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第65セット 「川崎合宿」開始

今回は合宿の初っ端なんですが、思い出しながら書いていきたいなと思いますw

地獄の筋トレ合宿のwww

で、カワタチの監督と夏岡の因縁(トーク)も書きます。

 川崎立花に到着した小田原南女子バレー部のメンバー。


川崎立花女子バレー部監督の秋山涼子(あきやまりょうこ)が体育館に立ち、マイクを持つ。


「えー……今日からトレーニング合宿をやっていくわけなんですけども、まず3つのグループに分かれてそれぞれ別のトレーニングを行ってもらいます。」


固唾を飲む小田原南。


秋山は説明する。


「まず一つ目はゴム跳び。足首、膝、腰、胸の高さにして、両足、右足、左足……その順に跳んでもらいます。それを往復、引っ掛かったら最初からやり直し。ただ、胸は男子でも片足は不可能と判断したため、助走あり、両足のみとします。また、行って戻って、のパターンもやってもらいます。」


これはすんなりとポンポンと行ければすぐ終わるのだが、何回も掛かれば蟻地獄の如く続いていくというトレーニングだった。


ジャンプ力を鍛えるため、下半身がよく鍛えられる。


「二つ目はランニングと……現地の公園に着いたら階段トレーニングをしてもらいます。トレーニングの内容は……そこは男子監督の山川(やまかわ)先生に内容は伝えておりますので、一任します。」


ちなみにそこまでは10キロもある。


川崎立花は地味に海に面しているため、砂浜を走ることになる。


砂浜ランニングは足腰を鍛えることにも繋がるので、かなり効果的だ。


そして三つ目は。


「三つ目はグラウンドで、タイヤ押しとバーベルを使ったトレーニングをしてもらいます。ただし、注意点。必ず姿勢を低くして行ってください。」


トレーニングはローテーションで行っていく、とのことらしく、そんなこんなで小田原南の振り分けが決まった。



ゴム跳び



瀬里、瑠李、春希、藍、蓮



ランニング



莉子奈、桃華、真理子、芽衣




タイヤ&バーベル



韋蕪樹、恵那、彩花、麗奈(別メニュー)、さやか



と、このようになった。


また、顧問陣の配置も、夏岡、秋山がタイヤ&バーベル、ランニングが男子監督の山川、ゴム跳びを男子コーチの太田(おおた)が見ることになった。


マネージャーもそれぞれ給水や補食要因としてスタンバイすることになった。


こうしてトレーニングが始まった。


麗奈は麻衣の組んだ別メニューで、タイヤバーベルのターンは行うことになったのだった。





 声を張り上げながら重いタイヤやバーベルを駆使したトレーニングをしていく川崎立花と小田原南。


夏岡と秋山は声を掛けてゲキを飛ばしながらも、インターハイ予選以来の再開……もとい、因縁が再発していた。


「……しかし宏香も……よくウチの合宿に入れてもらおうって思ったよな……?」


「それはお互い様だよ、涼子。君がこの申し入れを受ける理由はなかったはずだ。……どういう風の吹き回しだ?」


2人は高校、大学でのライバル同士で、ユニバーシアードの日本代表の両翼だった関係だ。


独善的ながらもカリスマ性を全面に出す秋山と、調和を重んじる夏岡では、考え方や指導方法は全くの正反対。


犬猿の仲なのは明白なのだが……なんだかんだ認め合っているのは事実だった。


「……まあ去年までベスト16が定位置だったワラナンの強さが気になったからな……正直私は母校に戻って4年になる。ただ神奈川は正直歯応えがなかった。()()()()()()()()()()、な。それでお前が4強に入れれた。……今最も勢いのあるチームがワラナンだった、ってだけだ。お前から聞くと楽しんでやって、成長していっているって話だったからな。厳しさしか知らない私とウチの選手にも……宏香のその感覚を体験して、原点に帰って欲しかったからな。『バレーが楽しいんだ』ということをな。」


「なーるほどね……それが今回受け入れた理由か。ま、私も似たようなものだ。カワタチの緊張感を選手には体験して、持ち帰って貰いたかったから。それが申し入れた理由だったんだが……承諾された時は驚いたよ。君という山が動いたか、ってね。」


秋山はタバコを一つ取り出し、火を(ふか)して吸った。


そして副流煙をフウッ……と吐く。


「……倉石と……岡倉、だったか。宏香のところのスーパー一年生ってのは。」


「それがどうした? 君にも橋褒のセンター2人がいるじゃあないか。それもスタメン起用で。」


夏岡が言ったのは、「高山春菜(たかやまはるな)」と「道場安奈(みちばあんな)」のことだ。


2人ともそれぞれ183センチ、186センチと大柄で、無論のことJOCの神奈川県代表に選ばれている。


「正直高山も道場も将来性を見越してスタメンで使ってるってだけだ。戦力としてはまだ全然だ。」


「それはこちらも同じさ。麗奈もさやかも、まだまだ伸びる。……特にさやかは、ね。」


「……私は()()()()()()()、と思っていたんだ。だから敢えてスカウトしなかった。……驚くよな、喉から手が出るほど欲しいくらいの技術が素晴らしいセッターなのに何故取らないのか、って声はあったさ。山川先生には特にな。」


秋山から飛び出した、麗奈は要らない発言。


その真意は。


秋山は再びタバコを吸い、息を吐く。


「……あーいう天才型は育成が難しい。特に私のような型に嵌めるのが良い、という指導者には()()()()()()()。……いつか倉石が壁にぶち当たった時、考えが一方通行だと壁を乗り越えられずに当人が苦労することになり、腐っていく。だからあれだけ急かされてもスカウトには行かなかった。それにウチの課題はセンター陣だった。新チームになって小粒も小粒、しかも誰もパッとしない、そうなった時にハマったのがあの2人だった、ってだけだ。」


「そういった意味では私の教え方が合っている、ってことか……」


「そうだ。宏香の性格上だと誰に対しても親身に話を聞き、正しい方向への()()()()()()()()()教え方だ。……去年までのワラナンだったら、それこそ私の()()()()での一方通行、アレで勝てるはずもない。宏香の苦労は察するに余りあるな。」


麗奈への指導が合っているという風に秋山はそう言ったが、麗奈のような感性が独特なタイプは選手ファーストの教え方が合っていたりもする。


事実去年の3年生は、秋山のような指導しか知らなかったので、夏岡に反発するケースもあった。


見方を変えれば、それで瑠李が先輩とぶつかっていたのも納得はいく。


ギスギスした関係性はチームに不和を生じさせるだけだ。


秋山はそれを理解していた上で夏岡を客観的に評していた。


「そういう君だって……人の才能を見抜く目があるじゃないか。中学まで無名だった『沖屋優佳里(おきやゆかり)』を神奈川のエースに育て上げたり、ね。正直言ってしまえば……さやかの成長っぷりには私は毎日のように舌を巻いている。去年までバレーなんて知らなかった子がだよ? 最初はただ大きくて、ジャンプ力とパワーを兼ね備えているだけかな、って思っていた。事実今はそれだけだ。だけどさやかは異常なほど貪欲。……涼子なら何か分かるだろう?」


夏岡の問いに耳を傾ける秋山は、トレーニング中のさやかの方を見やる。


しばらく観察した後で、夏岡にこう告げた。


「……宏香がそう言うなら、相当な選手だろう。岡倉がモデルを過去にやっていたという事は事前に聞いていた。まあ始めたばかりなら筋力は劣ってはいるが、才能だけはピカイチだ。私の見立てでは……数年後、アイツは凄い選手になる。おそらく岡倉は……その身体能力だけではない何かを所有している。それはおそらく……『模倣(コピー)する能力の高さ』だろう。」


()()だって?」


夏岡は、秋山が言ったことを理解できなかった。


さやかが持っている最大の力が「模倣(コピー)」?


そんなことがあるのか?


少なかれ、まだレシーブも雑な部分はあるし、ブロックもスパイクも、サーブもまだまだ粗削りだ。


しかも能力には個人差があるため、どうしてもバラツキが出てしまうのが自然なはず、それなのに秋山はどうしてそうやって言い切れるのか。


全くもって度し難かった。


「本人はおそらく気付いていない。芸能界という、真似して、自分の色を出して、という世界で生き残るために『()()()』身に付いていた能力だろう。……実際映像を見返してみても……大和碧南の2セット目のセットポイントを取ったあのバックアタックのフェイント……()()()()()()()()()()()()()()。無自覚に人の真似ができていたんだ。本人は『始めたばかり』と蓋をして気が付いていないみたいだが、な。」


「おい、待て。それじゃあ禊応の時に『移動攻撃(ブロード)をやりたい』と言い出したのはなんだったと言うんだ!?」


「……そうか……『()()』が出てたのか。……なら()()()()()()()()()()()()かもな。」


秋山はそう言って、またタバコを吸った。


夏岡はさやかの事で疑問点に思いながらも、トレーニングを監視していった。




 ランニングチームが帰ってきた事で、タイヤ&バーベルチームはランニングを開始したのだった。


今回は麗奈も参加という形で。


秋山の言ったことが、後々巨大伏線になります。

まあ、すでに仄かしてはいたんですけどね。

合宿はまだまだ続きます。

次回の登場人物紹介は秋山監督です。

お楽しみに。

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