第62セット 文化祭の実行委員会にて
この回は瑠李が主人公になります。
瑠李と春希はまあ……なんていうんでしょう、一年生編の裏主人公的な立ち位置なんで、たまにはフォーカスを当てて見てもいいかな、と思ってますw
登場人物紹介、今回は和巳さんです。
倉石和巳 42歳 証券会社勤務 171センチ 61キロ 好きな食べ物 青椒肉絲 趣味 エッセイを読むこと
麗奈と太我の父。
仕事で帰りが遅いので、家事をすることはあまりない。
あまり家にいないが故、休みの日くらいしかゆっくり出来ていないのが悩み。
物語開始から一年前、妻・美沙を癌で亡くしている。
寡黙で真面目な性格で、一途な性格。
美沙を失ってからも女性関係で問題になったことは無い。
大会終了後、テストがあったので1週間部活は休みになった。
テスト終了後、女子バレー部の3年生5人は近くのファミレスで休息を取っていた。
「みんなさー、どうする? 春高は。」
莉子奈が話を切り出す。
春高は3年生には参加義務はないので、最後まで残るか引退かの二択を迫られている。
無論参加するのであれば、厳しい練習は覚悟しなければならないが。
「私は残るよ。どっちにしろ就職希望だし。」
春希は残ることを決断していた。
「まあ私も残る予定だけどねー、ベスト4まで来て引退って後悔するだけだし。」
莉子奈も春希と同様だった。
「瀬里はどう?」
「……まあ正直さやかがあそこまで成長してはいて引退した方がさやかのためにはなるかもなー……って思ってはいるけどね。でも残るよ。私も。」
「私も……瀬里と同じ。」
瀬里と藍も残ることを決めたようだった。
そして真打ちの瑠李。
「で……瑠李は? 残る?」
「……答えはもう出てるよ。」
と、コップの水を一飲みした。
「残るよ、勿論。……第一セッターが麗奈と私しかいなくて、麗奈が怪我してんだからさ。私だけが引退とか恥ずかしくてしょうがないよ。」
瑠李の目は、明らかに春高を見据えているものだった。
この夏の間に少しでも成長をする予定でいたのだ。
「じゃ、全員残るってことね……でなんだけど、文化祭そろそろだよね。」
莉子奈は話を文化祭に切り替えた。
「ん? あー、そうだね。」
「で、なんだけど……どうせならこの5人で思い出作りたいからさ……バンドやりたいな、って思ってて。」
莉子奈のこの提案を聞いた全員の頭の中に「?」が浮かんでいた。
あまりにも唐突すぎたからだ。
「え?? り、莉子奈?? どゆこと? 私ら音楽もクソも知識ないじゃん。」
瀬里は莉子奈に意図を聞いた。
「勿論無策ってわけじゃないよ? 部活の合間で練習する予定でいるから。……てなわけでこれから韋蕪樹ん家行く予定だから。」
「は!? ちょっと待ってって!! 一方的すぎない!?」
暴走する莉子奈を春希は慌てて制止する。
だが、1人反対していない人物が。
瑠李だった。
「……いいんじゃない? 丁度みんなで何かやれないかなー、って思ってたから。」
「……いいの? 瑠李。」
「今までの償いってわけじゃないけど……ちょっとでもこのメンバーと一緒にいたいからね、私も。それに韋蕪樹に頼るのはいいと思う。韋蕪樹、ドラム叩けるから。」
韋蕪樹の父はドラマーで、韋蕪樹の姉も大学でバンドマンをしているほどの音楽一家。
韋蕪樹も趣味でドラムを幼い頃から叩いているので、そんな韋蕪樹に頼るのはあながち間違ってはいない。
「うーん……まあそういうことならやろうかな。私も歌えないことは無いし。」
瀬里も渋々ではあったが乗るようだった。
「よし、じゃあ行こう!」
というわけで、5人は韋蕪樹宅へと向かっていき、バンドの指導を仰いだ。
で、その結果、ボーカルを瑠李、ギターを莉子奈、ベースを瀬里、ドラムを春希、キーボードを藍が務めることとなったのだった。
テスト明けの月曜日。
文化祭実行委員会で仕事があった瑠李は、生徒会が大道具を生徒会室まで運ぶとの事だったので、往復で運ぶことになったのだった。
そこで目撃してしまった。
黒く肩甲骨くらいまでの髪の長さがある少女を。
その少女は背が高いのだが、左膝を引きずりながら荷物を持っていた。
何やら重そうだ。
瑠李は手伝おうとその少女に声を掛けた。
「ああ、持つよそれ。」
「え? あ、ありがとうございます。」
瑠李は荷物を3/4持ち、生徒会室まで歩いて行く。
瑠李より10センチほど高い少女は、とても神秘的だった。
美人度の属性としては瑠李に近い。
「よし……こんなもんかな。そういえば名前は?」
「……一年7組の七森麻衣、と言います。」
静かな口調ながら、少女は麻衣と名乗る。
「私は亀貝瑠李。よろしく。……文化祭の実行委員?」
「……ええ。特に部活もやってないし、膝を怪我したんでこれくらいしか……」
「そっかー……」
要するに帰宅部か、といった感じの麻衣だったが、瑠李は麻衣にこう話した。
「あのさ、バレー部に入らない?」
「バレー部に?」
「あー……なんて言うんだろ、ウチらが引退したら9人になっちゃうからさ……麻衣、背も高いし絶対膝治ったら選手としていけるかな、って思ったんだよ。」
選手として、と聞いた麻衣の表情は訝しげになった。
「考えておきます……多分もう、『選手』としてはプレーできないんで……」
と麻衣がそういった時にチャイムが鳴った。
「ああ、戻んなきゃね、教室に。それじゃ。」
「ハイ。手伝ってくれてありがとうございました。」
こうして瑠李と麻衣は教室に戻っていった。
部活にて。
練習後、瑠李は麻衣のことについて呟いていた。
「……『七森麻衣』……どっかで聞いたことあるんだよな……」
「瑠李さん? どうしたんですか、呟いて。」
麗奈が瑠李に聞く。
「うわっ!! ……ってああ、麗奈か……ちょっと考え事しててね……」
「……? 良かったら聞きますよ。」
「トレ室行く?」
「いいですよ。」
2人はトレーニング室へと向かい、エアロバイクをゆっくり漕ぎながら、今日あったことを瑠李は麗奈に話した。
「今日さー……七森麻衣、って子に会ったんだけどさ。文化祭の実行委員会で。」
「はあ。」
「バレー部に誘ってみたんだけど考えておく、って言われちゃってさ……でもなんか聞いたことあって頭から離れなくてね……」
「……瑠李さん、『七森麻衣』、って言いました??」
「え? 麗奈、何か知ってる!?」
麗奈が麻衣のことを知っている口ぶりに驚きを隠せない瑠李。
麗奈は麻衣のことを話した。
「……知ってるもなにも、麻衣は私の代のJOCのキャプテンだったんですよ。……神奈川県で私が一番苦戦した相手でもあって……」
麗奈が苦戦したと言うのだから相当な実力者なのだろう。
それが今怪我でバレーから離れているとしたら……
「マジで!? うわ、私とんでもない子に声掛けてんじゃん……」
「……麻衣は教える側って考えたら一流だと思いますよ。当時弱小だった『藤沢星林中』を……私たち橋褒中をフルセットまで苦しめるまでに至らせましたから……」
「……なんとか頼めないかな、麗奈? ……正直私だけの勧誘じゃ入ってくれないだろうから……顔見知りの麗奈だったらなんとかなるかなー、って。」
「……まあ、やってみますよ。ウチの弟もマネージャーとして入りたいって言ってたんで、丁度いいかなと思いますんで。」
麗奈は瑠李の頼みをアッサリ承諾した。
しかも太我もマネージャーとして入ってくると言うことなので朗報も朗報だった。
「じゃあ頼むね、麗奈。ダメだったらダメだったでいいから。」
「わかりました。」
ここから麗奈は、麻衣に対してバレー部入部の説得に向けて動き出して行くのだった。
文化祭編はパーっと終わらせる予定なんで、メインが終わったら3年生のバンドの演奏を書いて、次章に移りたいと思います。
次回の登場人物紹介は奏子さんです。
次回もまたお楽しみに。




