表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/54

第17話:強くなるために

 ゲームシステム上、魔法の習得にはレベルとステータスと前提になる魔法を習得し熟練度レベルの条件を満たしている必要がある。


 例えば〈風槍エア・ランス〉の習得条件はレベル10以上で〈風刃〉の熟練度レベルが5以上であること。この条件を満たせば容易に習得できる。


 他の系統魔法も同じ。俺は火系統、水系統、土系統の残りの基本四系統の魔法を同様の要領で覚えていた。


 だから、新たに覚えた氷系統や他の系統魔法も同じだと思っていたのだ。


 それで苦戦した。


「〈雪槍スノー・ランス〉!」


『習得条件を満たしません』


 システム音が頭に響くが、肝心の習得条件が提示されない。レベルをどれだけ上げればいいのか、何の魔法の熟練度レベルを上げればいいのか。基本四系統の魔法はヒントを提示してくれるのに、他の系統魔法にはそれがない。


 師匠の言う魔法の得手不得手。ゲームで主人公レインが基本四系統の魔法しか使えなかった理由がこれか……?


「レイン、調子はどう?」


 少し離れたところでミナリーの魔法を見ていた師匠がこちらに近づいてくる。

師匠がこの村に来て早一週間。周囲の景色はすっかり雪景色に代わり、体の芯まで凍えるような寒さが漂っている。


「……あんまりよくありません。〈雪刃スノー・カッター〉までは習得できたんですが、その先の〈雪槍〉がどうしても習得できなくて」


「なるほどね。他の系統魔法も同じ感じ?」


「はい。師匠、何かヒントはありませんか?」


 出来れば何レベル必要でどの魔法の熟練度レベルが幾つ必要だとか教えてくれるとありがたい。……さすがに無理か。


「そうね……。レイン、魔力を感じなさい」

「ま、魔力ですか……?」


 思ったよりもスピリチュアルなアドバイスが返ってきた。意味がわからず首を傾げていると、師匠は困ったように笑う。


「やっぱり、レインって天才なのね。普通、魔法を憶えるにはまず魔力を感じる特訓から始めるものなのよ?」


「魔力を感じる特訓……?」


「そう。この世界は魔力に満ちている。それは大地が発する魔力であったり木々が発する魔力であったり、私たち人族や魔物が発する魔力だったり」


「それは……」


 確か、設定資料集にも書かれていたな。この世界は生きとし生ける全てのものが発する魔力で満たされている。それが様々な超常現象……いわゆる魔法を発現させるトリガーになっているのだとか。


「魔力を感じることで、自分の体内にある魔力をコントロールする術を身に着けるの。そしたら自ずと、思い通りの形に魔力を操ることができるわ。こんな風に――〈雪槍〉!」


 師匠が突き出した左手に魔力が集まり、淡い青白い光が雪の槍を形作って放たれる。


 それは近くにあった木を根元から容易くなぎ倒した。


「凄い……」


 精度、威力ともに桁違いの実力を感じさせる。師匠の魔法は百発百中。ゲームではわかりづらい部分だが、その理由が圧倒的な魔力コントロールによるものだと今ならわかる。


「魔力を感じる、か……」


 ステータスで言うと〈MP〉や〈魔攻〉の事だろうか。


 ……いや、どうも違う気がする。


 ステータスに表れない何か。それこそ、感覚的なものだろう。俺は基本四系統の魔法を使うとき、無意識的に魔力をコントロールしている。それを意識的にコントロールするようにすれば、他の系統魔法にも応用できるかもしれない。


 ……やってみよう。


 それから俺は、魔力を感じる特訓に一日の大半を費やすようにした。冬の時期は吹雪になることも多い。外に出られない日は家の中で師匠が子供の頃にしていたという瞑想をして過ごす。


 初めは曖昧だった体内の魔力も、ひと月が過ぎる頃にはようやく少しずつ感じられるようになっていった。体内を血流のように流れる魔力。それを意識的に手に集めて霧散させる。ステータスを見ると魔法を使っていないのにMPが1消費されていた。


 これが魔力をコントロールする感覚か。まだ上手く行くのは10回に1回程度だが、成長が実感できる。


 何より重要なのは、ゲームシステムに囚われない魔力の使い方が出来ていることだ。もしこれを極めれば、オリジナル魔法が作れるんじゃないか……?


 そんな可能性に期待が膨らむ。


 ……けれど、それ以上に膨らんでいるのが不安だった。


 年が明けてしばらくが経ち、オークの襲撃まであと2か月に迫ろうとしていた。


 安心はできない。師匠がこの村に滞在しているとは言え、俺とミナリーが誘拐されたように不測の事態はいつどこで起こるとも限らないのだ。俺はもっと、強くならなくちゃいけない。


 日中は晴れていたらMPが尽きるまで魔法を使い、吹雪の日は家の中で瞑想を繰り返す。そして夜、両親や師匠が寝静まった頃に俺はこっそりと家を抜け出す。と言っても、雪かきをした庭先までだ。


 そこで、父さんから拝借した訓練用の木剣で素振りをする。


 ゲームの『HES』では、俺は主に剣を使って戦っていた。と言うのも、敵のボスキャラクターのほとんどが基本四系統の魔法に対する耐性を持っている上、ストーリー中盤に強力な聖剣〈クロスキャリバー〉が手に入る。


 そこからは魔法を使うこともなくなり、聖剣一本で最後まで行けてしまう。だから周回プレイでは初めから剣を使い続けて熟練度レベルを上げ、強力な剣術スキルで戦うのが基本だった。


 オークの襲撃に備え聖剣を取りに行くことも考えたが、聖剣を扱うにはレベル50かつ剣の熟練度レベルを30まで上げる必要がある。その条件を満たさなければ、剣をダンジョン奥深くにある台座から抜くことが出来ないのだ。


 こっちの世界に来てすぐ、到底間に合わないと考えて諦めた。当然、今さら剣を振ったところでじわじわと剣の熟練度レベルが伸びるだけ。今のステータスと村で手に入るなまくらでは、オークの相手にもならないだろう。


 ……それでも、剣を振らずには居られなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ