第8話
「では頼んだよ。何かあれば護符を使って連絡してくれ。陽葉はもし困ったことがあればアレを使ってしまって構わないからね。頼んだ私が言うのもなんだけど、二人ともくれぐれも気を付けるように、決して無茶をしてはいけないよ。」
神様はそう言うと部室のドアから帰っていった。
「さて、初めての仕事が大事になってしまったね。それでも君はもう架橋部の一員だ。覚悟を決めて挑んで欲しい。」
天神先輩は僕に覚悟を問うようにそう言った。
「大丈夫です。貴女に無理矢理入部させられた段階でもう覚悟はできています。」
「ふふっ、頼もしいことを言ってくれるじゃないか。では早速調査を始めようか!と言いたい所だけど生憎今日はもう夕方になってしまったから解散としよう。幸いなことに明日は土曜日だ。予定はあるかな?ないのなら10時に校門前に集合でいいかな。」
「ええ大丈夫ですよ。10時に校門前ですね。何か持って行った方が物とか注意事項とかありますか?」
何分事件の調査、それも超常現象が絡むことなんて初めてだ。
「そうだね、先ずは動きやすい服装で来てほしいかな。それ以外は…とくにはないかなぁ。あ、でも多分長丁場になるし距離も結構歩くことになると思うからそこんとこよろしくね。」
「了解です。では明日の10時に校門前で。お先に失礼します。」
「お疲れ~。また明日~。」
僕たちはそう言ってその日は解散した。
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翌日朝六時に目が覚めた僕は朝食とり、着慣れた服に着替え動きやすいスニーカーを履き、少し早めに着くように家を出た。
校門前に着いたのは9時30分だった。
「少し早めに着いたな。準備運動がてら学校にの周り一周するか。」
そう呟いて歩き出そうとした瞬間…
「おはよう八意君、ずいぶん早い到着だね。やる気十分と言う事かな。」
その声と同時に背後からいたずらが成功した子供のようなと笑みを浮かべながら先輩は現れた。
「おはようございます先輩。先輩もお早いですね。」
「おおう、普通にスルーかい。 ま、ね。早めに着いて八意君君に『遅かったじゃないか!私は待ちくたびれてしまったよ!』って言ってやりたかったんだけど八意君の予想以上に早い到着にそれも失敗してしまったね。あ、この2つは今回の事件の聞き込み調査の為に使う大事なものだからキチンと持っておくように。」
先輩はそう言いながら1枚のお札と小さな宝石を渡してきた。
「分かりました。ありがとうございます。」
先輩はさらにこう説明を続けた。
「今回の事件は神様は悪神が関わっているって言っていたでしょ?それに既に3人も行方不明者が出ているから警察も本格的に動いている。だから今更近隣の人や被害者の家族に話しを伺っても成果が出るとは考え辛い。され八意君ここで問題です。事件の情報を近隣の人から得られません。勿論警察も聞いても教えてくれません。さぁどうすればいいでしょうか。」
突然先輩はそんな問題を出してきた。
人に聞くことはできない。だけど「ナニカ」から情報を得ることができる。
僕たちが知っている、関わっている「ナニカ」なんて一つしかない。
「ここら辺に住んでいる神様達からお話を聞く。でしょうか。」
そう恐る恐る答えると先輩はにこーっと笑いながら
「正解!神様の起こした事件なら同じ神様に聞くのが一番手っ取り早く、一番確実だからね。 さて実際に聞く前に少し神様の説明を行うね。神様は大まかに4つの位に分かれます。上から最高級神霊、高級神霊、中級神霊、低級神霊です。最高級神霊は俗に云う最高神や主神と呼ばれる存在だね。日本神話では天照大御神様、ギリシャ神話のゼウス様、北欧神話のオーディン様とかね。次に高級神霊、これは土地神や神話の中に出てくる一部の名前のある神様達だね。中級神霊は高級神霊の中の一部を除く名前のある神様達。低級神霊は神様達の眷属や精霊や妖精たちが該当するよ。今回話しを聞くのはその低級神霊たちだね。で、今から行うのはその低級神霊とお話しができるようにする一種のおまじないだよ。」
「先輩、その前に一つ質問いいですか?昨日神様の真名を呼んではいけないと聞いたのですが今バリバリに神様の名前呼んでましたよね?大丈夫なんですか?」
そう言った瞬間先輩は顔を青ざめしまったという表情を浮かべた。
「ちょ!先輩何やってんですか!早く土地神様の所に行きましょう!」
そう慌てて言いつつ神様に護符を使って連絡しようとした瞬間に…
「ああ待って待って待って!ごめんごめん冗談、冗談だから!神様に連絡しなくていいから!ちゃんと説明するから一旦ストォォップ!!」
とても慌てながらそう制止してきた。
「え?でも早くしないと…」
「神様には2つの名前があるの。真名と伝名っていうんだけど一般的な書物に乗っている名前は全部伝名だから呼んでも問題ないの。だからさっき天照大御神様たちの名前も伝名だから問題ないの!さっきのやべって顔はちょっと遊んだだけなの!心配してくれてありがとう。そしてごめんね。おふざけが過ぎちゃったね。」
「いえ、先輩に何も起きないならいいです…でも流石に心臓に悪いんので次からはもう少し心臓に良い冗談でお願いします。」
僕は大きく息を吐きながらそうお願いした。
「うん、わかった。ほんとにごめんね?乱した私が言うのもなんだけど、本題に話を戻すね。さっき話した通りここら辺に住んでる低級神霊の方々にお話を聞くためにおまじないを行います。さっき渡した宝石とお札があるでしょ?お札を宝石に巻いてた、それを一思いに飲み込んで下さい。そうすれば約1時間低級神霊の方々の事が見えるようになるから。」
な、小さいとはいえ石を飲み込む…だと?
でもこのタイミングでこれだけを渡し飲めと言う事はそれ以外に方法が無いのだろう。
くっ!やるぞ…飲むぞ!!!!
前回からすっごく日が開いて大変申し訳ございません。