たちはくだらないことを言いながら車に揺られていた。


「お嬢様、もう少しでつきますよ」

突然牛飼さんがそう言った。

しかし車の外に見えるのは見渡す限りの木々・・・一般的には森というんだろうな。


「卯月さんの家ってどれぐらい大きいんですか?」

巳琴が卯月さんにそんなことを聞いた、俺もそのことは気になっており高そうなベンツや専属運転手がいることからかなりの金持ちだろうから家もかなりの大きさなのだろうと思っていた。


「ここはもう敷地内ですよ」

な・・・なんですと!? 俺たち(俺と巳琴)がびっくりしていると卯月さんはその反応を見て愉快そうに笑っていた。


・・・

・・


「つきましたよ」

牛飼さんがそう告げたのは先ほどのびっくり事件が起きてから約5分後だった。


「でかい・・・・」


「おっきーです・・・」

俺たちはそれしか言えなかった。目の前にはまさにお屋敷というような壮大な家があったのだ。貴族が住んでそうだな・・・


「ささ、こんなところで間抜け顔をさらしていてもしょうがないですし私の部屋に行きましょうか」

卯月さんが何気にひどいことを言ってきたがあっけにとられていた俺にはうなずくことしかできなかった。


家の中はまさに日本の平安時代を思い浮かべるような造りで卯月さんの部屋はその家の一角にあった。


「ここが私の部屋です」

そう卯月さんは俺の家の2階の部屋すべてを合わせても狭く感じてしまうくらい広い部屋を指さして言った。


「卯月さんの部屋おっきいでーす」

まぁもっともな感想だな。

その中も畳の上に家具がおかれていてシンプル イズ ベストって感じだ。


「お好きな所にお座りください、そのうちお茶とお菓子が運ばれてきますから」

自分で取りに行くんじゃねえのか!?さすがお嬢様といったところだな。


「んで、何して遊ぶんだ?」


「そうですね・・・でもその前にひとつよろしいですか?」


「どうしたんだ?」


「お二人とも、私のことは楓と呼んでいただけませんか?」

いきなり何を言うんだか・・・


「どうしたんだ藪から棒に」


「い、いえべつに無理にそうしろということではありませんので」

珍しく卯月さんがうろたえている、まぁ呼び名なんて気にしない奴が一人いるしな。


「わかったよーかえちゃん♪」

お、はやくも巳琴のやつは呼び方を変えたようだ。


「わかった、じゃあ俺のことも名前で呼べよ」

俺だけ名前で呼ぶのは意味はないがいやだな。


「えぇ、ありがとうございます。 くーちゃん♪」

!?卯月さん・・・もとい楓、その呼び方は・・・


「なんでお前までそのあだ名つかってんだよ!」

巳琴はあきらめたがこれ以上その呼び方が広がるのは防がなければならない。


「くーちゃん怒っちゃダメだよ〜」

お前のせいでこうなったんだよ! 心の叫びを喉で何とか止めつつ巳琴をにらんだ。


「では気を取り直してゲームをしましょうか」

楓は俺の怒りを黙殺し話を進めていく、酷くね?

楓は立ち上がり棚の上から一つの箱を取り出した、その中にあったのは・・・


「百人一首でも♪」


「なんでそうなるんだよ!?俺はやらねえぞ!」


「逃げるんですの?」


「くーちゃんカッコ悪いです〜」

っく、こいつら・・・


「俺は逃げねえ・・・ただし上の句わかんねえから下の句だけ読めよ」

よし・・・俺に不利な条件は取り除いたぜ。


「そうですね・・・かまいませんわ、でもそれだけじゃ面白くありませんし勝者は敗者に命令できるというのはどうでしょう。ただし狗桜さん・・・」

え・・・なんかあんのか?


「えっちなことは無しでお願いします」

楓は顔を赤くしながらそう言ってきやがった。


「しねぇよ!」

ったくこっちまで顔が赤くなっちまうぜ。

そんなこんなで始まった百人一首、牛飼さんが歌を詠んでくれている。

現在の状況は楓20枚、巳琴13枚、俺・・・2枚。

やばいよ、あいつら5文字ぐらい言った時には手が動いてるよ!?

巳琴も意外に善戦してはいるが楓は笑顔でいとも簡単に札を取っていく。


「く・・こうなったら」

俺は最終手段を使うことにした、それは相手の手の動きを見てから反射神経だけで取るという一見無謀な作戦だ。

だが我が敵は動きが遅い、ならばきっと有効なはず。


すぱぁん!

とれた!・・・いける。そう思った矢先楓が微笑んだように見えた。


すぱぁん! また俺のほうが早くとった、これならいける・・・


「狗桜さん、おてつきですわ」

な・・・なにぃ!まさか俺の完璧な作戦の裏をかきわざと違う札のほうに手を動かしたのか。

・・・

・・

結果は俺の惨敗、当然勝ったのは楓だった。


「くそっ俺の負けか・・・煮るなり焼くなり好きにしろ」

かっこいいなぁ俺。自分の言ったことに対して満足する俺に対し


「では何していただきましょうか・・・崖から飛び降りるとか面白そうですね」


「ごめんなさい、命だけは勘弁してください」

うぅ・・・カッコ悪いな俺。


「クス、そんなにおびえなくてもよろしいですよ。今は思いつかないので思いついた時にお願いしますね」

それはそれで怖い気もするがとりあえず命は助かったみたいだな。


「あら、もうこんな時間になってしまいました・・・お二人ともお昼にしませんか?」

どうやら俺たちが熱中している間に昼になっていたようだ。


そしておれたちの前に御膳にのった豪華な昼飯が召喚された。


「おいしいれーふ♪」

食い物を口の中に突っ込みながら巳琴が賛辞を贈る。

それを見た楓は嬉しそうな顔をして食べ物を口に運んでいる。

俺たちは満足いく食事をしたあと食後の運動ということ庭に下りてきていた。


「それでは食後のゲームといきましょうか」

またかよ・・・もう頭脳系のゲームを嫌だぜ。


「狗桜さん、そんなげんなりしなくても。こんかいは運動的なゲームですよ」

まってましたよその言葉!


「で、なにをするんだ?」

いきなり元気になった俺に対し若干巳琴が引いている気がするが関係ない。


「これを体のどこでもいいので身につけてください」

そう言って紐のついた鈴を取り出した。


「これを相手から奪うさばいばるゲームです、今日は家にだれもいないので範囲は家の中にしましょう。ただしなにも壊さないでくださいね」

俺と巳琴はそのルールに納得すると開始の合図がある5分後までに家の中で隠れる場所を探すため走って行った。


・・・

・・

「いねぇ・・・」

おれは開始の合図の後数分間は隠れていたが誰も来ないため他の奴らを探しに行ったのだ。

家の中を歩いているとき不意に上から鈴の音がした。

そしてその場からバックステップで離れると天井から巳琴が降ってきた。


「よけちゃだめだよー」

そう言う巳琴の胸には鈴がぶら下がっていた。

俺は無言で近づいていく、巳琴は一歩づつ下がっていく。

やがて巳琴は体育館ほどの広さの部屋に逃げて行った。


「いきどまりだな、かくごはいいかい?お譲ちゃん」


「お譲ちゃんじゃないです!」

そう言うと怒った巳琴はとび蹴りをしてきた。

しかしおれはそれをかわすと胸の鈴を引きちぎった。


「わりぃな♪」


「まけちゃったよ〜」

残りは楓だけか・・・俺は楓を探すため部屋を出ようとしたが


「どこに行くつもりですか?」

部屋の奥から楓が歩いてきた、いたのに気付かなかったぜ。


「悪いが・・・その胸の鈴はもらったぁ!」

俺は楓めがけて走って行き鈴に向かって手を伸ばした・・・がその手は簡単に避けられてしまった。


楓は挑発的に手招きをしている・・・上等だ!

俺はその後も休まずに鈴を奪おうとするがすべて紙一重で避けられてしまう。

しかし永遠に続くかと思われたそのやりとりにも終わりがきた。

楓が俺の手をつかみ投げ飛ばしたのだ、そして俺は頭から落下しその衝撃により意識を手放した。


・・・

・・

「う・・・」

おれが目を覚ますとそこは楓の部屋だった。

そして窓辺には浴衣を着た二人が立っていた・・・なぜ浴衣?


「あら、おきられましたか?」


「まったく・・・普通頭から落とすか?」


「すいません・・・まさか狗桜さんがあそこまでいい動きをすつとは思わなかったものでつい本気を出してしまいました」

そう言って楓は頭を下げた。


「いや・・・べつにあやまらなくていい。それよりなんで二人とも浴衣なんて着てるんだ?」


「そのうちわかりますよ、それよりもご自分のことは気がつかないんですね」

自分の姿?・・・俺なんで浴衣着てるんだよ!?


「なんでおれまで・・・」


「まぁまぁ・・・ではお二人ともついてきていただけますか?」

そう言って楓は部屋から出ていく、俺たちはそのあとをついていくとやがて縁側についた。

そこから見える風景に俺は言葉を失った。

そこには瞬く星と淡く輝く月以外なんの光もない幻想的な風景が広がっていたのだ。


「私のお気に入りの風景ですの・・・お友達と一緒に見るのが夢でしたので」

そう恥ずかしそうに話す楓の顔はどこか嬉しそうだった。


そのあと俺達はしばらく話をし、楓の車で家まで送ってもらった。


今日は楓・巳琴の二人と友好を深めることもできたし有意義な一日といえただろう。

ただ・・・とてつもなく眠い。

そう言えば俺昨日から寝てないんだよな、気絶はしたけど。

俺は家のドアを開けつつ今日はもう何があっても寝ようと心に決めた。


あ・・・写真のこと忘れてたぜ(涙


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