化け猫道中
「あんな恨みの塊と一緒にするな」
化け猫は2つに分かれた尻尾を自慢げに揺らしながら
「我は数百年生きた猫又だ もっとも同族は殺され、我も一度殺され、恨みから化け猫にはなっているが」
化け猫はいや、猫又は少し悲しそうな顔をしたように感じた
近づいた猫又を見て光は思っていた
喋る意外は普通の猫の大きさだ
まだ襲われたわけでも、見たら死ぬたぐいの妖怪でもない
それに猫又は会話をしようとしている
恐ろしくはあるが、好奇心もある
光は、少し恐怖が薄れた気がした
「でだ 人間 聞きたいこととは この辺で九尾の猫を見たことや噂を聞いたことはないか?」
猫又は光の足元まで近づき光を見上げながら聞く
「し…知らないです」
絞り出した声は小さく 夜の闇に吸い込まれていった
「お仲間か何かですか?」
猫又は怒気を纏った声で答える
「あんな奴が仲間だと? 同族と我を殺した奴を仲間だと?
百年近く怨み探してる奴を仲間だと 其方はそういのか?」
猫又はいつのまにか3メートル近い大きさになりながら光に迫る
光は今度は耐えきれずに腰が抜ける
「九尾の猫なんて聞いたことないですし 狐じゃないんですか?」
猫又は琥珀色の目で光を見下ろしながら
「我が猫と狐を間違えたとでも?」
猫又の怒気がつよまり、同時に光は寒気を感じた
妖力というものがあれば確かに今感じるものがそれだろう辺りの温度が下がった気がした
恐怖が薄まったと思っていたが猫又が力の一部も出していなかったのが、今はわかる
「き…き…狐は化けるといいますし」
「狐とは流石に間違わん しかし猫以外の怪異はありえるな」
猫又は少し怒気を抑えた声になっていた
「魂に刻まれた微かに香る楓の香りと強い恨みの匂いに邪魔されてわからなかったかたが 魂の奥に香る狂気と血の匂い 其方も同族を殺されたか?」
光は心臓を掴まれたかと思った
胸が苦しく痛む
下を向き苦しく痛む胸を押さえ、声を出す事が出来なかった
猫又は光の顔を覗き込む
琥珀色の目が怪しく光り
暫く光の顔を琥珀色の目で見た後
一瞬悲しそうな顔をした後
「両親と妹か」
光は頷くしかできなかった
暗く重い感情を体を支配していく
それでも光は声を絞り出す
「な…なんで」
猫又はいつの間にか、普通の猫の大きさに戻っている
「我等一族は仙狸とも呼ばれていた 多少の神通力ぐらいなら使える 過去を少し見るぐらいならできる」
「は…犯人も見えましたか…?」
猫又は首を振る
「そこまでは見えないな だが間違いなく妖の仕業だ」
猫又は続ける
「取引をせぬか? 其方の仇も我がとってやる 其方は怪奇譚の噂を集める手助けをしろ 何も手がかりがないなか地道に行くしかない なに100年も手がかりがなかったんだ 足がかりぐらいにはなるだろよ」
光は顔上げる
立ち上がり猫又を見つめる
小さく頷く
仇は取りたいと思っていた
ネットで調べもした
面白おかしく書かれた記事に憤りながら
噂も確かめてみた
しかし高校生の光には限界があった
怪奇部で噂を色々聞いた
それでもこの15年間手がかりは見つからなかった
しかしほんの少しだが手がかりが見つかった
当時の記憶は光にはない
それでも悲しさ辛さは忘れた事がなかった
何故家族は殺されたのか 何故自分は生き残ったのか
光はそれを知らなければならないような気がして仕方なかった
15年たった今突きつけられたのは犯人は人ではないと言う事実だった




