「事件?」
放課後の教室は、いつもよりも少しざわついていた。
「ねえ、美咲。私のノート、知らない?」
「え?持ってないよ。机の中とか、ちゃんと探した?」
何やらクラスメイトが持ち物をなくしてしまったらしい。ちらほらと同じような声が上がっている。どうやら、数人のノートや筆箱が消えてしまったようだった。
「これは……事件だな」
俺は机に腕を組み、状況を整理する。持ち物がなくなるというのはよくあることだが、複数人同時となると、ただの勘違いとは考えにくい。
「悠真、また推理モード?」
美咲がクスッと笑いながら隣の席に座る。あまりにも自然な流れで距離が近くなったため、一瞬ドキッとしてしまう。
「別に、ただの整理だよ。消えたのは何人分だ?」
「私の筆箱と、玲奈のノートと、あと健太の教科書……だったかな?」
「健太の?」
俺はふと視線を教室の後方へ向けるが、肝心の健太の姿がない。どうやらトイレに行っているようだった。
「……つまり、誰かが意図的に持ち物を隠した可能性がある」
「そんな大げさな話?」
美咲は少し楽しそうにしながら俺の言葉を受け流す。しかし、俺は真剣に考える。もし誰かが意図的に持ち物を隠したのなら、その理由は? そして、犯人は誰なのか?
「真剣な顔してる悠真かっこいいね」
「ん?なにか言ったか? まあいい」
「ふむ……犯人にはいくつかのパターンが考えられる。動機は嫌がらせか、単なるいたずらか……」
とっさに受け流したけど、内心めちゃめちゃ照れるんですけどぉ〜
俺は推理を進めるが、その瞬間、教室のドアが開いた。
「おー、どうした? なんか盛り上がってんな」
のんきな声とともに現れたのは健太だった。
「健太、あんたの教科書がなくなったんだってよ」
美咲が説明すると、健太は「ああ、あれな」とポンと手を打った。
「俺が隠した」
「……は?」
「いや、なんか暇だったからさ。みんなの反応見たくて隠してみたんだけど、思ったより話が大きくなっちゃったな!」
「おい、お前……!」
俺は思わず頭を抱える。あれだけ真剣に考えていた俺の推理は、一瞬で崩れ去った。
「ちょっと悠真、何カッコつけて推理してたの?」
美咲がクスクス笑いながら俺の肩をつついてくる。
「いや……俺は、ただ……」
言い訳を考える前に、美咲はさらに畳みかけるように笑った。
「やっぱり悠真って真面目すぎるんだよ。もうちょっと肩の力抜いたら?」
「……うるさい」
俺はふてくされながら、窓の外を見つめた。しかし、美咲の笑顔が少しだけ可愛く見えたのは、気のせいということにしておく。
2話です!
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