第84セット 初恋の相手
この回から2話は番外編Part2。
今回も瑠李が主役です。
瑠李の事件から1ヶ月が経過した。
春高予選まであと1ヶ月と迫った10月。
小田原南高校女子バレー部は、いつも通りの雰囲気を保ちながらも必ず春高本戦に出場するんだ、そういう気概の元で練習に今日も取り組んでいる。
いるのだが。
ここ最近、瑠李の様子が少しおかしいことに、莉子奈は気づいていた。
特に大幾と話している時だ。
水の入ったボトルを彼から受け取る際、露骨に顔を逸らしていることに。
しかも頬も何処か赤くなっている。
莉子奈は何かあるだろうな、と思い、瑠李の日課である筋トレに付き合い、事の真相を聞いてみることにしたのであった。
ロードバイクを2人で漕いでいる時に、莉子奈から話を振った。
「あのさー、瑠李、一個聞いてみていい?」
「………な、なに??」
瑠李にいつものキレがないな、と莉子奈は感じ取った。
これはクロだと。
「最近さー、アンタ、大幾と話してる時さ、めっちゃ顔赤くない??」
「………え?? ちょ、ちょっと待って莉子奈、そんなになってる? 私。」
「なってるよ、分かりやすいくらいにさ?」
瑠李は自覚がなかったのか、固まってしまった。
莉子奈も渉という恋人がいるため、そういうことは案外容易に分かったりするものだ。
莉子奈はクラスでも恋愛相談に乗ったりしているので、瑠李に少しでも力になりたい、そんな風に考えて聞いてみたのである。
「………瑠李、アンタさ………絶対大幾のこと好きでしょ。」
「!? いやいやいや、ちょっと待ってって!! な、なんでこうさ、話が飛躍するわけ!?」
明らかに動揺しているな、と莉子奈はすぐさま思う。
図星なのはこの瞬間に分かったのだ。
「だってさ、太我には案外普通に話すのにさ、ここ最近さ? 大幾には目を逸らしたりさ、若干距離置いてるように見えるんだよ。それって“好き“を隠したいから………じゃないの? バレバレだよ? それ。」
ニヤニヤしながら瑠李を見つめる莉子奈、瑠李の顔は、明らかに紅潮していた。
言葉が出てこない瑠李に対し、莉子奈は詰みと言わんばかりに更に詰め寄った。
「わかるよー、そういうの。私もさ、渉と付き合う前さ、すっごい緊張したもん。顔も見れないくらいにさ? だからそうなんだって、瑠李は絶対。大幾のことさ、アンタ、絶対“男の子”として見てて………」
「あーーーーー!!!! もう!!!!!! 分かったから!!!! ちゃんと話すって!!!!」
これ以上は言われたくない、と言わんばかりに瑠李は莉子奈を大声で制止した。
瑠李は一息吐いて、莉子奈にこう明かした。
「………うん、莉子奈の言う通りだよ………最近さ、大幾のことが………すっごい気になっちゃってて………」
「あー、やっぱりね。悪い奴じゃないしね。」
「………なんて言うのかな、私、こういうの分かんないからさ………正直アンタがいてよかったよ、彼氏、いるし………これで藍だったら変なのしか返ってこないだろうし………これが恋、ってヤツ………なのかな? こう、独占したい、っていうか………」
「へー?? ラッキーだった、ってわけ?」
「そ、それは………そう、だね、運が良かったっていうか………」
瑠李は莉子奈から目を逸らした。
よほど恥ずかしいのだろう。
「ちなみに聞くけどさー、瑠李。」
「………なに??」
「どういうところに惚れたの? 大幾に。まー悪いヤツじゃないけどさ、そりゃ。アイツヘタレじゃん、基本的に。」
「………優しいじゃん、大幾………私が休んでた時、あったでしょ? 真っ先に連絡くれたのさ………大幾だったんだよね。いいヤツなのはさ、そりゃ前から分かってたよ? けど………心配で連絡してくれるのって………ちゃんと、私なんかのことも考えてるんだなー………って。」
「あー、そういうこと?? 顔は度外視、ってわけね。中身判断か、そうか、そうかー……」
莉子奈は頷きながら、瑠李が大幾に惚れた理由を聞く。
「………んで、初恋の相手、ってわけ? 大幾が。」
瑠李は無言で何度も頷く。
「なーるほどね、じゃーアドバイスしたげるよ。………ってか、初心すぎでしょ、瑠李。あと大幾はなんでこうも鈍感なんだ、って話。まあそれは置いといて、大幾はさっきも言ったけどさ、アイツヘタレだし、鈍感だからさ………ストレートに想いを伝えた方がいいよ? じゃないと永遠に片想いのままで卒業になっちゃうと思うよ、瑠李と大幾の性格的に。」
「うっ…………そ、そう、だと思う………私、普段全然自分から行かないから………」
「でしょ? で、アイツは超鈍感とくる、だから瑠李から一歩動かなきゃダメなの、結論は!! だって怖がられてんだって、アンタは未だに!! 大幾とか太我はいいよ、まだ! 何ヶ月も一緒にいるんだから!! 春希から聞いたよ、こっち来んな、みたいなオーラ出してるからさ、男子は未だに瑠李と話したことないヤツの方が多いってさ!! そういうところあるからさ、自分から行った方が絶対いいんだって!!」
「………そう………かもね………あ、ありがと、莉子奈………やってみる………上手くいくか、分かんないけど………」
瑠李は恥ずかしがりながらも、大幾に告白することを決心したのであった。
トレーニング室から戻った2人。
瑠李はちょうど、エントランスから降りてくる大幾を発見した。
勇気を振り絞れ………と、自らに言い聞かせる。
意を決し、瑠李は大幾に声を掛けた。
「あ、あのさっ!! 大幾!!」
「る、瑠李さん??? どうかしたんですか………???」
明らかに困惑を隠せていない大幾、それもそうだ、唐突も唐突なのだから。
瑠李が段と段の間の場所で、大幾に対して壁ドンをする。
「………私と………付き合って!!!!」
「…………へ????」
頬を紅潮させる瑠李とは対照的に、状況を全く飲み込めていない大幾、だがこの温度差が功を奏することになるのであるが、それは莉子奈しか知らないのである。
次回は………まあ、お察しですwww
あー、やっと春高編まで入れますね。
俺も現役時代に春高行きたかったなー………(俺の現役時代は道大会ベスト8でしたwww)
でもこの経験がなかったら、多分バレー小説は書いてなかったと思うwww




