第60セット 経験値の壁
大和碧南戦終戦です。
本来はめちゃくちゃ濃密な試合だったので、もっと長く書きたかったんですけど……同じシーンが続くことが多いバレーボールだと読者の皆さんが飽きるかな、と思って敢えて要らないと思った部分はカットしましたww
そうなるか!……みたいなラストをご覧あれ。
さやかが前衛に上がり、攻撃力が一気に高くなった小田原南。
瀬里がサーブを放つ。
ボールは佳奈の方へ飛び、佳奈はレシーブをした。
由希は迷うことはなかった。
ライトへ詩穂に向かってトスを挙げる。
詩穂はここが正念場になると踏んで、自分が決めるという意思を持ってストレートに豪快に叩き込んだ。
莉子奈はオーバーカットでディグをするが、後ろに逸れる。
瀬里がなんとかアンダーハンドで繋ぐが、前衛にすら届いていない。
ちょうど上がったところにいた麗奈がソフトスパイクを放ち、コートへ返した。
咲良がこのチャンスボールをレシーブで処理し、由希に繋げる。
由希はここを敢えて姉に託す。
夏帆はバックアタックを放った。
さやかのブロックに当たってボールが後ろに行く。
瀬里がちょうどいた所にオーバーハンドで冷静に処理した。
麗奈はさやかへのクイックの体勢からレフトの春希へと挙げる。
春希は一番ブロックが薄い由希のコースにストレートを放ち、ブロックをぶち破ったのだが、得点を取れるボールの浮き方では無かった。
夏帆は追いついて妹にアンダーハンドで繋げる。
由希は後ろに退きながらジャンプトスをし、速いトスを詩穂に繋げた。
詩穂は韋蕪樹の方向へブロックを切り、右手に当たってボールがコートサイドに落ちる。
麗奈がフライングレシーブで飛び込んでなんとか挙げたが、痛めた右腕の制御が効かず、ネットを超えた。
由希がこれを見逃さず、ダイレクトで押し混んでマッチポイントを奪った。
27-28。
またまた追い込まれた格好にはなったが、ここで諦めるわけにはいかなかった。
だがここで詩穂がサーブに下がる。
観客席から絶望感が漂う中、小田原南は最後の力を振り絞り、構えた。
詩穂のジャンプサーブが放たれる。
桃華がレシーブを後ろ重心になりながら取り、なんとか上げたのだが短くなった。
さやかが使える状況では無くなったが、麗奈は迷うことなくライトへトスを挙げた。
トスの先は春希。
春希は決死の想いでストレートへスパイクを放った。
佳奈がワンタッチを取り、詩穂は走りながらこれを取る。
詩穂は間に合わないと判断した由希は、スタンばっていた姉の夏帆へトスを挙げる。
夏帆は待ってましたと言わんばかりにバックアタックを放つ。
小田原南はノーブロックで対応する。
レシーブ勝負で夏帆のバックアタックと対峙し、莉子奈の方に飛んだ。
莉子奈は横倒れになりながら夏帆の渾身のバックアタックを拾い、麗奈に繋げる。
少し後方に位置取る形になったが、麗奈には問題はなかった。
麗奈はさやかと目が合った。
(麗奈ちゃん! 私に挙げて!!) (任せなよ……)
2人のインスピレーションが一瞬の刹那で木霊する。
(タイミング完璧……指の感覚も完璧……手首も……大丈夫……スピード、高さ……共に最高……)
((ドンピシャ!!!!!))
麗奈とさやかの2人の心が重なり合うように、美しいBクイックのコンビネーションが描き出された。
だが。
さやかが打ったコースには由希が居た。
ボールが小田原南のコートにスローモーションのように落ちていく。
全員が拾いに行き、さやかも手を伸ばした。
ポォ……………ン…………と、静かなコートに響き渡る、たった一つのボールが落ちる音。
死闘の幕が下ろされたと同時に、小田原南のインターハイへの挑戦が終わった瞬間だった。
セットカウント27-29、ゲームカウント1-2のフルセットの激闘だった。
インターハイへの出場を確定させ、歓喜に沸き立つ大和碧南に対し、小田原南は現実を受け止めきれず、呆然としていた。
笛が鳴り、整列した両校。
握手を終えた後、小田原南は観客席に向かって整列する。
「応援、ありがとうございました!!!!」
莉子奈がそう声を上げて頭を下げると、メンバーもそれに続いて頭を下げた。
廊下に行った小田原南は、夏岡の話を聞く。
夏岡は一つ息を吐いた。
「……経験の差が出ちゃったところはあったね。それはみんな……感じているところだと思う。だけどこの負けは悪い事じゃない。それは君たちの経験値になる。準決勝の舞台に立てたこと、それでもって……ベスト4の一角を崩して、もう一角にも肉薄出来たんだ。勿論修正しなきゃいけない部分もあるし、磨くべきところもあった。……この悔しさを噛み締めて……春高では絶対勝とう!!」
「ハイ!!!!」
夏岡も悔しそうな表情をしていたが、自分自身にもいい経験になったと、拳を握りしめた。
「次の試合……すぐにラインズマンに行って。それで麗奈は私と一緒に病院直行!!」
「ハイ!!」
小田原南は一斉に準備に取り掛かり、麗奈も着替えて夏岡の待つ総合体育館の玄関へと足を運んだ。
夏岡はタクシーを呼び、麗奈を共に乗せ、近くの整形外科医院に直行した。
病院に辿り着き、麗奈は右腕の検査を受ける。
数分後、検査結果が出たということだったので、麗奈と夏岡は診察室へと入っていった。
うーん……負けちゃいましたねえ……
なんか某漫画と似た感じになりましたが、この結末は構想段階から決めてたことです。
次回、麗奈の検査結果と、麗奈の敗戦した事への想い、3年生のそれぞれの想いを書き、そして倉石家では意外な展開を迎えます。
次章に向かってのステップの回になりますので、お楽しみあれ。




