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第73セット ここだけの話(後編)

今回は閑話休題第二回。

 ……というわけで、ぶっちゃけトークは続いていくのだが、ここで一年生のターンになった。


まずは麗奈から。


「これ言っていいのか分からないんですけど……麻衣は中学の時からJOCで一緒だったんで……一応話しますけど、麻衣めちゃくちゃ寝相悪くて……隣にいた哀羅にこう、ゴロン、と麻衣の蹴りが飛んできてお腹にゴスン、と……」


「麻衣ちゃんの寝相が悪いのは分かったけど……なんでそれ知ってるの??」


「哀羅の呻き声聴いて目が覚めたら……麻衣の足が哀羅のお腹に乗ってたってオチ。」


「あー……麻衣の布団、朝起きたら凄いことなってたもん。なんかわかる。」


「あのさ、麗奈……私、膝悪いんだけど……そんな悪い? 寝相。」


「多分誰が見ても悪いと思うよ。」


「マジで……?? 気をつけよ……。」


そしてさやかのターン。


「じゃあ私は麗奈ちゃんの寝顔ですかねー……めちゃくちゃ可愛いんですよ、これが!!」


さやかは興奮気味でそう言う。


これに麗奈とそれを知っている太我以外は食い気味にさやかに寄る。


何せ普段がポーカーフェイスの麗奈だ、想像することが難しい。


たとえ寝顔ですらも、である。


麗奈自身も特徴は薄いにしろ、端正な顔立ちではあるのだが。


「えー……っと……ああ、あった、これですね!」


スマホを操作して見つけた写真が、というと。


左肩を下にして寝息を立てているような麗奈の顔が。


「え、待って待って!! めっちゃ可愛いじゃん!! なにこれ!!!」


さやかの保存した写真を見た一同は盛り上がる。


「……ちょっと待って……狙ってた? それ。」


「ぶっちゃけトークは聞いてなかったけどさ、そりゃ……どうせなら見せたいなーって思って。」


「……それだったら私もあるんだけど。」


というと、麗奈もさやかの寝顔の写真を出す。


「わーーーーーー!!!! ちょっと待って!! それだけはやめてーーーーーーー!!!!」


麗奈がスマホを掲げた瞬間、さやかは慌てて制止したのであった。





 続いては蓮……の番だったが、ここで……


カサカサカサ!!! という音が……


「ひっ……!! ちょ、ま……!! ご、ゴキ……!!」


ゴキブリが出現し、パニック状態になった、かと思われたが……。


「……任せといてください。」


と、ただ一人冷静だったのが蓮だった。


飛び出していき、ゴキブリを冷静に、的確に素手で捕らえたのである。


「安心してください。ゲットしましたんで。」


蓮が真顔でゴキブリを見せびらかす。


「いやーーーーー!!!! なんで触れるの、それーーーーーー!!!!」


「ウチ、カエルとかトカゲとか飼ってるんですけど……私目いいんで、小さい頃からこうやって捕まえてはヒキガエルにあげてましたねー……。」


といって、蓮はポリ袋に入れていく。


「あー……ゴキブリを素手でゲット出来るのが私のここだけの話で……ぶっちゃけそれがバレーに生きてるなー……って思いますね。」


「いやゴキブリ触れるだけでも……って、ああそうだ、蓮。これ終わったらでいいから……ちょっと付き合って?」


「へ? まあ、いいですけど……」


莉子奈の提案を受け入れ、蓮はゴキブリの入った袋を縛り付けた。




 続いては真理子の大食い秘話と、芽衣の川崎北の裏話、大幾の太我のドジエピソードが終わったところで、麻衣の話に入る。


麻衣のエピソードは、というと。


「これですね。私は。音ゲーランキングで一位取ったことがありますね。」


「音ゲー??」


「最近ハマってて、最近はやれてないんですけど……やりますか? 今ここで。」


ということで、音ゲー一位の実力を見てもらうことになった。


曲の難易度は最高難易度の中でも一番難しい曲だ。


曲が流れ、麻衣は凄いスピードの指捌きで音符を次々とタップしていく。


しかも親指一本で、だ。


オールパーフェクトとはいかなかったが、それでも約1分半の曲の流れでフルコンボ。


全員から歓声が上がった。


「……麻衣、これいつからやってるの??」


「リハビリ中にハマって……ここ入るまで暇だったんで、受験後に猛練習して、結果コレですね。」


「凄いな……でも麻衣って結構キッチリしてるし、意外だな。」


「チームでも選抜でもキャプテンやってましたけど……私自身はそんなしっかりしてないですよ、みんなが凄いだけで……」


麻衣は謙遜したが、麻衣の発信力や指導力は天性のものだ。


そんな麻衣の意外な一面を2個も知って、全員が感心した顔をしていたのであった。





 そしてトリは太我。


「これ……俺が人生生きてきた中で一番ビックリしたことなんですけど……ねーちゃんが荒れた時ですね。」


「え……太我、荒れたってどういうこと?? 麗奈が??」


春希が食い気味で太我に詰め寄る。


「去年の……ユースからウチに帰ってきた時ですね。顔自体はそんな変わってなかったんですけど、なんか近づけないオーラ出してて……」


太我の話に食い気味に聞く全員。


……麗奈以外は。


「俺がメシ作ってる時だったかな? 2階から急に……ドカン!! って音が聞こえて来て……何事か、って思って部屋見たら……ねーちゃんがシューズをぶん投げてたんですよ、クローゼットのドアに向かって!!」


「……麗奈、覚えてるの? そのこと。」


唖然とした麻衣が麗奈に事の顛末を聞く。


「荒れてたのは覚えてるけど、太我が言ったのは覚えてない。……多分相当悔しくて自分が何してたのかほとんど覚えてない。」


「で、事情聞いたら……ねーちゃん、()()()んすよ。俺も初めて見たからビックリしちゃって……もうバレー辞める!! って言い出しちゃって……」


「え……?? 麗奈が泣いた………??」


「俺もテンパっちゃって、なに話したか覚えてないんですよ、そっから……!! 多分ねーちゃんにしか分かんない悔しさがあったんだろうな、って……!! 信じらんねーようですけど、ねーちゃんがあそこまで感情剥き出しにしたのあれっきりじゃないかな、ってくらい……!!」


太我の話を聞き、莉子奈は麗奈に事情を尋ねる。


「麗奈……何があったの?? てかそれがワラナンに来た理由??」


「……そうですね……ユースは韓国代表との親善試合みたいなもので……私は全セット出て、全部のセット取ったんですけど……私のブロックの上からポンポンスパイクを打たれるものですからね……それは別に覚悟してたし、気にしてなかったんですけど……コーチに言われた一言で心を一気にへし折られて……」


「え……なんて言われたの!?」


「『身長さえあれば即シニア代表なのにな』、って……言われてですね。……たしかに世界の()()()()()()()長身セッターですし、私は160くらいしかないので……そういう意味でも心を折られましたね……ああ、私は決して求められていたわけじゃないんだ、って……もうそれがモチベーションを奪って……JOCのタイミングでバレー辞めようって思ってしまってですね……」


「それでバレーやらなくてもいい環境にした、ってこと?」


「最初はそうでしたね。……けど小田原南の新人戦を見て……思い出しましたね、バレーの楽しさを。……その時に思いました。『私にはバレーしか無い』って。だから今は……さやかに会ったのは完全に偶然ですけど、さやかを全日本代表に育てたい。その一心でバレーをすることが出来てるんだと思いますね。」


「そっかー……麗奈も色々大変だったんだね。」


「……まあ、強豪校ですから……裏を全部話したらキリないですよ。多分知崎くんと太我以外はドン引きします。」


橋誉の裏話を、と聞いた瞬間、大幾と太我の顔から血の気が引いた。


どうやらあまり思い出したくは無いようだ。


「よし……これで全員かな……? じゃ、蓮。ちょっと付いてきて。」


「ハイ。」


全員が疑問に思いながら、蓮と莉子奈は部屋を出て行った。





 さて、ある部屋の前にたどり着いた二人。


「さーて……ミーティング終わったって報告しないといけないから……その時に蓮はタイミングを見計らってゴキブリ投げて。」


「それはいいんですけど……一緒に入るんですか?」


「私とは時間差。」


「……わかりました……」


そう、夏岡の部屋の前だ。


莉子奈がドアをノックし、夏岡の部屋に入る。


蓮は恐る恐る、中に侵入した。


莉子奈が報告する中、蓮はゴキブリを投げるタイミングを伺った。


莉子奈が話し終えたと同時に、蓮はゴキブリを投げ込んで一目散に部屋から脱出した。


莉子奈も部屋を出て行った。


そして当の被害者となった夏岡は。


「よし……寝るか……明日も早いし。」


と、布団を被った瞬間だった。


()()()()()()()()!!!


独特な疾走音が夏岡に戦慄を走らせる。


まさか……と思って見た瞬間だった。


「え………わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


……夏岡宏香27歳、渾身の大絶叫を上げたのであった。


部屋の外で聞いていた二人は、笑いを堪えるのに必死なのであった。

ゴキブリでビビるのは女の子の感じを表現wwwww

で、次回は合宿三日目。

午後の部では海に面した場所だからできるトレーニングが。

お楽しみに。

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