「人影④」
「でも、誰だったんだろうね。やっぱり不法侵入?」
「いや……何か目的があるのかもしれない。」
俺たちは足早に旧校舎を抜け出した。その時、校門の近くで見覚えのある人影を見つけた。
「玲奈?」
遠藤玲奈が、こちらをじっと見つめていた。普段は落ち着いた表情の彼女だが、今日はどこか険しい。
「旧校舎にいたのね……何をしていたの?」
玲奈の視線は鋭く、まるで俺たちが問い詰められているようだった。
「えっと……ちょっと調査を……?」
美咲が気まずそうに答える。玲奈は少し考え込んだあと、ため息をついた。
「あなたたち、最近学校で起きていることに気づいてる?」
「……?」
「実はね……」
玲奈は少し躊躇いながら、ゆっくりと口を開いた。
「昨日、ある生徒が“旧校舎で何かを見た”って怯えていたの。」
「何かって?」
「詳しくは言わなかった。ただ……“見てはいけないものを見た”って……。」
不穏な言葉に、美咲が小さく肩を震わせた。
「な、なにそれ、怖すぎるんだけど……!」
「それで、その生徒は……?」
「今日、学校を休んでる。」
玲奈の言葉に、俺たちは顔を見合わせた。旧校舎の人影、怯える生徒、見てはいけないもの——
「これって、やっぱり……事件?」
美咲が呟いた。
俺は無意識に拳を握る。これは、ただの噂話やいたずらなんかじゃない。何かが起きている。
「……調べてみる必要がありそうだな。」
美咲と玲奈が驚いたように俺を見る。
「悠真……」
「放っておくわけにはいかないだろ。」
そう言った俺の胸の内には、奇妙な高揚感があった。謎が深まるほど、知りたくなる。解き明かしたくなる。
そして——
隣にいる美咲が、不安そうに俺を見つめているのを感じた。
「悠真、危ないことはしないでよ……?」
その言葉に、なぜか少しだけ心が温かくなる。
「……わかってるよ。」
だが、この事件を解き明かすためには、もう一歩踏み込まなければならない。
俺はそっと、拳を握りしめた。
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