ギャルゲーってたまに週休一日になったりする
どこからか音がする。
目覚ましだろうか。
いや、今日は土曜日。
スマホのアラームもたまの休みぐらい寝過ごしているはずだ。
よく聞いてみると音は玄関の方から聞こえてきている。
うるさいと叫ぶほどではないが、確実に二度寝を妨げてくる。
「……あー、はいはい、今出ますよ」
あくびをかみ殺し、モニター付きインターフォンを確認すると、そこには意外な人物がそわそわとした様子で待ち構えていた。
「あ、朝早くに申し訳ありません。
同じクラスの花中と申します」
「?!!」
…………
「あの、本当にすみませんでした」
「いやいや、そんなに謝らなくても大丈夫だから」
制服姿の彼女と、緑が目立ち始めた桜並木を進む。
何も知らない人から見ると、初々しいカップルのようにも見えるかもしれない。
しかし未だ肩を落としたままの彼女は、ある理由で俺の家をたずねたのだ。
今年度から三年生以外の部活動への加入を義務とする。
その知らせがあったのは、俺が保健室に行っているホームルーム中のことだったらしい。
俺だけ知らされていないことに気づいた彼女は、慌てて担任から住所を聞いて迎えにきたというのだ。
真面目というか良い子すぎる。
そして担任よ、あんたの仕事じゃないのかそれは。
顔もうろ覚えな担任への突っ込みは絶えぬが、それよりも今は他の話題を彼女に振らなければ。
女の子と並んで歩くリア充すぎる展開なのに、お通夜のような重苦しさなのはきつい。
「えっと、花中さんはどこに入るかもう決めたの?」
「いえ、私はもうテニス部に入っていますので」
「!あー、そうだったね!ごめん!」
そうだ、完全に失念していた。
このゲームの攻略キャラは全員部活動に所属している。
それは事前に見ていたプロフィールにも記載されていたというのに。
柄にもなく緊張しているのか?
こんな風に女の子と並んで歩くなんてしたことなかったから
。
う、意識したらなんだか気恥ずかしくなってきたぞ。
「良かったら、一緒にテニス部どうですか?楽しいですよ」
「えっ?……うーん、いろいろ見てみたいからな。
でも考えておくよ」
気恥ずかしさもあって、視線を逸らし答えてしまう。
しかしこの部活動決めというのは、誰のルートにいくかに関わる重要なものな気がする。
なのでここは慎重に選ぶべきだろう。
決して笑った顔が可愛くて目を合わせられないとかそんなことはないぞ、うん。
「では私はテニス部の方に顔を出しますので、ここで失礼しますね」
「うん。
ありがとう、わざわざ迎えに来てもらっちゃって」
「いいえ、クラス委員として当然のことですから。
こちらの方こそ不手際申し訳ないです」
「あ、いえいえ!こちらこそ」
深々と頭を下げられ、思わず同じように返す。
村田に見られたら、お見合いか、と突っ込まれそうだ。
「では。
良かったらテニス部の方も見に来て下さい」
「うん、頑張ってね」
軽く会釈をして立ち去る彼女を手を振り見送る。
「……さてと、俺はどうしようかな」