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第15話:師匠と弟子たち

 アリスを連れて村に戻った俺たちを、カインやレティーナは驚いた顔で出迎えてくれた。誘拐事件の事はまだ村まで伝わっていなかったようで、ギルドマスターが持たせてくれた手紙を見て二人とも心底驚き、命の恩人であるアリスをこれでもかというほど持て成した。


 そのままアリスは俺の家に滞在することになり、一夜明けた今日から魔法の授業が始まることになっていたのだが。


「…………遅い」

「まだ寝てるのかなー?」


 とっくに太陽が昇って昼前になろうかと言うのに、アリスが部屋から出て来ない。俺とミナリーは準備万端で待っているのだが、あの人は何をしているんだろうか。


 ……そう言えば『HES』に登場するアリスもだらしないというかズボラな人だったな。主人公を拾った彼女はやがてオーツ近くの森の中にログハウスを建てて暮らすのだが、私生活が色々壊滅的過ぎてほとんどの世話を主人公がしている描写があった。


「はぁ……。起こしに行くか」

「うんっ!」


 俺はミナリーと共にアリスが泊っている部屋に入る。昨日まで物置兼ミナリーが泊りに来た時に使っていた部屋だ。まあ、ミナリーは夜になったら俺の部屋に来てそのまま俺のベッドで寝ていくからほとんど使っていなかったのだが。


 少し肌寒い部屋の奥。ベッドの上で厚手の布団がもぞもぞと動いていた。やっぱりまだ寝ていたらしい。


「おはようございます、師匠。もう朝です。起きてください」


「んぅー…………ぁと、ごじかん……」


「どれだけ眠るつもりだよ。早く起きてくれ」


「んもぉー、アリシアったら寂しがり屋さんなんだからぁー……!」


「うわっ!」


 アリシアってそれお前の妹だろと思っていたら、布団の中から伸びてきた手に捕まれてベッドに引きずり込まれた。そのまま器用に布団の中へ飲み込まれ、足を絡みつかせながら抱きしめられる。


 に、逃げられない……ッ!


 顔に押し付けられる柔らかな弾力。肌の感触と温もりが直に伝わってくるのだが、もしかして服を着ていないのか!?


「うふふ……」

「放せ、この……っ!」


 アリスのレベルは現時点で確か50以上。ステータスでは遠く及ばない。自力での脱出は困難だ。


「ミナリー、助けてくれ!」


 俺はミナリーに助けを求めた。ミナリーは唇に人差し指を当てて少し考えこんでから、


「わたしも一緒に寝る!」

「なんでだよっ!」


 そのまま俺を挟み込む形で布団に潜り込んでくる。しかも俺にギュッと抱き着いてくる。


 二人に前と後ろから抱き着かれて、俺はとうとうまったく身動きが取れなくなった。


 くそぅ……。


 その気になれば強引に抜け出せるものの、天国のような空間に心地よさを感じてしまっている自分が居る。


 そのままどれだけの時間が過ぎただろうか。


「んぅー! よく寝たー」


 ようやく目を覚ましたアリスが、ベッドの上に座って伸びをする。


「うぅ~さむさむっ…………って、あら?」


 布団を胸元に寄せた際に、ベッドの中に俺とミナリーが居るのに気付いたらしい。アリスは不思議そうに首を傾げる。


「どうしてレインとミナリーが私のベッドに居るの? あ、もしかして寒くなって入って来ちゃったんでしょ~? んもー、レインったらエッチなんだから。勝手に女の子の布団に潜り込んじゃダメよ?」


「…………善処します」


 様々な感情や言葉を飲み込んで答える。


 引きずり込まれないように強くなろう。


 そう思った。


 何はともあれ、ようやく魔法の授業の時間だ。


 昼食の後、三人で分厚い外套を着こんで村はずれにある小高い丘を目指す。普段から俺とミナリーが魔法の練習のために使っている場所だ。ここならどんな魔法を使っても村に迷惑はかからない。


「それじゃ、まずは二人がどれだけの魔法を使えるのか、私に見せてくれる?」


「わかりました、師匠」

「はいっ、しちょう!」


「し、師匠……?」


 俺とミナリーの返事にアリスは困惑した表情をする。


「えーっと、私のことは先生って呼んで欲しいんだけど……。ほら、家庭教師なんだから」


「わかりました、師匠」

「しちょう!」


「全然わかってないし市長だし……」


 先生と呼んで欲しいと言われてもな……。アリスは『HES』の主人公にとって魔法の師匠だ。一部プレイヤーからは『初期魔法しか教えない無能師匠』だとか『いつの間にか暗殺されて死んでいる雑魚師匠』だとかネタにもされているが……。


 そういった部分も含めて『HES』プレイヤー達から『師匠』という愛称で呼ばれているのがアリス・グリモワールという少女なのだ。


 俺も掲示板に書き込む際はキャラクターネームではなく『師匠』呼びだった。今さら『先生』は違和感がある。


「……はぁ。まあ、呼ばれ方にこだわるつもりはないから良いんだけどね……。アリシアもそうだけど、このくらいの子って反抗期……?」


 師匠は難しい表情で首を捻っている。何はともあれ諦めてくれたようで何よりだ。


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