第80セット 喰らい尽くせ!!!
合宿編ラストはギャグ回で締めていく。
登場人物の紹介、今回は泉水です。
仁藤泉水 橋誉中女子バレー部3年 170センチ 53キロ セッター 3月28日生まれ O型 左利き バレー歴は小1から 3サイズB84W55H82 好きな食べ物 カレイの煮付け 趣味 生け花、料理
麗奈の後輩で、世代ナンバーワンとの呼び声高いセッターで、U15候補。
全中優勝メンバーでもベンチ入りを果たしている。
橋誉の副主将で、部員たちには規律を重んじているため、怖がられてはいるが、乃恵留からは頼りにされている。
長身の長い腕を活かした、高い打点からのセットアップとクレバーなトスで相手を翻弄するスタイルで、正確性も麗奈と引けは取らない。
実家は花道教室を営んでおり、親もかなり厳しいため、小学生時代は習い事を四つも掛け持ちしていたほどで、自他共に厳しい性格なのはそのため。
現実主義者で毒舌家でもあり、納得のいかないことはとことんとやろうとするタイプなので、意外と要領は悪い。(なお、本人は無自覚である)
麗奈のトスを入部時に目の当たりにして、絶対に麗奈には勝てないと思った経緯もあり、麗奈の元で学ぶという名目で麗奈派についた。
一方で派閥制度を嫌っている節もあり、新チームになってからは上層部では喧嘩をなるべくしないようにしているとのこと。
口は悪いが、趣味はかなりの乙女チックなのだが、本人は人にはあまり知られたくない模様。
麗奈曰く、「根が優しいので勝負どころで甘くなってしまう部分がある」と評している一方、泉水のことを認めている。
翌日、合宿最終日が終えたその日のとあるステーキ店にて。
長いテーブルにドガン!!! と並べられた推定1.5キロものステーキが、肉汁が弾ける音とともに陳列されていた。
「さー、みんな? ガッツリいっちゃってよー?」
「ガッツリ行き過ぎじゃないですか!?!?!?」
ニコニコと笑みを浮かべる夏岡に対し、あまりの大きさのステーキに驚愕する小田原南高校女子バレー部一同。
「なーに言ってるんだい、『ガッツリしたもの食べたーい』、って言うからここにしたんじゃないか、自分の発言には責任を持ちなよ?」
夏岡はそう言ったが、それも訳があった。
遡ること5分前。
夏岡がバスを運転している最中だった。
メンバーからは、はー疲れた、という声が漏れる。
そして事の発端となったのは、春希の一言だった。
「こんだけ動いたらさー………ガッツリしたもの食べたくない? 別に、1日そこらで太る訳じゃないんだしさー……?」
そしてこれを夏岡は聞いていた。
「ああ、心配しなくていいよ。ここらへん、食べれるところ多いからさ? 私の奢りだ、今日くらいガッツリいきなよ?」
………そんな粋な計らいもあったのか、連れて行った結果が今の有様である………。
そして店の張り紙には、『1.5キロステーキ、1時間以内に食べきれたら賞金1万円!!』………という煽り文句が書かれている。
それを夏岡、大幾たちマネージャーを含む総勢18人前があった。
幾らなんでもやりすぎなんじゃ………と大半の部員が思ったほどであり、幾ら思春期とはいえ、普通の女子が食える量ではない。
「こ、これ………もし残したらどうなるんですか………???」
恐る恐る、瀬里が聞く。
「ああ、大丈夫だよ、私の自腹だから。………ま、最悪私の懐マネーが18万も飛ぶことになるけどね? あ、あとライスは別料金だからさ、ライスだけはみんなの自費で頼むよ?」
しかし、幾らなんでも大半のモチベーションが奮い立つわけもなく。
夏岡はこれも想定内、と言わんばかりにこう部員たちに告げた。
「………君たち、これくらい………食えない、なんてことはないだろう? これは“挑戦“だ。絶対に春高に行く、そう決めて3年生も残ったじゃないか。だったら………このステーキを、碧南とカワタチだと思って存分に喰らい尽くせ!!!!」
このステーキを食わせるモチベーションが湧く………はずなのだが、幾らなんでも脳筋が過ぎる。
だがやるしかない。
そう思って部員たちは、この肉塊との決戦に挑むのであった。
まーしかし、流石に多いのか………食べる平均速度はやや遅い。
韋蕪樹、真理子、さやか、春希の“大食い四天王”は食べるペースがかなり速いのだが、胃腸が弱い芽衣や、少食気味の蓮や彩花には地獄だった。
味自体は全員が絶賛するほどなのだが、幾らなんでも1.5キロは想像を絶する量である。
どれだけ味変を加えても減る量はなかなか変わらないものである。
「ほらほら、もっとスピード上げないと!! 食べきれないぞ??」
(なんで先生の方が食べるスピード速いの………)
開始から約15分、夏岡のステーキは、もう半分のところまで食されていた。
麻衣や大幾、太我も食らいついて着実に量を減らしていく。
それを見ていた莉子奈は呆れ返っていた。
この人は超人か、と………。
しかし、主将である自分が残すわけにもいかず、莉子奈は水を挟みながらも量を減らしていった。
一方、麗奈と瑠李は黙々とマイペースに量を減らしていった。
……まあ、達観している2人なので、とりあえず食べきればいいというノリなのだろうか。
麗奈に関しては、その華奢な身体の何処にその量が入るのか……と言わんばかりに食べに食べていくのであるが。
それでも15分で500グラムくらいしか減っていないのもまた事実である。
更に15分経過。
芽衣、蓮、彩花がギブアップ寸前に陥り、他のメンバーも約半数がペースをガタ落ちさせていた。
その一方で大食い四天王は完食寸前まで来ていた。
韋蕪樹に関しては「まだ入る」と呟く始末で、余裕のセーフティーリードすら感じさせた。
そして夏岡に至っては、一足先に完食をさせてしまっているのだから脅威の胃袋である。
「はー……久しぶりにこんなに食べたよ………大学時代に先輩に食べさせられまくったのを思い出したよ……」
「………どんな食生活を送ってたんですか、先生……」
夏岡の感嘆に、向かい合わせになっている麻衣がドン引きしながら聞いた。
「大学に入りたての時にさ? 歓迎会、って称して死ぬほど先輩が作ったご飯を次から次へと食べさせられるんだ。正直このステーキの何倍もの量だったよ、真面目に。それと比べたら可愛いものだよ。」
「………それ、練習なんですか………??」
「そーそー、それがね、意外と役に立ったんだよ。これで部活まで保つんだよ、ホントに。それ以来、かな。大学の寮にいる間はとにかく食べて、力をつけてたなあ。懐かしいよ。」
「………脳筋の発想じゃないですか、それ………」
「アハハ、なんとでも言うといいさ。そういう理不尽も、乗り越えたら自分のためになっていたりするんだよ、意外とね? 事実、私にとってはアレは飲み物だよ。私が本気になったらそれくらい余裕さ。普段は節制はしてるよ、そこは心配しなくていい。」
「いわゆる食トレ、ってわけですか………」
「まあそうだね。高校生のうちはどんなものを食べても自分の栄養素になるからね。アレくらい乗り越えてもらわないと困るさ。春希のが発端にはなったけど……折角いい機会だしなー、って思ったからさ。」
「なるほど………」
「アスリートは食も仕事の一つ。必死に喰らいつくことで何か得るものもあるはずだ。そういう意味も見越しているわけだよ?」
夏岡はそうは言ったものの、結局1時間で完食をしたのは韋蕪樹、さやか、真理子、春希、麗奈、夏岡、麻衣、莉子奈、藍だけであり、瑠李がなんとか食らいついて残り300グラムまで持っていったのに対し、芽衣は500グラムしか食べられず、である。
他のメンバーも、1キロを過ぎた段階で力尽き、結局残りは大食い四天王で全処理をしたほどである。
こうしてステーキを堪能したメンバーは、学校に戻り解散となった。
そして春高予選に向けて、小田原南は新たなる戦術、川崎立花で得たことを普段の練習に取り入れたり、更に大きかったのは麗奈が復帰したことでそれが加速していったことであった。
心身共に充実した状態で春高予選に臨むことになるのは見えていたが、やはり人生は何があるか分からないもので、前途多難は多かった。
特に瑠李の周辺は、なかなか落ち着かなかったものである。
次回から新章に入ります。
瑠李が主役の章になりますので、推しの人は瑠李に多いので(俺も推しですw)そういう人は歓喜していいのではないでしょうか。
裏主人公、存分に暴れさせますよ!!!
ってわけで、もうすぐこの作品も1周年になりますし、これから投稿頻度も上げていこうと思っていますので今後ともよろしくお願いします!!




