第9セット 紅白戦開幕
皆さまお待ちかね、紅白戦本戦開始です。
登場人物紹介、今回は莉子奈です。
神木莉子奈 小田原南高校3年生(女子バレー部主将) 小田原西陵中出身 バレー歴は小5から 167センチ44キロ 右利き A型 3月7日生まれ アウトサイドヒッター 3サイズB86W58H87 好きな食べ物 ナポリタン 趣味 アイドルのプロマイド集め
小田原南高校のキャプテン。テレビはあまり見ない方で、さやかのことはあまり知らなかった。チームの輪を重んじる性格で、調整型キャプテン。それ故に独りよがりな行動を取る瑠李に頭を悩ませている。レシーブと速い攻撃を得意にしており、チームの要となっている。
ちなみにチーム唯一の彼氏持ち。(サッカー部のエースと付き合っている。)
一人っ子なので意外とわがままだったりするが、自重はしている。瑠李との衝突は絶えないが、莉子奈自身は瑠李のことは嫌いではない。
紅白戦当日。
それぞれチーム毎でウォームアップを済ませたメンバーは得点板と審判台を出した。
大幾が得点を捲る係となり、副顧問の先生と、何故か太我がラインジャッジをすることとなった。
そうでないと人手が足りない。
夏岡が審判を務めるからだ。
太我は麗奈に無理矢理連れてこられた体なのだが。
夏岡が笛を吹き、試合が始まった。
サーブはAチームから。
初期ローテはこのようになっている。
FL河田春希
FC望月瀬里
FR亀貝瑠李
BR神木莉子奈
BC丸山藍(リベロ澤田桃華)
BL勝又韋蕪樹
一方Bチームのローテーションはというと、
FL金田芽衣
FC志崎恵那
FR倉石麗奈
BR加賀美彩花
BC岡倉さやか(リベロ松尾蓮)
BL浪川真理子
サーブはバックライトの人間が打つこととなっており、レセプション側はポイントを奪えばローテーションということになる。
笛が鳴り、莉子奈のサーブから試合が始まった。
流麗なリズムから放たれたジャンプフローターサーブ。
パアン、という音と共にストレート系のサーブがきた。
彩花のレセプションが正確に麗奈のところに届く。
Aパスだ。
その麗奈のファーストチョイスはというと。
セカンドテンポの速いレフトへのトスだった。
恵那のAクイックを囮にし、芽衣にトスを挙げる。
芽衣はストレートより少し左に切り、瑠李のブロックとのブロックアウトを狙い、そこを撃ち抜いた。
取れない位置にブロックアウトを弾き、最初の得点が入った。
「……やっぱ瀬里のところは狙って来ないか。」
瑠李はそう呟いた。
1-0。
Bチームが先制した。
麗奈のサーブのターン。
真理子が前衛に上がり、攻撃力がアップしている。
麗奈はジャンプフローターサーブを打ち抜いた。
レシーブの手元で急速に変化した。
そしてそれは韋蕪樹の方に行く。
上がったかに見えたが、少しブレた。
すみません、短いです、と韋蕪樹は謝った。
瑠李は走って落下点に入り、レフトに高めに、真上に挙げた。
2段トスのスパイク主は勿論春希。
春希はタイミングよく助走を取り、跳び上がる。
ブロックは2枚来ていた。真理子と恵那の2枚。
タイミングはバッチリに見えたが……春希が思い切り打ち下ろしたスパイクは、恵那のブロックを弾き飛ばし、エンドラインを割った。
ワンタッチ型のブロックアウトになり、結果的に春希のスパイクポイントとなった。
これが春希の武器、パワースパイク。
これを打てるのがエースたる所以だ。
ガッツポーズを春希は取り、円になった。
1-1。
瑠李のサーブ。
シンプルにフローターサーブで打ち、そのサーブは正確に真理子のところまで行った。
オーバーカットで挙げられた瑠李のサーブを、麗奈は少しネットから離れた位置の落下点に入り、レフトに真理子の所へ挙げた。
これまた2段トスだ。
真理子は思い切り踏み込んだ。
その跳躍は3メートルに達する。
そのスパイクはクロスに打たれたが、瀬里に止められた。
蓮がなんとか上げ、ラリーとなる。
今度は恵那にAクイックを上げたが、これを読んでいた瀬里にブロックされ、Aチームのポイントとなった。
「うわー、ごめん!!」
恵那はみんなに謝ったが、
「すみません、少し単調でした。」
麗奈も責任は自分にある、と謝った。
得点は1-2。
Bチームの一点ビハインド。
Aチームのブレイクのため、サーブは瑠李のまま。
今度は蓮のところにサーブがきた。少し詰まりながらもレセプションを上げた。
今度は恵那に挙げる……と見せかけて、速いトスを芽衣に挙げた。
恵那のBクイックを囮に、時間差攻撃でライトからレフトへと一気に走り込んだ芽衣が走ってきた勢いのまま跳んだ。
これではブロックの上手い瀬里でも追いつけない。
韋蕪樹がクロスをカバーしようとして跳ぶが、ガラ空きとなったストレートへ芽衣は打ち抜いた。
瑠李のディグを弾き、Bチームの得点となった。
「しょうがない! ここ、切り替え!」
莉子奈のゲキが入った。
2-2。
悪い流れを一本で断ち切ったBチームのサーバーは、チームでもピンチサーバーを務める恵那。
両手から挙げられたジャンプフローターサーブは、揺れ動く。
そして、正確に桃華と莉子奈とのレシーブの間にサーブが来た。
かなり嫌なところに来ているし、さやかも前衛に上がっている状況。
レシーブが乱れれば、止められる可能性が非常に高かった。
桃華が挙げた。
逆回転で上手く威力を殺している。
そして瑠李がレシーブが上がっている最中にライトの位置へと移動していた韋蕪樹に挙げた。
サードテンポで少し遅めだったが、韋蕪樹は躊躇わず踏み込んだ。
さやかと芽衣は思い切り手を前に出した。
が、ここで2人は信じられない光景を目にした。
スパイクで打ち下ろされた左腕が、大きく捻られていたのだ。
そして韋蕪樹は超インナークロスを打ち抜いた。
これには真理子も一歩も動けなかった。
実は韋蕪樹の両肩は「二重関節」と呼ばれるもので、彼女の肩の可動域は180度を超えるほど柔らかかった。
このコースにインナークロスを打ち抜かれようものなら、3枚ブロックのクロス寄りでないと、止めるのは難しい。
「いやいや、ヤバすぎだって……今の……。」
芽衣は韋蕪樹の恐ろしい肩の可動域にただただドン引きしていた。
「まあ、しょうがない。今のは。勝又先輩が凄いだけ。今のは。」
対して麗奈は淡々としていた。
今のは致し方ない、切り替えが大事だ、と語った。
2-3となり、瀬里のサーブ。
だがこれはエンドラインを割り、アウトとなり、Bチームのポイントとなった。
3-3。
ここで流れを掴みたいBチームは、芽衣のサーブから。
フローターで打たれたサーブは、莉子奈のところに正確に行った。
しかし、正面すぎた。
莉子奈はこれを難なく挙げる。
ここで、瑠李が選択したのは藍のBクイックだった。
これを跳んでいた真理子がワンタッチを取る。
それを蓮が上げ、カウンターのチャンス。
来い!!とさやかが大声を出した。
麗奈も呼応する。
トスをAクイックに挙げる。
そしてそれを、高い打点からさやかは打ち抜いた。
春希が転びながらディグを上げたが、思い切り横へ弾いてしまい、Bチームのブレイクとなった。
非公式ながら、さやかのバレー人生初得点。
大はしゃぎだった。
「さやか、打つテンポちょっと遅いかも。」
はしゃぐさやかを麗奈が諌めた。
もっと高い次元を要求していた。
「もっと、か……。わかった!」
さやかも何故か了承していた。
一方、Aチームは。
「……ごめん。春希。」
「しょーがないよ、藍は。拾えなかった私も悪い。……次、決めるから。」
藍と春希がお互いに謝っていた。
藍はブロックのタイミングがズレた責任、春希は拾いきれなかった責任とで。
4-3。
Bチームの一歩リード。
芽衣のサーブは続く。
韋蕪樹がオーバーパスで挙げた。
それを瑠李はライトへ速いトスを挙げる。
待ってましたとばかりに春希が入り、クロスに打ち抜こうとしたが______そこに追いついてきたさやかが跳んでいた。
構わず打ち抜いたが、シャットアウトされた。
さやかのブロックポイントにBチームは大きく沸き立った。
「瑠李ごめん、やらかした!」
「……さやかがここまでやるとは思ってなかったけど……春希も単純すぎ。彩花のブロック力は低いんだから遠慮しないでよかったじゃん。」
「……瑠李、一回前に来てみ? マジで高いから。」
「……けど、春希。もう一本。行くから。入り方とかは悪くなかったし。」
「オッケイ。次は決めるわ。」
5-3。
Bチームの2連続ブレイクポイントで、芽衣のサーブ。
ネットインだったが、構えていた藍が少し高めに上げ、そのままクイックへ入っていった。
と、ここで韋蕪樹もCクイックに入っている。
所謂「ダブルクイック」。
虚をつかれたのか、さやかと真理子はクイックにそれぞれ跳んだ。
だが、これも囮。
ライトへスピードトスを挙げた瑠李は、彩花が追いつけないくらい速く挙げた。
ほぼノーブロック状態のBチームのコートへ、春希は思い切り叩きつけた。
芽衣も構えていたが、ブロックのない状態でディグはほぼ無理ゲーだ。
あっさりと得点を取られた。
「麗奈ちゃんごめん……。これ私の責任だ……。」
「……流石に今のは瑠李さんが上手かったですよ。高身長選手が並んでいるからこそ出来ることです。」
「そーですよ! 彩花さん、切り替えないと!」
次は春希のサーブが来る。
ここが正念場だと、Bチームは頭を切り替えた。
5-4。
Bチーム一点リードの展開で春希のサーブが来る。
一息吐いた春希は、左手で回転を掛けながらボールを高く挙上し、スパイクのように踏み込んでサーブを打った。
ジャンプサーブだ。
強烈な威力を誇る春希のジャンプサーブは、鋭い回転をかけながら蓮の右側の方へ行った。
強烈なサーブは蓮の腕を弾き飛ばし、大きく後ろへ逸れた。
サービスエースが今日この試合を通じて初めて決まった。
これでAチームは再び同点に追いついた。
「った〜〜〜……マジで重いわ! 春希さんのサーブ!てか特訓に付き合ってくれた時ジャンフロだったよね!?」
まさかのジャンプサーブの重さに驚いた蓮を真理子がゲキを出して嗜めた。
「……頼むよ! 蓮! アンタが挙げないと始まんないから!」
「くっそー……まさかこんな武器を隠してたなんて……。強かだな、ホントに…」
Bチームはまさかの展開に少し動揺していた。
このまま春希さんのサーブが続いたらジリ貧になる……そんな雰囲気が漂っていたが……。
「みんな、ちょっと下がって。で、スペースは広め。」
麗奈の淡々とした指示に少し落ち着きを取り戻した。
だが、春希のサーブはまだ続く。
序盤の流れをAチームが制するのか、それともBチームが流れを断ち切るのか。
ここが紅白戦序盤のターニングポイントだった。
これがAチームのポテンシャルです。まあ、細かい設定とかは今後前書きの方で紹介していきますが。
麗奈のポテンシャルはまだ出していません。次回、引き出させます。
登場人物紹介は瀬里を紹介します。瑠李とか春希が気になる方は多いかもしれませんが、もう少し待っててください。