第81セット 秋の土砂降りの夜に
瑠李の家系にメスが入ることになる感じになりますね。
全てのクズ親はこうでなくてはならない、僕はそう考えてます。
ってわけで、春高予選プレリュードは第一部を3話、第二部を2話の計5話に分けられます。
むしろこの部分を春高編より書きたかったまであったんですが、いかんせん他のやつが忙しすぎて予定より大幅に送れましたwwww
春高予選まであと2ヶ月と迫ったある9月の夜だった。
急に降り始めた雨が、容赦なく神奈川の地を打つ。
相模原市に位置する河田家は、下のきょうだい達が寝静まった時だった。
ピンポー……………ン………と、静寂の最中にインターホンが鳴り響いた。
「? 誰だろ、こんな時間に………アマ◯ンとか頼んでたわけでもないだろうし………」
春希が一体誰なのか、と思わんばかりにドアを開けた。
するとそこには。
瑠李がいた。
傘も持たず、それ故に髪は濡れ、顔はどこか、疲れたような表情を浮かべていた。
「る、瑠李!?!? どうしたの、こんな時間に!! 何があったの!?!?」
春希は瑠李を見て、思わず声を挙げる。
そして瑠李は重そうな口を、ゆっくりと開いた。
「………春希、一晩、泊めてくれる………? わけは後で話すから………」
「え、えぇ!?!? と、とりあえず入りなよ! お風呂貸すから!!」
只事ではない、と察した春希は瑠李を玄関に上げ、慌ただしく瑠李の入浴の準備をしていくのであった。
入浴を終え、瑠李は春希の部屋に入った。
「春希、お風呂と着替え……ありがとね。」
「い、いいよ、これくらいさー……あー怖かった、急にベル鳴ったと思ったら◯子みたいな瑠李が立ってたからさ……」
「なんで映画……?? まあ、いいけどさ、それよりも………ホント大変だった……」
「………さっきのことと何か関係あるの?」
相変わらず窶れたような顔を見せる瑠李は、深いため息を吐いてゆっくり話し始めた。
よく見ると、瑠李の左頬に腫れた痕と唇を切って瘡蓋で塞がった痕があった。
瑠李の話によると、進路のことで両親と揉めたようで、義父が瑠李に手を上げたようだった。
その後で母と共に瑠李を殴る蹴るを繰り返したようで、そこに帰ってきた兄の元が仲裁して事なきを得たものの、瑠李の我慢が爆発して家を飛び出したとのことだった。
春希は瑠李の家庭環境を最もよく知るため、頭の痛い話を聞いているようなものであった。
「………そっか………ホント異常だわ、瑠李の親は………自分の子に手を出す親がどこに居んのさ………それで……? 瑠李ん家から私ん家まで結構遠いよね? そこまで歩いてきたの?」
「うん……」
おそらくは財布も持っていないんだろうな、というのは春希は察したのか、何故傘を買わなかったのかは敢えて聞かなかった。
だが気になるのは、何故このタイミングで親に進路の相談をしたのか、ということだった。
瑠李の親が親なら聞く耳を持つような人種ではないのは目に見えているはずだし、学費なら兄がどうにかしてくれはする、と前に話していたことも知っていたため、春希にとってはそこが気がかりだった。
春希はため息を吐きながら瑠李に質問をする。
「……そんでさ、瑠李、一つ聞きたいんだけどさ………なんでアンタの親に進路のこと言ったの……? こうなることも目に見えてたのに……」
「………わかんない、なんでかは………けれど………お兄ちゃんにさ、言われたんだ。親に話すんならコレを渡しとく、って言われて………ボイスレコーダーを渡された。」
「へ??? な、なんで………??」
「……流石にさ、あそこまでとは私も思わなかったけど……親のことを嫌ってるのはお兄ちゃんも、私も共通事項だったから………何かあった時のために鞄に仕込んでさ、録音してたんだ……」
「え、ちょちょちょ、ちょっと待って瑠李、それって………てか、警察には出してんの? それ………」
「ここに来るまでに警察署に立ち寄った。そっから2時間、事情聴取だよ、ホント……経緯を一から説明すんの大変だったけどさ、動いてはくれるってさ。被害届も出したし、ね?」
自分の親を警察に売るなど、余程のことがない限りはしない行為ではあるが、我慢が限界点を迎えていたのも事実だろう。
春希は瑠李のそういう事情はよく理解している。
春希も聞いているだけで疲労感が溜まるような事案で、これでもし、瑠李の被害届が受理されなかったら、と思うと心配と恐怖感に駆られていた。
一つ息を吐いた春希は、瑠李にこう言った。
「事情は分かった………瑠李、明日休みなよ、学校。」
「え………え?? で、でもさ………」
春希の提案に、瑠李は困惑を隠せなかった。
春希は尚もこう、瑠李に言った。
「……ほっとけるわけないでしょ、瑠李の今の状況は。母さんにも言っとくからさ、今日だけじゃなくて明日も泊まっていきなよ。そもそも制服もこの時間じゃ碌に乾かないだろーしさ? とにかくアンタが心配すぎる、それに尽きるっての。」
「……部活、どうすんの? どう説明していいかも分かんないし……」
「夏岡先生にも言っとくよ。流石にウチのクラスの副担任といえどさ、瑠李の家庭環境くらい調べてるでしょ? 理解もしてくれるだろうしさ、太我と麻衣はともかく、みんなも理解ってくれるよ、絶対。」
申し訳なさそうに俯く瑠李を見て、春希はこう言った。
「………前に言わなかった? 瑠李は私が守る、って。今がその時だよ。だからさ、こーいう時くらいさ、思いっきり甘えなよ。その方が瑠李は吹っ切れると思う、だからゆっくりしてっていいよ、好きなだけさ?」
「………そう、だね、春希…………うん、ウジウジ考えてたってしょうがないね。ありがとね、色々さ?」
「だからいいって、これくらい!! 私に任せときなって!!」
瑠李の顔も、漸く少しばかり戻ったようで、瑠李は一晩泊まっていくことになるのであった。
翌日。
春希は職員室で夏岡に、瑠李の一件を報告した。
夏岡は溜息を吐いた。
「………まーた、あの親父か………やっと瑠李に笑顔が見られてきたと思ったら今度は親父か………兎に角瑠李が無事でよかった。今は春希の家にいるんだろ?」
「……はい、休むようには言ってあります。何があるか………分かんないですし………」
「………春希、昼休みにバレー部全員を集めてくれ。話しておきたい、このことを。」
「分かりました。」
春希はそう返して職員室を出た。
そして昼休み。
夏岡は瑠李以外の全員を集め、本日の部活を休みにすることを告げた。
突然の通知に困惑を隠せない部員達。
動揺も無理はないか、夏岡はそう思い、こう告げた。
「まー、確かに瑠李のこともあるけれどさ、大会前のリフレッシュだと思って有意義に過ごしてほしい。オッケー?」
「ハイ!!!!」
部員達は気持ちを切り替えたように返事をした。
そして緊急ミーティングは解散となった。
夏岡は急遽、鞄を持って更衣室へと向かっていった。
そしてそこでスーツに着替えたのである。
(………今日が保体の授業がなくてよかった……これで家庭訪問に集中できる。校長と教頭には許可はもらってる、あとは………瑠李の今の気持ちを知りたい、それだけだからね……)
スーツに着替え終えた後、夏岡は車に乗り、春希の家へと向かっていったのであった。
一方、瑠李は。
家で寛ぐことができる時間があまりなかったのか、何をしていいかわからずに落ち着かない気持ちでいた。
(そういえば………ホントにゆっくりする、なんてなかったからなー………お兄ちゃんから連絡が入って私の事情聴取をした、ってことくらいか……けど泊めてもらってるんだから……なんかしないとな………)
と、瑠李が立ち上がった時、スマホに着信が入った。
「………? 誰からだろ………大幾から??」
なんで急に……と思いつつ、着信を取った。
「もしもし?」
『瑠李さん!? よかった、無事で………!! 部活も休みになったし、瑠李さんを心配してたんですよ、みんな!!』
「アハハ……うん、ありがと、心配してくれて………」
『僕もう、居ても立っても居られなくて………!! でもよかった、瑠李さんに何かあったらどうしようと思ってましたから………!!』
声色から、本当に心配していたのだろうな、というのが瑠李に伝わった。
「そ、そこまで心配してたの?? ………なんか、申し訳ないな………明日戻ってくるからさ、そんな心配しなくてもさ、大丈夫だから……」
『全然いいですよ、そんなの!! 瑠李さんも色々あるのは僕でも分かります!! だから今日はゆっくり休んでください!!』
「アハハ………うん、ごめんね、心配かけて。それじゃ。」
瑠李が電話を切ったと同時に、ホーム画面の通知欄が部員達からのメールでびっしりだった。
瑠李は一つ一つを丁寧に返信を返していると、インターホンが鳴った。
春希から借りた、グレーのスウェットのまま、瑠李はドアを開けた。
「ああよかった、瑠李、元気そうで。………上がっていいかい?」
「せ、先生?? なんで、ここまで………??」
夏岡が何故ここにいるのか、瑠李は困惑を隠せなかった。
しかもスーツでピシッと決めているあたり、真剣なのだろうな、というのは瑠李でも分かったことだった。
「春希から話は聞いてるよ。だから私の方で、今の君の状況を把握しておきたいし、君に伝えたいことがあるから来たんだ。」
「………わかりました………」
状況を理解した瑠李は躊躇いもなく夏岡をリビングに上げ、急いで冷蔵庫の麦茶をコップに注ぎ、お菓子を用意した。
家庭訪問的な形になったのだが、瑠李は夏岡に今回の事件の詳細を話すことになるのであった。
次回は先生の格言回です。
事態も動くので、必見です。




