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遠山金四郎外伝  作者: 喜多甚
第1章 長谷川平蔵
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第5話 兄弟子からの頼み事

 格上の永井家より請う形で養子に迎えた手前、あからさまなことは出来ないだろうが、本音では遠山家を実子に継がせたいと思うのが親の心情というもの。遠山家における金四郎を包む空気は冷え切っていることだろう。


「あんなに利発で明朗闊達だった金四郎が、日を重ねる毎に陰鬱な表情になっていく。それが忍びなくてなぁ。」


「分かりますなぁ。その金四郎、今は七つでしたか。その年頃の俺も、長谷川の家で同じような立場にありましたよ。」


 かく言う銕三郎(てつさぶろう)は巣鴨の農家に生まれた。

 農家と言っても名字帯刀を許された名主の家で、父は旗本の長谷川家より下野して婿入りし、銕三郎はそこで生を受けたのだった。


 しかし、長谷川家の当主が急な病から危篤に陥り、当主には子がいなかったため、父が急遽長谷川家に呼び戻されて家督を継ぐことになった。家督を継ぐ条件として親族から妻を迎えることになったので、当初銕三郎は母と巣鴨に置かれた。


 母が早逝してからは名主の祖父に育てられていたが、父と父の後妻である義母の間に男子が生まれず、跡取りとして長谷川の家に呼ばれて今日の銕三郎に至る。


「あの糞婆ァ…いや失礼、義母の俺への当りはきつい上に理不尽でしてね。おかげで根性がねじ曲がっての今の俺なわけですが。金四郎は俺みたいに愚連(ぐれ)ないと良いですなぁ。」


 つい金四郎の身の上に自分を重ねてしまい、その嫌気を晴らさんと酒杯を口に運んだ。


「うん、そこで頼みというのは他でもない。銕よ、金四郎の兄貴分になってくれまいか。」


 思わず吹き溢した酒を、三味線の手を止めた幾弥(いくや)がクスクスと笑いながら拭いてくれた。

明和7年(1770年)

長谷川 平蔵 (25)

永井 主計 (31)

遠山 金四郎 (6)

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