火種を撒くな
バレンタインデー。好きな人にチョコレートを渡し、愛を伝える日である。チョコレートなのは日本のお菓子業界がやりだしたことなので、諸外国だとやることが違うから気を付けろよ。
今では友チョコや自分チョコなんかもあるし、もうチョコにこだわらなくなってきているイベントではあるが、なんだかんだ皆楽しみにしている節はあるだろう。
しかし昨今、お金がかかることや準備の大変さ、また手作り品を不用意に人にあげないためにと、バレンタインのお菓子のやり取りを禁止する会社や学校は多い。なので贈るのはもっぱらプライベートな人間関係に限られてくる。
そして日本のバレンタインは根底に「好きな人へあげる」があるため、例え義理だとしても他人からチョコを貰ったということでカップル間の諍いになるケースも少なくない。
義理だと分かりやすい商品にしたり、特定の相手以外にもちゃんと配っているならいざ知れず、どう考えてもそれは義理として贈るものではないだろうというお菓子を贈ろうとする人がいるのも事実。
今回はそんなバレンタインのチョコレート問題であった。
『20代女、既婚。子どもが一人います。私はイベント事を存分に楽しむのが好きで、バレンタインやクリスマスなどにお菓子を作って人に贈りたいタイプです。ですが、夫は手作りのお菓子が嫌いな潔癖タイプで、私の作ったものを食べてはくれません。なので、イベントを楽しむためにと、ママ友の旦那さんにチョコをあげたいとママ友に言ったところ、距離を置かれてしまいました。義理だと言ったのですが理解してもらえず悲しいです。カケデラさん、どうしたら受け取ってもらえると思いますか?』
『受け取ってもらえるどころかそのまま孤立して子どもまで距離置かれるので今すぐやめなさい。』
カケデラの目は真剣なものになっていた。顔は隠しているのでその姿はスタッフにしか見えないが、声にそれがにじみ出ている。
子どもが巻き込まれる可能性がある以上、何としてでも止めなくてはならない。
『人の配偶者に手作りのチョコなんて、どう考えても勘繰られますし誤解もされますよ。あの人は人の男に平気で手を出そうとしていると思われるに決まっているでしょうに。どうしてそれが分からないんです、自分だって配偶者がそんなもの受け取ったら嫌でしょう。』
『旦那さんが潔癖タイプだからそんなもの受け取ってきませんよ~という本質が分かってない返事は結構です。手作りで分からないなら、ゴ〇ィバの最高級チョコだと思えばよろしいのでは?どう考えても義理に見えないチョコを他の女から受け取ってきたらあなた、許せるんですか?絶対出来ないと私は断言しますね。』
『そもそもイベントを楽しみたいというくせに、何でママ友の旦那さんにあげるなんてことになるんですか。そんなにイベントで手作りのお菓子を作って御馳走したいなら、子どもの友達やママ友と一緒に家でパーティーすれば済む話です。それをせず、旦那さんにあげると言ってる時点で、あなたに下心があると警戒されるのは当たり前です。』
『自分の配偶者を狙おうとしている奴から離れるのは当たり前の行動です。下手すれば自分の家庭が崩壊しかねない。そんなつもりはないと言っても通じません。他人には取った行動による結果が全てです。他人の旦那に手作りチョコをあげるという非常識行為をしているのが全てです。そこにあなたの真意など関係ない。』
『そして他人の旦那を狙う非常識女と言うレッテルが貼られれば、あなたの子どもは避けられることになるでしょう。子どもは意外に大人を見ているものです。自分の親の不和を起こした張本人だと思われれば、その子どもは攻撃の対象でしかない。あなたはバレンタインに喜ぶ小学生じゃないんです。一人の子どもの人生を背負う親なんですよ。いい加減大人になりなさい。』
『あとついでに言っときますが、このご時世他人の手作りを喜んで食べる人はそう多くありません。家族や恋人、友人など近しい関係なら良いですが、ただの他人でしかないあなたが手作りをあげても気味悪がられるだけです。もしあげたお菓子で相手が体調不良になったら責任が取れないでしょう。手作りをいっぱい配りたいというその考えも改めなさい。』
真っ青だった。
配信を聞いて相談者はようやく自分のやろうとしていたことを客観視出来た。
自分には下心も何もなく、ただバレンタインは男性にチョコをあげる日だからそれを目一杯楽しみたいと思っていただけ。しかし、行動だけ見ればその真意など伝わるわけがない。他人の夫を狙う略奪女にしか見えないのだ。
なにより怖かったのが、それが巡り巡って子どもに来てしまった場合。母親が非常識だからその子どもも避けようと思われてしまえば、子どもの人生を閉ざしてしまう。
ダメだ。こんなことをしていてはいけない。
翌日すぐにママ友に謝罪をした。誠心誠意謝り、本当に旦那さんにはそういう気持ちはないと頭を下げ続けた。
結果として孤立は避けられた。バレンタインに対する固定観念を改め、子どもたちとチョコパーティーしないかとママ友たちに持ち掛けてみたところ、いいねいいねやろう!とパーティーをすることが決まった。
以前より仲良くなれた気がした。
相談者
イベント事大好きな人だが、夫が潔癖気味でその辺が楽しめず、まさかのママ友の夫にチョコを贈ろうとしていた。
カケデラにメタクソに言われ、子どものことを言われようやく目が覚めた。ママ友には謝罪し、イベントの楽しみ方を変えていこうと決めた。
ちなみにマジで下心はない。ただバレンタインは男の人にチョコをあげるイベントだと考えが凝り固まっていただけ。
カケデラ
人生相談系動画配信者。
他人の夫にバレンタインのチョコあげるとかどう見ても下心にしか見えんと相談者に説教。まだチョコのやり取りが許されている会社でも、既婚者や恋人持ちにあげるならその辺気を付けてあげなくてはいけないという考え。既製品の、高くないチョコ詰め合わせくらいがちょうどいいと思う。
相談者一人が嫌われるなら知らんが、子どもが巻き添えになるなら全力で止めに行く。子どもの未来を奪うな!