「人影⑧」
「誰かいる……?」玲奈が緊張した声を出す。
俺はそっと足を踏み出した。そして——。
「……誰だ?」
返事はない。しかし、何者かがそこに潜んでいるのは間違いなかった。俺はさらに近づき、意を決して棚の裏側を覗き込む。
それにしてもなんで旧校舎はこんなに物音がするんだ。
「——っ!」
その瞬間、何者かが勢いよく駆け出した。
「待て!!」
俺は反射的に追いかける。そいつは素早く教室を飛び出し、廊下を駆け抜けた。俺も必死に追いかけるが、相手の動きは想像以上に速かった。
「悠真!」美咲が叫ぶ。
「お前らは後ろにいろ!」
俺はそう言いながら、廊下を全力で走る。曲がり角を抜け、旧校舎の階段を駆け下りようとしたその時——。
**ドンッ!**
「うわっ……!」
突然、背後から何かにぶつかった。
「いった……誰だ!?」
「ちょ、ちょっと待って……!」
俺が振り返ると、そこには——。
「美咲……!?」
俺の背中にぶつかったのは、美咲だった。どうやら俺を追って走ってきたらしい。気づけば、彼女は俺の腕をしっかりと掴んでいた。
彼女の体は細かく震えているようだ。
「はぁ、はぁ……悠真だけに任せられないって……!」
「お前な……。」
俺は思わず苦笑する。けれど、美咲が必死に追いかけてきた理由が何となくわかる気がした。
「……ありがとな。」
「え?」
「一人で突っ走って、悪かった。」
「そ、そんなの……気にしなくていいけど……。」
美咲は一瞬驚いた表情を見せたが、次の瞬間、頬を少し赤く染めてうつむいた。
「と、とにかく……早く追いかけないと!」
「……ああ、そうだな。」
俺たちは再び駆け出した。
旧校舎の謎の影——。そいつは何者なのか。目的は何なのか。そして、俺たちがこの事件の真相にたどり着いた時、何が待っているのか。
涼太の兄のノートと今回の件どのような関係があるのか
そんなことを考えながら、俺は美咲と並んで走り続けた。
11話です。
今後もよろしくお願いします!