第93セット 紗衣の異変
この回は、紗衣主軸の回です。
何が起こったのかを説明すると同時に、腰の怪我の怖さを知ってもらえれば、と思います。
実を言うと、僕も現役時代に腰を、脊柱付近を痛めて碌に体育座りもできない、寝返りも打てない状態に陥りましたから………(苦笑)
さて、今回はトピックスです。
小田原南女子バレー部の、攻めか受けかを聞いてみた、という題目です。
麗奈→攻め
さやか→受け
莉子奈→受け
瀬里→受け
瑠李→両方行けるけど、基本は受け
春希→攻め
藍→攻め
韋蕪樹→攻め
桃華→攻め
恵那→受け
彩花→受けっぽく振る舞っているけれど、実は隠れ攻め
蓮→受け
真理子→受け
芽衣→受け
麻衣→攻め
大幾→受け(事実ドM)
太我→基本受けだが攻めも多少行ける
夏岡→攻め
試合はまだ始まったばかりなのだが………禊応側は、紗衣に異変が生じているところだった。
それは秋頃の国体後に痛めた腰、このせいで紗衣の本領である大きく反って放つスパイクを打てなくなってしまったのだから。
心配を掛けまいとチームメイトには隠し続けていたのだが………此処に来て誤魔化しきれなくなっていたのである。
(クソッ、こんな時に………!! 負けられないのに、この試合は………!!)
紗衣はただ、もどかしかったのだが、培った技術を使って本来の力こそ無いものの、着実にエースとして得点を稼いで行っていた。
だが透子が腰の怪我を見抜いていたかのように、こう話しかけてきた。
「ちょっと紗衣………? アンタホントに大丈夫なの!? ただでさえ逼迫してんのにさ………!! アンタが本調子じゃないとヤバいんだけど………!?」
「………うん、なんとか。これくらいどうにか。」
「しっかりしてよ?? 後ろは私に任せていーから、しっかり打ち切って??」
「………透子、ホント助かってるよ、いつもそういうので。」
紗衣は気丈に振る舞うものの、透子は紗衣に異変があると確信したようだった。
(………やっぱり………腰、気にしてるな………そりゃあそうだよ、あんなめちゃくちゃなフォームでずっと打ってきたんだから………それで腰、痛めない方がおかしいって………でもだからこそ、私がしっかりしないといけないし、何より………)
そう思い、哀羅の方を向き、話しかける。
「哀羅、紗衣の骨、拾ってやって。アンタがしっかりしてないと………この試合、勝てない。」
「………ハイ。分かってます………」
哀羅も何か察したようで、決意を固めた顔で頷いた。
親愛からのボールが返ってきて、禊応にとってはチャンスになった。
透子がレシーブで展開し、朋美が紗衣にトスを挙げる。
紗衣は腰の負担を軽減するフォームから、切れ味鋭いスパイクを放った。
これで3-1となる。
淡々とガッツポーズを取る紗衣、しかし強かな理央は紗衣のいつもと違うフォームを見て、ネット越しにニヤリと笑った。
「………和歌芭さん、ちっと話………あるんだけどさ、耳貸してくれ。」
「………?? どうしたのよ??」
和歌芭は理央の言うことに疑問を持ちながらも、耳を預けた。
「………このセットは変な手を使わなくていいよ………」
「………は???」
「勝つ道筋が見えた。この試合、紗衣さんをマークしなくても勝てる。哀羅を徹底マークするよ、2セット目から、な………」
「………??? ゴメン、理屈、全然理解出来ないけど………セット間で説明して?? アンタが勝てる、っていうならみんなに共有しないと_____」
「心配すんなって、このセットは捨ててでも勝ちに行く………それがアタシらのバレーだろ?」
悪い顔をしながらポジションに戻っていった理央を、和歌芭は訝しげに見ているだけだったのである。
一方の紗衣は、というと。
(………とにかく長期戦だけは避けないと………!! いつ壊れてもおかしくないからね、でも抜いて勝てるほど甘い相手でもないし………私が点を稼がないと………!!)
内心で長期戦を避けないといけない、そう考えていたのだが………
この焦りが禊応にとって命取りになるということを、まだ誰も知る由もないのであった。
次回は一気に時を進めます。
理央の策略発揮回なので、お楽しみにしていてください。




