生き延びるために
異世界で目覚めた俺、佐藤亮介は、命からがら巨大な昆虫の化け物から逃げ延びたものの、次なる問題に直面していた。それは、水と食料だ。
気がつけば数時間が経過している。体力を使い果たし、喉はカラカラだ。何も食べていないため、胃が痛む。だが、危険な森を抜ける目処が立たない以上、まずはこの過酷な環境で生き延びるための手段を考えなければならない。
「とにかく、水を探さないと……。」
思い出すのは、サバイバル知識の断片だ。水がなければ、数日も生き延びられない。俺は一度深呼吸し、冷静さを取り戻そうとする。
水を探すには、低い地形や植物の集まりを見つけるのがいいはずだ。特に、苔やシダ植物が多い場所は湿気が高く、水源が近い可能性がある。俺は木々の間を慎重に進み、少しずつ周囲を探索することにした。
しばらく歩いていると、小さな谷を見つけた。そこに下ると、地面がしっとりと湿っていることに気づいた。俺は更に進み、やがて小さな流れが見えてきた。
「やった……!」
水を見つけた喜びがこみ上げるが、すぐに冷静になる。念のため、この水が飲めるかどうかを確認しなければならない。見た目は綺麗でも、未知の異世界では何が含まれているか分からない。
俺は手持ちのハンカチを水に浸し、それを少し絞って口に含んだ。すぐに飲み込まず、少しずつ味を確認する。苦味や異臭がないかを慎重に感じ取った。幸い、問題なさそうだ。
次に、直接手ですくって少量を飲んでみる。体に異常が出なければ、この水は使えると判断できる。
「……大丈夫そうだな。」
胸を撫で下ろし、再び水を飲む。体の隅々にまで水が染みわたる感覚が心地よい。これで少しは体力を回復できるだろう。
次は食料だ。この異世界には、俺の知る動物は存在しないらしいが、植物や昆虫の化け物は見つかる。森の中を歩いていると、木の実のようなものがいくつか見つかった。
「これ……食えるか?」
だが、食べる前にパッチテストだ。昔、テレビで見た方法を思い出し、俺は慎重に行動する。まず、その実を割り、中の果肉を少しだけ腕の内側に塗る。しばらく待ってみて、異常がなければ口に含み、少量を噛んでみる。
「……大丈夫……かな?」
少しずつ、時間をかけて確認しながら食べる。何とか胃に収まった。これで少しはエネルギーを補充できるだろう。満足とはいかないが、命を繋ぐには十分だ。
3日が経過した。
相変わらず森を彷徨い続ける毎日だが、幸運にも水場を確保できたおかげで生き延びている。昆虫の化け物も現れたが、今のところ遭遇を避けることができている。
だが、この生活がいつまで続くのか分からない。異世界での孤独なサバイバルは、俺の精神を徐々に蝕んでいく。
「誰か……いないのか……。」
誰にともなく呟くが、返事はない。答えるのは、森の風の音と、不気味な鳴き声だけだ。
しかし、このまま諦めるわけにはいかない。この異世界で、生き延びてやる。そして、いつかこの場所を抜け出してみせる。俺は固く決意を胸に秘め、再び森の中を歩き始めた。