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第52セット 緊急事態

多分、この回は皆さん唖然とする展開になるんじゃないでしょうか。

元々そういう予定でやってたんで、こういうこともあるよ、って感じで抑えてもらえればいいかなと。

登場人物紹介は、茜里です。


井上茜里(いのうえあかり) 大和碧南高校女子バレー部3年 柳寧中出身 バレー歴は小2から 12月25日生まれ O型 ミドルブロッカー 180センチ 65キロ 3サイズB88W61H86 好きな食べ物 海鮮ラーメン 趣味 けん玉


チームの裏センターで、ブロックの要。

スピードが速くなく、跳躍力もある方ではないが、ブロックやクイックの巧さは一級品。

沙織と違い、寡黙な性格。

勉強は学年トップで、高偏差値の大学進学を予定している。

由希曰く、掴みどころがなくて苦手とのこと。

 前セットと打って変わって、小田原南がリードしている展開。


これだけでも会場がどよめいていた。


サーブは沙織から。


沙織はフローターサーブを放つ。


桃華がアンダーハンドでこれを処理し、麗奈にAパスで繋げる。


麗奈は一つ息を吐き、セットアップの体勢に入った。


麗奈が選択したのは、さやかへのCクイック。


さやかは強烈なクイックを放つが、佳奈がこれを触る。


このボールを詩穂が掛け声を上げながらアンダーハンドで処理した。


由希は夏帆にトスを託す。


夏帆はそのトスをクロスに打ち抜く。


麗奈の方向に行き、麗奈は一歩も動くことなくディグをし、軽々とボールが打ち上がる。


これを桃華がアンダーハンドで韋蕪樹にトスを上げた。(リベロは「アタックラインを踏み越えてオーバーハンドで二段トスを上げてはいけない」というルールがある。因みにジャンプでアタックラインを越えてオーバーを使うのはOK)


韋蕪樹は一歩目から二歩目のステップのタイミングをずらしながら助走し、跳び上がった。


二段トスなので、当然ブロックは3枚来る。


流石にいつものインナークロスを使おうものなら、ふかす危険性があった。


韋蕪樹は少し抑え目にスパイクを放ち、それは夏帆のブロックの手に当たる。


由希がアンダーハンドで処理し、夏帆は佳奈へとすを上げる。


佳奈はブロックアウトを狙おうと韋蕪樹のストレート側へ切ろうとしたが、韋蕪樹も甘くない。


右手を少し外旋させ、ストレートコースをシャットアウト。


ボールが落ち、小田原南がラリー合戦を制した。


8-2と、大幅リードの展開。


第二セットの主導権は貰った、かに思えた。



 大和碧南も負けてはいなかった。


ジリジリと追い上げていき、中盤に差し掛かる頃には13-10となっていた。


勿論小田原南にも油断は微塵もなかったが、それ以上に底力という点では向こう(大和碧南)が上だった。


麗奈もトスで必死に振ろうとするが、なかなかブロックを振り切れない。


悉く拾われ、トスを繋げられ、ラリー戦を奪われるという第1セットと同じ展開になっていた。


(まずいな……何か手が無いときついな……さやかも下がっちゃったし……けど今さやかのサーブのはず、切るか、アレを。ホントは温存しときたかったけど背に腹は変えられないしな……)


麗奈は必死になって頭を回し、この悪い流れをどう切り抜けるかだけを考えていた。


さやかは弱めのサーブを放った。


まあ初心者なので、サーブはそこまでまだ強くないのだが。


咲良がカットし、由希に繋げる。


由希は詩穂へのバックアタックを選択した。


詩穂の強烈なバックアタックが、さやかに襲いかかる。


さやかは、試合の中でのレシーブの経験が皆無に等しかった。


咄嗟に右腕を出してこれを処理したのだが、小田原南コートから見て右側の壁に大きく逸れた。


誰もが大和碧南に得点が行くかと思ったが、ただ一人諦めていない人物がいた。


麗奈だった。


麗奈はダッシュで壁まで走り込み、左足でレイアップシュートのように踏み切ってジャンプした。


ボールが届くと見るや否や、手を握り拳に変え、そのまま猫パンチをするかの如く拳でボールを弾き返した。


しかし、勢い余ったが故に、腕から壁に激突してしまった。


と同時に麗奈の腕に()()()が鳴り、激痛が走った。


「ナイス麗奈!!」


莉子奈が声を張り上げる。


高く跳ね上がったボールを韋蕪樹はアンダーハンドでチャンスボールを返すだけに留まった。


咲良がアンダーハンドで処理し、由希はBクイックを茜里に挙げた。


広い体育館の壁際までいけば、麗奈も戻りは遅くなる。


麗奈の方向に綺麗に決められて、13-11となった。



 麗奈の腕は骨が折れたような感覚がしていた。


何せ激痛が走っている。


が、麗奈はそれを隠すかのようなポーカーフェイスを相変わらず保っていた。


「麗奈、大丈夫!? 壁に当たってたけどさ!!」


春希が心配そうに麗奈に寄る。


「私は大丈夫です。気にしないでください。」(……ホントはめちゃくちゃ痛いんだけど……)


麗奈は気丈に振る舞ったが、それとは裏腹に右手の感覚が()()()()()()()()()()()()()()


その証拠に手首付近が骨折特有の腫れを帯びていた。


「麗奈ちゃん、ゴメン助かった。」


さやかも麗奈の今のプレーに感謝を述べる。


「さやか、これぐらいいいよ。チームなんだから。」


麗奈は気にする素振りは一切見せなかった。


今は試合に集中しなければいけない、そう考えていたのだが、腕の痛みが尾を引くことになるのだった。



 その影響はすぐに出た。


詩穂が上がってきて、佳奈のサーブのターンになった時だった。


サーブを韋蕪樹がオーバーハンドでカットし、麗奈に繋げる。


春希へのAクイックレフトセミ時間差を挙げた時にそれは起きた。


その()()()()()()のだ。


()()()()()()()()()


いつもの麗奈の正確なトスを打っているメンバー、特に当事者の春希はすぐに気づいた。


麗奈はさっきのプレーで異常をきたしたと。


春希は咄嗟に左へ打ち抜いて14点目を決めたのだが、夏岡へ目で訴えた。


麗奈に緊急事態(エマージェンシー)が発生した、と。


「すみません、少しズレました。」


麗奈はすぐに謝罪したが、春希は麗奈の右手を見て愕然とした。


「……っ……これヤバいって! 絶対折れてるよこれ!!」


原因が右手の異常だと気づいてしまった。


「大丈夫です、これくらい……」


麗奈は強がるが、莉子奈が止める。


「ダメだって! すぐ手当受けてよ!!」


だが麗奈も引き下がらない。


「今の状況で私が抜けるのはそれは……」


揉めている中で笛が鳴った。


瑠李が麗奈の番号の札「10」を持っていた。


交代を示したものだった。


麗奈は咄嗟に夏岡の方を見るが、夏岡は険しい顔で首を振った。


桃華が麗奈の方を見た。


「麗奈、アンタはチームが勝つのと……自分が万全の状態でトスを挙げるのと……どっちが大事なの! アンタはまだ先あるんだから……! ここは大人しく従いなさいよ!! 瑠李さんだってこの状況、分かってるから! アンタがトス挙げれなくなる方が困るよ、チームが勝つよりも!!」


「……分かりました……」


悔しそうなオーラを醸し出しながら、麗奈は10番の札を受け取った。


瑠李は麗奈の肩に手を乗せる。


「……大丈夫……Bにいる間に……色々考えた……だから任せといて、麗奈。絶対セット、もぎ取ってくるから。」


瑠李は静かに燃えていた。


気持ちのノリが最高レベルに。


瑠李は燃える気持ちをコートに全面に出していた。



 一方、麗奈はベンチに下がり、パイプ椅子に座って応急処置を受けていた。


「いたっっっ……」


夏岡に患部を触られ、思わず痛いと漏らしてしまった。


「まったく、無茶するからだよ、麗奈……君がここまで無鉄砲なプレーするとは思ってなかったよ、そりゃ。だけどこの腫れ(コレ)は深刻だ。このセットの間は痛みを最低限取ることを優先しよう。病院には後で連れて行くから。」


「……はい……」


「大幾、氷嚢とテーピング持ってきて!」


「ハイ!」


蓮も手伝いながら、大幾はクーラーボックスから氷を氷嚢袋に入れ、テーピングテープをバッグから取り出していった。


そしてテーピングを麗奈の手に巻き、患部に氷嚢を乗せた。


「……春希とか3年生なら無理してもまだ分かる、けど麗奈はあそこ……無理する必要は全くなかった。チームのためのプレーだっていうのは分かる、でも麗奈、君はまだ1年じゃないか。今の3年生は……今じゃない、(春高)を見据えてる。今ここで無理して怪我しても……君のためにもチームのためにもならない。」


「……ハイ……すみませんでした……」


夏岡は厳しく麗奈を叱咤するが、同時に3年生の熱意をも信じていた。


()()()()()()()()()()()。何故かは分からない、だけど瑠李の背中を見て確信したよ。絶対に麗奈のこの事態を力に変えてくれるって。」


夏岡の目は真っ直ぐに、コートにいるメンバーを見つめていた。



 一方コートでは。


「とりあえずレフトだけでいいよ、警戒するの。」


瑠李は前衛にいる3人に声を掛けた。


「夏帆はそこまでマークしなくていいって感じ?」


莉子奈はこれに反応する。


「夏帆は私がどうにかする。だから詩穂は徹底マークしといて。」


「了解。」


笛が鳴り、春希が強烈なジャンプサーブを放った。


咲良が気持ちの乗った重いサーブをレシーブしたが、小田原南コートへ弾き飛ばした。


チャンスボールになる。


桃華がレシーブし、瑠李に繋げる。


(正直麗奈があーなるとは思ってなかったけど……準備だけはずっとしてきた……ぶっちゃけ「3年生なのに」って言われてるかもしれない、だけどやるべきことは全部やった。……全部は……この時のために!!)


藍と韋蕪樹のダブルクイックからライトへの平行トスを挙げる。


それも高速のトスを。


それに莉子奈が走り込んで跳び上がった。


大和碧南はこれに対応できず、莉子奈がこれを打ち抜いてポイントを奪った。


莉子奈と瑠李は雄叫びを挙げ、ハイタッチでお互いを称え合った。


「チッ……麗奈が居なくなったから行けるって思ってたらコレか……やっぱ甘くないな、ワラナンは……」


夏帆もこれには舌を巻いていた。


正直瑠李のことを侮っていた、という現れであった。


「いーよ、お姉ちゃん。ここ切ればいいから。」


由希は夏帆に切り替えるように言った。



 小田原南には動揺も微塵もなかった。


寧ろ熱量が高まっていた。


「これが……3年生の熱量……」


麗奈がパイプ椅子に座りながら呟く。


「麗奈、この姿を目に焼き付けておきなよ。君は2年後にあの立場になる。その時に同じ熱量、いや、それ以上に熱量を出せるはずだ。君は今のうちに……気持ちを高めておいて。いずれコートに戻るんだから。」


「……はい。目に焼き付けます。」


瑠李が入ることで一気に熱量と気合が帯びている小田原南。


そしてこの後、試合は予想もしていないような展開を迎えることとなった。


そのキーマンは瑠李とさやかだった。

まさかの主人公ケガパターン。

しかもこの物語序盤で。

第2セット、まだまだ続きます。

次回の登場人物紹介は、かおりです。

ただ彼女は、ほぼほぼ出ることがないwww

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