表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

そんなことより飯を食えが合い言葉

作者: フリードリヒ・ハラヘルム・タダノバカ

 畳に座布団、その上に正座して、姿勢正しく箸を持つ坊主、前庭から縁側を越えて、その横からの姿に、俺が声をかける。


「父さん」


「なんだ、息子よ」


 手に載せた飯碗から目を離さず、バリトンの声で父が俺に答えてくれたのが嬉しかった。


「なぜ人間は生きるんだと思う?」


「そんなことより飯を食え」


 それが俺と親父との合い言葉。

 金の無心に帰った時も、人生の道を聞きに帰った時も、まず俺たちは飯を食う。



 かこーん──と、中庭の鹿威ししおどしが鳴った。



 俺が自分で白飯をよそい、味噌汁と塩鮭を卓袱台ちゃぶだいに置くと、親父も箸を置いた。一緒にアレをやってくれるのだ。


「すべての命に感謝して──」

「いただきます」


 これをしないと食事が始まらない。

 親父は熱心なあの漫画のファンなのだ。特に『サニ◯』が推しだ。カラフルで長いあの髪が羨ましいらしい。


 どこからか歌が流れてくる。


 ガラガラ声の男が叫ぶ、ソリッドなロックだ。


『飯食うな! 飯食うな!』


 俺の存在はまったくないものとして、時間に溶け込んだ。




 飯を食えば、生きられる。


 飯を食う間は、どんな辛いことも忘れられる。


 飯が食えないやつだって、この世にはいるのだ。


 今日も飯が食えることに、感謝をする。




「うまいな……」

 親父がぽつりと呟いた。

「日本のコメは……なんてうまいんだ」


 ごめん、父さん──


 これ、中国産米だと思う。


 日本のコメなんて、今どき高くて買えないんだ……。




 こんな時代に、俺たちは飯を食う。


 ただ、黙って、飯を食い続けるのだ。


 生きるために──






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
タイトルに惹かれて読んだら、それ以上に禅問答で、人はこうやって悟りを開くのだなと学習しました(違)。 それはそれとして、とても良い作品でした。
アメリカ米ですらないのか!? 中国の農産物は日本から○んだモノが多いから……………味は近いんじゃないかなあ? 多分……………。 ああ、世の中世知辛い!
なんだろう、すごく泣けてきた……(T ^ T)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ