「人影⑩」
屋上にいた人物は・・・・・・・
見慣れた「人影」だった。
「健太!!!」
「今日は部活は?」
真っ先に反応したのは美咲だった。
「健太、お前が旧校舎にメモを残していたのか?」
「ああ.....」
普段から騒がしい健太の口がゆっくりと動いた。
それと同時に屋上の扉が鈍い音を立てて開く。
屋上に向かう途中別れた玲奈が涼太を連れてきたのだ。
「ごめんなさい、遅れたわ」
少し困惑している様子の涼太が玲奈の後ろから顔を出した。
「屋上になにがあるっていうんだ...」
「これで役者は揃ったな」
俺は少しカッコつけて言ってみた。
「うわ、出たよ、なにもわかってないくせに!」
すかさず美咲がおちょくってくる。
「俺が推理するんじゃないよ、こいつが全て話してくれる」
「な?健太」
俺が名前を呼ぶと健太は少しも動揺する様子を見せなかった。
「悠真、お前は今回どこまでわかっているんだ?」
「ある程度は...」
実際のところ手がかりが少なすぎて全くなにが起きているかわからない。
しかし見栄は張って損はない。
また美咲にばかにされるのかなぁ....
「そうか、なら全部話してやるよ」
俺はその言葉に心から安堵した。
健太が馬鹿で良かった。
いや、なんでもない。
「まず旧校舎でお前らが見かけたもう一人の人影、それは俺だ」
逃げ足の速さから男だろうと思っていたが、まさか健太だったとは、
そして健太は話を続ける。
「別に俺も面倒事は嫌いだしあの時は逃げちまったんだ」
「なるほどね」
隣で健太の話を一生懸命聞いている美咲は素という感じで何故か新鮮だった。
健太の話を一つずつ理解していた俺は、ついに事件の真相を追求した。
「それで、お前は旧校舎でなにをしていたっていうんだ?」
「逃げるようなことをしていたのか?」
「てかそもそも今日部活は?」
「おおお待て待て」
俺の激しい質問攻めに健太は困惑していた。
「まず、涼太、お前の兄ちゃんは何部だった?」
これまで黙り込んでいた涼太がいきなり話を振られビクッとした。
「サッカー部だったよ......」
「だよな、だって俺の先輩だったからな」
!!!!!
健太にそんな接点があったとは予想外だ。
俺は馬鹿すぎてそんなことにまで頭が回らない。
俺は所詮ただの根暗陰キャなのかぁ......
「お、おい悠真どうしたんだよ急に膝なんかついて」
え?あ、
俺は無意識のうちに落胆していた、体全体でショックを受けていたらしい。
「ちょっとキモいよ悠真........」
隣でドン引きしている美咲を見てさらに悲しくなる。
その光景を見ていた玲奈と涼太は恐怖のあまり屋上の出口に後ずさりをしていた。
.................何だこの状況...............
「気を取り直して話を続けていいか?続けるからな?」
「涼太先輩は周りになにかを喋ることを嫌ってた、でも......」
俺たちは健太の言葉に全集中の呼吸で聞き入った。
健太は一体どのようにこの件に関与しているんだろうか。
「でも先輩が卒業する少し前、先輩のある噂が出回ったんだ」
「それは......」
いよいよ人影編もクライマックス!
次の話ぐらいで人影編は締めようかとおもいます!
良ければブクマ評価などよろしくお願いします