最終話
「耀・・・」
小夜の口がそう言葉をつむいだ。
「ごめん・・・盗み見するつもりはなかったんだけど・・・」
「も、もう!やだな!いるなら、いるって言ってよ!」
小夜はやはり恥ずかしいのか、顔が真っ赤になっている。
小夜が近寄ってきて、俺の肩をバンバンと叩く。
「それで・・・聞いてたんでしょ?」
「あ、あぁ・・・」
「返事、は・・・?」
言葉に詰まる。
好き。確かに好きなのは変わらない。
でも・・・何故だろう。
さっきの悲しそうな遼の顔が頭に浮かぶ。
「俺、は・・・」
「どう・・・なの?」
すき、というこの二文字がうまく言えない。
伝えたいのに、伝えられない。
「私にエンリョ、しなくてもいいんだよ・・・嫌いなら、嫌いって言ってよ・・・そのほうが私も諦めがつくし・・・」
やばい。小夜は勘違いをし始めてる。
「俺は・・・小夜が・・・」
「私が・・・?」
「・・・俺も好きだった」
言った。言えた。遼への罪悪感が消えたわけではないが、小夜を傷つけたくなかった。
「ほんとに・・・?」
「うん」
「やったぁ!」
小夜は今までにないほどの顔で笑った。
こんなに嬉しそうな顔を見たのは始めてだ。
こんな顔に自分がさせたのだと思うと、なんだかこっちまで嬉しくなってくる。
「じゃあ、これからも改めてよろしくね!」
「おぅ」
小夜を諦めてくれた遼や、こんな俺に好意を寄せてくれた由宇には本当に悪いと思う。
でも、俺は小夜がいてくれれば、どんなときだって笑っていけると思うんだ。
ごめんな、遼、由宇。
そして、これからよろしくな、小夜。