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第58セット 麗奈の勝利への執念

麗奈のハートがチーム全体に波及していく回。

この回含め、あと3話で大和碧南戦は終わる予定です。

どのような展開になるのかはお楽しみに。

 さやかがBクイックを決めたことで11-15とし、麗奈が前衛に上がってきて、韋蕪樹がサーブに下がる。


休んだことで体力は温存できてはいるのだが、右腕の感覚はほぼ消えていた。


麗奈はそれでもやるしかない、と気を深呼吸して集める。


韋蕪樹が速いサーブを放ち、咲良の方へ飛んだ。


咲良は横倒しになりながらサーブをカットし、由希に繋げた。


現在枚数は3枚。


由希が選択したのはレフトにいる姉・夏帆。


敵がどんな状況だろうと勝負に徹するのが井口姉妹なのだから。


夏帆は事もあろうか、麗奈の右手へ向けて重いスパイクを放つ。


麗奈のブロックに当たったボールは後ろに逸れる。


だがその代償に、麗奈の右腕に痛みが指から伝わり、軋むような痛みを覚える。


桃華がなんとか繋ぎ、麗奈に託す。


さやかにBクイックを飛ばせ、莉子奈もライトに一気に回っていく。


美しいセットアップからジャンプトスの態勢に入る麗奈。


さやかも莉子奈も、準備万端だった。


だが、麗奈は違っていた。


麗奈はそこから、ほぼノーモーションでツースパイクアタックを()()()放ったのだ。


これまで一度も、いや、平塚大北戦で見せた以来の麗奈のツースパイクアタックだ。


全く予想していなかった大和碧南は、誰も一歩も動けなかった。


麗奈は後ろを向き、珍しくガッツポーズを取った。


麗奈の勝利への執念が垣間見えた瞬間だった。


これが完全に小田原南の心に火を付ける格好となった。




 そこからラリー合戦となった。


小田原南がジリジリと詰めたと思えば大和碧南も負けじと突き放す。


お互いにミスらしいミスはなく、連続得点をお互いに2回取ったため、16-20となっていた。


大和碧南のサーブから試合が終盤に持ち越されることとなった。


ここで夏岡は、サーバーの夏帆と相性のいい蓮にリベロをスイッチさせた。


夏帆は韋蕪樹にジャンプフローターサーブを放つ。


高速で揺れ動く夏帆のサーブをオーバーカットで処理をするが、麗奈の少し後ろ側にボールが行った。


麗奈はこれにも冷静に対応し、ボールの下にしっかりと入って、そこから春希へ向かってオープントスを挙げた。


春希は絶対に決める、という想いで跳び上がり、腕を弓のようにしならせる。


ブロックは3枚来ていたのだが、春希はお構いなし。


力で捩じ伏せるのが春希のプレースタイルなのだから。


雄叫びを挙げながら、春希は渾身のスパイクを由希の方へ豪快にぶち抜く。


由希はスパイクを弾き、結果的にブロックアウトとなり、3点差、17-20となった。


春希も喜んではいるのだが、目は真剣そのものだった。


麗奈の勝利への執念が、エースに気迫となって波及している証拠だった。


ここで麗奈がサーブに下がった。




 (正直右手首に力は入らない……だからこそ……限界を超えるだけだ……!)


静かなる闘志が麗奈の周囲を纏う。


表情自体は全く変わっていない、いつものポーカーフェイスではあるのだが、そのオーラは()()()()()()()()


笛が鳴り、麗奈はゆったりとステップを踏む。


右手から放たれたサーブが、折れている右腕で打たれているとは思えないほどの弾速で襲いかかる。


そのサーブは咲良に襲いかかった。


咲良は取ろうとしたところ、手元でボールがブレた。


左右に揺れ動くサーブに咲良は全く対応できず、弾き飛ばして麗奈がサービスエースを奪った。


これで18-20と追い上げた。


(なに……今の……確かに中学の時から麗奈はサーブは上手かった……だけど……! 私の知ってる麗奈のサーブじゃない……!!!)


咲良は戦慄を覚えていた。


これで万全の状態だったら、と考えるだけでも身体がすくんでいく。


咲良は息を呑み、緊張をほぐそうとステップを踏んだ。




 麗奈はエンドライン後方でボールを打ち付ける。


が、今度は右手でボールを持っていた。


麗奈は本来左利きだ。


スポーツでは右利きというだけで、()()()()()()()()使()()()のだ。


最早麗奈の劇場状態(イッツアショータイム)


笛が鳴り、麗奈は右足からステップを踏む。


フワッと跳び上がり、麗奈は左手でサーブを放った。


先ほどより更に速く、大きくブレるサーブだった。


夏帆がサーブをなんとか取ったが、右に大きく弾いた。


由希がアンダーハンドで二段トスを挙げる。


詩穂がソフトスパイクでコートへ返す。


莉子奈がアンダーハンドで処理し、麗奈へ繋げた。


麗奈はライトの韋蕪樹へトスを挙げた。


と同時に腕が軋むが、相変わらず精密機械のようなトスだった。


ブロックは2枚、しかしインナー寄りにブロックが寄っている。


だが韋蕪樹はこれも物ともしない。


(私のインナーを研究してきてるのは分かってる……だからこそ………インナー対策には()()()()()()()()()()()だ!!)


思い切り打たれた韋蕪樹のスパイクが由希のオーバーカットを弾き飛ばし、これで一点差まで詰め寄ることに成功した。


大和碧南は逆転の危機に陥り、監督の森山はタイムアウトを取った。



次回から2話は終盤戦に突入します。

展開はまだ分からない感じですが、クライマックスはちゃんと考えてますんでご安心ください。

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