第10話 スペース
「にゃー……ここまで広がるとは思わなかったにゃ」
聡子がしっぽを立てて呆然としている。
学校の体育館くらいの敷地いっぱいに敷き詰められた5m×5mの畑。
その数、実に二十枚!
俺もそんな光景に満足感が満ちてくる。
……が、すぐに「はて?」と疑問が浮かんだ。
「これから、どうすりゃいいの?」
「にゃにゃ?」
畑を増やし、育てる種を増やし、種が増える確率を増やす……この考えは間違っていなかったはずだ。
しかし、農園の敷地は森の木々で囲まれている。
そう。
これ以上、畑を増やすスペースが残っていないのだ。
「じゃあ、ヒロトの農園育成もこれまでニャ?」
「……そうはいくかよ」
可能性として。
農園をこれ以上発展させるためには二つの道がある。
ひとつはより強いFランクのモンスターを倒しにいくという方法。
ひいじいさんの攻略本によるとFランクのモンスターは西の村の周辺にいるらしいから、これを肥料にして、それぞれの畑を土レベル20にしていくって理屈だ。
土レベル20にすれば種が20%の確率で増えるようになる。
つまり、量より質へ移行する道。
でも、この道にはひとつ問題があった。
「問題って? 何にゃ?」
「怖いからね。俺が」
「ニャー……」
不満げにため息をつく聡子。
「じゃあもうひとつの道は何ニャ? 可能性はふたつあるって言っていたにゃー」
「うん。もう一つは農園の広さを拡張して、やっぱり畑の枚数を増やして行くって道。これならまだまだ強いモンスターと戦わずにすむぞ!」
「やれやれ……勇ましげなもんニャー」
ただこれにも問題はあった。
それは、これ以上農園の広さを拡張するには周りの木々を伐採する必要があるけど、木を伐り倒す手段がないってこと。
「にゃら、木こりを雇うにゃ」
「つっても、俺は流れモンだからよぉ。そんな伝手がねーんだよ」
「東の洞窟をさらに抜けると街があるにゃ。そこに千蔵と仲のよかった木こりがいるはずにゃ」
「マ?」
だったら農園の敷地拡張で行こう。
俺はポッケから余った5つの種を取り出して見つめた。
「お前らも早く植えてやるからな」
そんなふうに誓った……が。
話はそううまくはいかなかったのである――
「あ゛あああぁぁん!?」
ひいじいさんの日記を見て、俺は叫び声を上げた。
木こりのことは攻略本には載っていなかったから、箪笥に大量に残されていた日記に木こりのことが載っていないか調べていたのだけれど……
『東の街へ通じる洞窟には魔物が多い。ただしEランクなので瞬殺である』
いや、瞬殺なのはひいじいさんが異常に強いからであって、白骨(Gランク)にビビっている俺にしてみたら、まじヤバに違いないのだ。
「言っておくがヒロト。キサマにEランクのモンスターはまだ早いニャー」
「るせーな。わかってるよ」
「……しかし、Fランクのモンスターが相手なら、十分戦えるだけの力はあるニャー。我が保証するにゃ」
「そ……そうか」
でも、十分戦えるだけの力、か。
それでは戦闘を繰り返すうちに事故りそうなんだよな。
せめてもう少し魔力があれば……
そんなことを考えながら畑へ出た矢先だった。
「あれ、増えてる」
「こっちもニャー」
今日、枯れた花は6輪。
そのうち種をふたつ残してくれたのは、一つ、二つ……よ、四つ!?
「コイツは上振れだぞ!」
「にゃー!!」
思わず猫の手を取り踊りを舞った。
そう。
確率なんてもんは、時にはあてにならねーもんよ。
これで保留分の五つと合わせて――余る種は九つ。
もし、魔力1の俺がこれを全部食べれば魔力は10だ。
「た、食べるか……?」
次回更新、今日19時10分




