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無表情の天才セッターは、元モデルの長身素人を全日本代表まで育て上げるようです。  作者: 黒崎吏虎
春高予選編プレリュード第一部 〜〜瑠李の事件簿〜〜
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第82セット 苦難の後に救済ありて

いやー……なんて言うんでしょうね、この作品を初投稿してから1年が経過しましてね、まあ思うところは色々ありますが、一次選考を通過させてもらったり、挿絵を描いて戴いたり………と、僕も正直バレーボールという小説で書くには難しいジャンルでよくここまで書けているな、と思いますねwww

さて、この回は第一部②です。

夏岡先生に名言を生ませたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 瑠李と夏岡が向かい合わせになって座った。


瑠李は緊張した面持ちになるのに対し、夏岡は大人の余裕というのか、落ち着きを払っていた。


「……春希から聞いたよ。色々………大変だったようだね、瑠李。」


「………はい………家に帰ろうにも帰れなくって………春希の家に今、泊めてもらってるって感じで………」


「そっかー………体調の方は?」


「それは………はい、春希にも話したのでメンタルとかはなんとか、ってところです。」


「よかったよかった、心配して損したよ。これで悩んでいる顔をしていたらどうしようか、って思ってたところだしね。」


「………大幾からも今日の事情を聞いたので………みんなに迷惑を掛けたなって気持ちが………」


瑠李は申し訳なさそうに謝罪をするが、夏岡は気にしていないどころか笑い飛ばす。


「なんだい、そんなことを考えてたのかい? 瑠李は何も悪くないよ、悪いのは………親の方だろ? 君が気を病ませる必要なんてない。それに……みんな大会前で()()()()()()()()()()()()()しね、丁度いいかなと思ってリフレッシュも兼ねて休ませたんだよ。瑠李がいない状況で下手に追い込んでも……変な空気になるのは目に見えている、そういう意味もあるんだ。」


「………すみません、私なんかのために………みんなのこと考えてくださって………」


「……私は何もしてないよ。瑠李が心配だったのは事実さ、けれどそれ以上にみんなの方が瑠李、君のことを考えてくれているだろう? それが答えだ。君は君らしくやればいいさ。何も心配は要らないよ。」


「………ありがとうございます………」


瑠李は頭を下げて、夏岡は麦茶を一飲みした。


そして夏岡は瑠李にこう言った。


「……まあ、そうだな……瑠李には言ってなかったけど………なんで君に他の子よりも気をかけているか……分かるかい?」


「………え………??」


瑠李は思いもよらないことを言われ、ポカンとした顔を浮かべた。


「まあ早い話だが………君には兄貴がいるだろ?」


「お兄ちゃんが………どうかしたんですか?」


「君の兄貴の『元』とは………同級生なんだよ、実は。ワラナンってことも含めて、ね。」


「…………え………お兄ちゃんとクラスメイトだったんですか!? 先生が!?」


「なんだい、聞かされてなかったのか………高校の時な、同じキャプテン同士だったからよく話したものだよ。その時に毎回のように家族のことを話すんだよ、元は。瑠李のこともそうだし、親のこともそうだしで………だから瑠李のことは去年までは会っていなくても知っていたんだ。家庭環境も含めて、ね。」


「………そうだったんですか………はー、ビックリした………まさかお兄ちゃんを知ってて、ましてや同級生だっただなんて………」


そして瑠李は、元のことを話す。


「………本当に、最高の兄ですよ………兄がいなかったら多分………クソ親父に殺されていたと思いますし………ずっと、助けてくれて………それでも弱音一つ吐かないで仕事をして、私のこともずっと………気にかけてくれてて………」


「ハハ、そうなんだな、やっぱり。元々温厚なヤツだからな、クソ真面目だしね。やっぱり優しい兄貴なんだな、瑠李にとっても。」


「そ、そうですねー………」


瑠李はどこか照れ臭そうに、相槌を返した。


夏岡もどこか嬉しそうに、そう話を弾ませている。


「……それで? 親のことはどうする気だい? このままだったら君にとっても良くはないだろう? あの親のことだ、学校に突撃を敢行してまでも………君の推薦を取り消しにかかるはずだ、今は毅然と対応するようには担任には掛け合っているからな、大丈夫だと思いたいが………心理学部に行く、その気持ちは変わりないね?」


「ハイ、勿論です。」


2人の顔が一気に引き締まった。


急に神妙な空気が漂い始める。


「オッケー………そのようには言っておくよ、改めて。それで、親の方は?」


「………ボイレコを警察に出して、被害届も出したので………今は傷害容疑でお兄ちゃんが重要参考人として取調べを受けて、って感じですね………」


「なるほどね、それが一番いいよ。相模原にも知り合いはいるんだけど………やっぱり君の親には悪い噂しか聞かないからね、言い方は悪いけど………()()()()()()()()よく歪まなかったね、ってところだ。春希からもそこは聞いたからね、気持ちは言わなくても分かるさ。」


被害届を基に逮捕状が請求されれば、瑠李の親はまず間違いなく逮捕されるだろう。


その容疑を固めるために今、元に事情聴取をしているところだ。


瑠李としても「モンスターペアレンツ」を排除したいのだろう、夏岡はそう察したように瑠李に伝えた。


そして夏岡は瑠李にこう言った。


「いいかい、瑠李。今君の人生というのは………苦難の連続だったろう? 親からの虐待、両親の離婚と再婚、そして中学時代のイジメの被害、とね………けれどね、瑠李、君は何も悪くなんてない。悪いのは全て………君に関わって、悪く言う奴らなんだからね? それに………私はこう言いたい。」


瑠李は固唾を飲む。


緊張した面持ちなのは、夏岡の目から見ても伝わってきていた。


「君は幸せにならなければいけない、私はそう思っている。じゃあどうやってなるか、って言ったら………『()()()()()()()()()()()()()()』なんだよ。」


瑠李は頷いて聞いていた。


さらに夏岡はまた、こう話す。


「人生で何か一つ………夢中になれるものを見つけられたらさ、瑠李にとってはそれが一番いいと思う。幼少期に苦しんだ人の方がさ、生きるための術は身についているし、何より親を反面教師にできるだろう? 瑠李の未来はいい方向へ加速していっている、私はそう思う。独りじゃないって気付けているだろう? 今さ? 前へ向かって歩いているんだよ、その支えがなかったら瑠李は今、立って歩けていないはずだ。」


瑠李の目が、いつになく輝いている。


興味が有り気に、だ。


「確かにな、君の親は変えることはできないさ、けれど………縁を切ることは簡単だ。瑠李は優しいからね、思うところはあるかもしれないけれど………あの親なんかは助けなくっていい。地獄を見るべきは君の両親だ、そして救われるべきは瑠李だ。瑠李は何も間違えていない、だから非情になることも………子供の役目だよ?」


夏岡は優しい顔になっていた。


まるで姉が妹を見るかのように。


「………そのように言ってくださって、ありがとうございます………」


「いーよ、これくらい。どうしても瑠李には伝えておきたかったんだ、これだけはね? とにかくさ、今日はゆっくり休みなよ、瑠李。それで………リフレッシュした姿を見せてくれればいいよ、明日ね?」


「………ハイッ!!」


瑠李は笑顔を浮かべ、力強く返事を返したのであった。




 夏岡は立ち上がり、テーブルの上に何か箱のようなものを置いていき、帰っていった。


瑠李のために、といっていたのだが、中身が不明だ。


袋から出して、中にある箱を開けた。


「………これ、シューズ………?? 私のために、わざわざ………??」


中に入っていたのは最軽量で話題になったバレーシューズだった。


靴底のゴムも柔らかく、素材自体も柔らかいため、クッション性が高かったモデルだ。


(………もう高校でバレーは辞めるんだけどな………でもありがたいな、これは………だから絶対に………ワラナンを私が勝たせて春高に行く……!! みんなで、絶対に………!!)


瑠李は左拳を握りしめ、春高進出を改めて誓ったのであった。





 一方、春希は、というと。


韋蕪樹に食事に誘われて、一緒に行くことになるのであった。


向かい合わせに座りながら、ラーメンを食べつつ瑠李の話になる。


「春希さん、私は知り合って長くなりますけど………なんで瑠李さんとあんなに仲がいいんですか?」


「ん? あー、そー………だねえ、話せば長くなるなー、ホントに………中1からずっと一緒だったからね、一時期仲は悪かったけどさ?」


「まあ、悪い人じゃないですから………むしろめちゃくちゃいい人だし。でも春希さんと瑠李さんって、性格が真逆だったりしません??」


「あー……それはあるかも。瑠李、自分からあんまり行かないしね、普段。」


話しながら、2人はラーメンを啜っていった。


韋蕪樹は直属の後輩なため、春希や瑠李とは気心が知れた関係である。


4月の件で事情は把握しているので、今日のことは敢えて話さなかったが、最近は瑠李と春希で共に買い物にも行ったりしていることも知っているため、尚更聞きたいようだった。


「だからなんですよねー、気さくな人じゃないのは分かってますけど、あんなに綺麗な人が社交的だったらもっと怖がられなくてもいいのになー、って思って………学校じゃ、私たちくらいじゃないですか、瑠李さんが話すのって。」


「……まあ確かに、ね。瑠李は昔っからそうだからなー………ああ見えてシャイなんだよね、瑠李。入学式の時からずーーーーーっと私の一個前の席で、ね? 気になって声を掛けたらバレーで繋がって………ああなった、って感じ。」


韋蕪樹は頷きながら話を聞いていた。


春希はチャーシューを口に運び、こう続けた。


「………まー、そうだねー………それでもちゃんと仲良くなったのは………あの時から、だったかな………瑠李の家庭事情を知った日、かな。そうだなー………5年前、か。その時から瑠李と私の………運命が大きく変わってった、って言った方がいいのかもね。」


春希が語った瑠李との過去、韋蕪樹は瑠李との絆を知ることになるのであった。

次回は瑠李との絆を書くと同時に、プレリュード第一部終幕です。

瑠李の親の末路をご覧になればいいかなー、と思います。

まあ、お察しの通りの展開なんですが、僕も瑠李が少しでも幸せになれる方向に進めたいので、しっかり書きたいと思います。

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