謝罪にもルールがある
謝罪とは…
自らの非を認め、相手に許しを請う行為である(Wikipediaより引用)
人生、いろんな場面で謝罪することがあるだろう。
子どもの時に悪戯や危険行為をして謝ること。他人に危害を加えてしまって謝ること。大人になって、理不尽ではあるが頭を下げることもあるだろう。
謝罪は自らの非を認めること。引用部分にあるが、許しを請う行動なのだ。しかし、許しを請われても許せないことはいくらでもあるし、許されないことを責める謂れもない。
今回は、そんな謝罪に関する話。
『40代男。私には病床に付している友人がいます。その友人が、昔酷いことをしてしまった相手に謝罪をしたいので立ち合って欲しいと頼んできました。私はそれを受け入れ、友人の謝罪場面に立ち合いました。しかし、相手は友人を決して許してくれず、険しい顔でその場を立ち去ってしまいました。友人は病気でもう長いことはないですし、そんな相手に対してなんて対応をするんだと憤っています。友人にまだ人に会う元気があるうちに、相手から許しを引き出したいです。どうしたらいいですか?』
『そもそも前提が間違っている。あなたのご友人さん、別に反省も後悔もしてませんよ、その謝罪方法じゃ。』
カケデラは謝罪方法が間違っていると指摘した。そこから、友人は別に反省していないと見ている。
『そもそも謝罪は自分が間違っていることを全面的に認め、その間違いについて詫びる行為。許しを請う行為ではありますが、許しを「請う」のであって「許される」行為ではないんです。謝罪するのは結構ですが、別にそれを相手が受け入れなくても良いんです。謝罪されても許さない。当たり前です。自分を酷く傷付け苦しめた相手にやる許しなどありません。』
『謝罪にもルールがある。それが、加害者側、つまり謝罪する側に味方を置いてはいけないということです。特に「こんなに謝っているのにどうして許してあげないんだ!」と言う身内は決して置いてはいけない。加害者を擁護する存在がいる時点で、加害者と被害者の立場が入れ替わってしまう。それはつまり、自分は相手に許されない被害者で、可愛そうなヒロインヒーローなんだと見せしめていることになる。そんなことしている人間のどこに反省があるとでも?』
『そもそも、何故友人さんは病気になってから謝罪しているのですか。本当に反省しているのなら、そうなる前から謝罪するものでは?病気で余命幾ばくもない、許されない私。あぁなんて悲劇の主人公なんでしょう。そう思ってますよ多分。そんな打算的な謝罪がありますか。』
『そんな状態なら味方も増やしやすい。謝罪しても許されない、けれど周囲はみーんな自分の味方。自分が手を出さなくても周りが攻撃してくれる。なんて一石二鳥。これで自分は悲劇の主人公。相手は最低最悪のヴィラン。そして周りはそんなことにも気付かず今日も攻撃してくれるんだろうなー。現実はこれですよ。これをあなたはしているんです。病床に付しているという免罪符で、今までの全てをチャラにしようとしている卑怯者の味方をあなたはしているんですよ。目を覚ましなさい。』
『加害者を取り囲み、謝罪の強要をするのは強要罪に当たるんですが、正直許しを強制するのも強要罪で良いんじゃないかと思うんですよねぇ。子どもの頃は許すのが美徳とありますが、それは内々で済ませられることに限りです。謝罪しようと慰謝料を払おうと、許されないことはいくらでもある。だから法律があるんでしょうが。もう、その友人の味方をするのはやめなさい。』
相談者は青褪めた。しかし、冷や水をぶっかけられたおかげで目が覚めたのだ。
相談者は友人から、謝罪相手にしたことを「酷いことをしてしまった」としか聞いてない。それがそもそもおかしいということに気付いた。
本当に罪の意識があるのなら、センシティブなことは伏せるにしてもある程度の説明はするだろうに。それが無いということは、言った時点で相談者が味方になってくれないだろうと見越している可能性がある。
そこで相談者は、友人の周囲にあれこれ聞いてみた。友人が謝罪相手に何をしたのかと。
すると、出るわ出るわ耳を塞ぎたくなるような蛮行。そして相手が謝罪を受け入れない決定的なものが、友人が親の形見を盗み、捨てたことであった。
大切な親の形見を、相手が大切にしていると分かっているものを、だ。
証拠と言う証拠を携え、相談者は友人を問い詰めた。友人は冷や汗をかいて黙っているだけ。それがもうクロだと言っているに等しかった。
目の前が真っ赤になった。友人だと思っていた相手は、人の尊厳を踏みにじり、大切なものを下卑た顔で盗み捨ててしまうような人間だったのだ。
そしてきっと、そんなことをした理由など大したことじゃない。ちょっと気に入らないとか目に付いたとか、そんな程度だ。こんな奴、許されなくて当然である。
相談者は友人と縁を切った。それを友人は泣いて止めたが聞く気はない。そして、その足で謝罪相手に会いに行った。
自分の味方はいない状況で、頭を深く下げ謝った。許しの強要をして申し訳なかったと。自分のことも許さないでくれと。
それを相手は「謝罪だけは受け取ります。許しはしませんが」と言い立ち去った。
いい歳にもなって、謝罪の方法も分からなかったなど滑稽にもほどがある。だが、今後許しの強要を見かけたとき、それを止められるようになろうと相談者は心の中で固く誓った。
相談者
許しの強要をしてしまった。病床にいる友人が加害者なのに、まるで被害者のように見えてしまったため。
カケデラに言われたことで目が覚め、友人の言動がおかしいことに気付き裏を取った。その結果、許されないほど最低なやつだということを知る。
友人とは縁を切り、相手には謝罪した。ついでに友人の周辺に根回しもしていた。
友人の周囲にはもう誰もいない。自身の罪を正当化し、被害者に成りすまそうとした代償はとても重い。
カケデラ
人生相談系動画配信者。
謝罪にもルールがあると彼は言う。加害者の肩を持つような味方を付けている時点で、それは謝罪ではないと断じる。
許されなくてもするのが謝罪であって、許される前提の謝罪などない。相談者の友人はかなりのクソだなと思っている。