第43セット 激闘の終焉
今回で禊応戦終了です。
さやかがいない分、見所ないと判断したらカットしていきたいと思いますww
今回は小田原南の家族構成の紹介です。
麗奈→父、双子の弟
さやか→両親、弟3人、妹1人
莉子奈→両親
瀬里→両親、弟、犬3匹
瑠李→義父、母、兄
春希→両親、姉2人、妹1人、弟2人
藍→両親、兄
韋蕪樹→両親、姉
恵那→母、妹
桃華→両親、姉、兄
彩花→両親
蓮→両親、兄、弟、爬虫類10匹、両生類7匹
真理子→両親、弟2人、猫1匹
芽衣→両親、妹2人
大幾→両親、兄2人、妹1人
夏岡→両親、妹、弟2人(現在一人暮らし)
笛が鳴り、瑠李がジャンプフローターサーブを放った。
しっかりと掌で押し出されたボールの弾速は速く、手元で小刻みに揺れた。
そのボールは花蓮の方へ正確に行った。
花蓮はなんとかレセプションしたのだが、宙が使える状況ではない。
朋美はCパスとなったレシーブを、二段トスで哀羅へと挙げた。
哀羅はゆったりとした助走からタイミングを合わせて跳び上がった。
哀羅はクロスに打ち抜いたが、春希がランニングレシーブで処理した。
現在瑠李がピンチサーバーとして入っているので実質「ツーセッター状態」だった。
瑠李がネット付近まで走り込み、麗奈がスパイクの態勢に入るためにアタックライン付近まで開いて下がった。
瑠李が選択したのは麗奈だった。
フワッ、という、やや山なりのセカンドテンポのトス。
このツーセッターという形も想定して練習してきた形だ、今回の小田原南はまさに「変幻自在」という言葉が相応しい。
ブロックは2枚、宙と哀羅の2枚だ。
麗奈もスパイクを打てない方ではないが、この2枚はかなり高い。
しかし、麗奈はものともしなかった。
トスをギリギリまで引きつけて、哀羅の左小指を狙ってスパイクを放った。
見事に当たり、ブロックアウトとなって小田原南の連続得点となった。
麗奈が小さくガッツポーズを取った。
相変わらず淡々としている麗奈と、麗奈と瑠李を迎える全員とで、温度差が全然違っていた。
瑠李と麗奈は、静かに上下に拳を合わせた後、グータッチを交わした。
そして、瑠李はサーブに戻っていった。
これで17-13。
中盤終わりかけのタイミングでこの点差は大きい。
瑠李はポンポン、と両手でボールをバウンドさせて、集中を整えた。
笛が鳴る。
瑠李はステップをゆったりと踏み、両手でボールを軽く挙上させる。
そして手で押し込む。
サーブは紗衣に飛んだ。
紗衣は長い腕を生かしてボールを難なく処理した。
朋美が選択したのは宙のCクイックだった。
莉子奈がワンタッチしたのだが、コート奥までボールが飛んだ。
瑠李が走ってなんとか処理をする。
麗奈も同時に走り込んで、ボールの下に潜り込んで、オーバートスで春希のバックアタックに繋げた。
春希も流石に軽く返すだけに留まった。
しかし、鋭い回転が掛かる。
花蓮が一歩前に踏み出して処理をする。
朋美が選択したのは哀羅へのレフト平行トス。
哀羅はストレートに切り、麗奈のブロックを弾き飛ばし、ボールはコートに落ちた。
これで17-14。
まだまだ禊応も食い下がってくる。
瑠李はさやかと代わってベンチに戻り、さやかは桃華と交代した。
と、ここで宙のサーブのタイミングで禊応も動いてきた。
こちらも3番のユニフォームを着た選手が、岸谷真矢が「11番の札」を持っていた。
真矢が宙とチェンジし、サーブへと下がっていった。
笛が鳴り、真矢はサーブを放った。
ブロード型のジャンプフローターだった。
弾速は両手挙げより多少遅くなるが、その分揺れる。
韋蕪樹がなんとか処理したが、短くなった。
麗奈は二段トスで迷うことなく選択したのが春希へのバックアタックだった。
春希は思い切り打ち込むが、禊応コートのエンドラインを超えてアウトになった。
これで17-15となり、また2点差まで詰め寄ってきた禊応。
これを見ていた夏岡は蓮を呼び、桃華と一時的に代わった。
動体視力の良い蓮で上手いことカットする狙いだった。
そして、再び真矢のサーブが来る。
お手並み拝見と言わんばかりに蓮の方に揺れるサーブが来た。
蓮がしっかりとカットして麗奈にAパスで繋げた。
麗奈はもう一度、春希のバックアタックを選択した。
春希も、もう同じヘマはしまいと、先ほどより少し遅い、回転量が多いスパイクを放った。
これが功を奏し、真ん中に来たところに真矢がフライングで取ろうとするが、コートに落ちた。
18-15。
良い状態で終盤を迎えることができ、流れも依然小田原南のままだった。
この後はお互いのエースがまた、打ち合う展開になり、一時紗衣の気迫のこもったスパイクを連発し、一時一点差まで詰められるが、そこから春希が止まることなく連続して得点を決めたことで、現在23-20。
丁度さやかが上がり、瀬里がサーブに下がるタイミングで、夏岡がまた動いた。
恵那が瀬里の番号の札を持っていた。
瀬里は恵那と代わり、恵那がサーブへと下がっていった。
笛が鳴る。
恵那はジャンプフローターで哀羅を狙う。
哀羅は弾速の速いサーブを詰まりながらもAパスでしっかりと挙げた。
朋美の選択は勿論のこと紗衣だった。
紗衣の反りは終盤でも衰えない。
さやか、韋蕪樹はタイミングを合わせて跳び上がる。
体重を乗せた渾身のスパイクを放つ紗衣。
それはさやかのブロックに当たり、コート奥にボールが飛ぶ。
恵那も飛び込んで触ったのだが、恵那のレシーブ力では触るので精一杯だった。
莉子奈も後に飛び込むが、流石に取れなかった。
これで23-21となり、流れはまだまだわからない。
ここからがクライマックスだった。
椎奈がサーブに下がる。
椎奈は笛がなったと同時にクイックサーブを放った。
この終盤での奇襲に一瞬面食らった小田原南だったが、冷静になって莉子奈がカットする。
Aパスで繋げて麗奈に繋げた。
麗奈はこの最終盤、エースの春希に託した。
春希は2枚来てようがお構いなし。
花蓮のブロックをパワーで弾き飛ばし、コート奥へとボールを追いやった。
朋美がジャンプしても取れないボールを、諦めていない人物がいた。
透子だった。
ダイビング・フライングしながらのワンハンドレシーブで上空へ打ち上げた。
朋美はアンダーハンドで紗衣に最後を託した。
紗衣はタイミングを合わせて跳び、さやか、韋蕪樹の2枚で小田原南は対処する。
だが、パワーだけじゃないのが紗衣であり、元U-15たる所以だった。
さやかの右腕の側面にボールを当て、芸術的なブロックアウトを奪った。
これで23-22。
気迫だけで決めた紗衣。
これが4強の意地、エースの意地、主将の意地だった。
そしてまた、椎奈がサーブに下がった。
椎奈のサーブを莉子奈がカットし、麗奈がまた繋げた。
麗奈はレフトへの平行トスを春希に挙げた。
走り込んでそこまで入り込んでいた春希は、躊躇いもなくクロスへと打ち抜いた。
宙の左手に当たり、紗衣の方向に行く。
紗衣がフライングでなんとか挙げ、朋美に繋げる。
朋美は花蓮を選択せざるを得ない。
花蓮はサウスポーからの春希のコースにブロックアウト狙いで打ち込み、目論見通りブロックアウトとなった。
この土壇場で禊応が同点に追いつき、流れが禊応に行きかけてしまった。
夏岡は2回目のタイムアウトを取った。
流石にヤバいと感じたようだった。
「慌てるな、この終盤でも自分に出来ることを確認して、いいね!?」
この言葉に全員頷いた。
麗奈が上空を見上げ、一息吐いた。
どのトスでマッチポイントを取るか、ということだけを考えていた。
そして、タイムアウトの30秒が終了し、コートに戻っていった。
全員、表情が引き締まっている。
それは小田原南だけでなく、禊応もそうだった。
お互い、分かっていた。
ここから超限戦であり、お互いの意地の見せ所であることを。
椎奈のサーブ。
桃華にボールが来て、桃華は冷静にカットする。
麗奈が選択したのはさやかだった。
さやかのAクイックを、宙が意地で触る。
そのボールはさやかの真上に来た。
しかし、やや高かった。
だが、麗奈の技術はこれをものともしない。
それも、この最終盤でも。
ワンハンドトスでレフトまで挙げる。
挙げ先の主は韋蕪樹だった。
ワンハンドでも正確無比なトスに心の中で脱帽しながらも、韋蕪樹はストレートにスパイクを放った。
朋美がなんとかディグを挙げ、花蓮はネットバウンドからのアンダーハンドで二段トスを紗衣に挙げた。
小田原南は、さやかだけにブロックを託す。
紗衣はさやかの手を目掛けてスパイクを放ち、そのボールはブロックアウトになる………かと思いきやだった。
麗奈はこれを読んでいた。打ち出した瞬間走り出し、アンテナの外から落下点まで抜け出して、余裕を持ってアンダーハンドでアンテナの、麗奈から見て左に通さないよう、慎重に、且つ正確にボールを上げた。
これで会場の雰囲気を掌握した。
桃華がアンダーハンドで春希へ二段トスを挙げた。
春希は思い切り踏み込み、渾身のスパイクを放った。
クロスにぶち抜かれたボールが紗衣のディグを弾き、コート右奥に飛んだ。
朋美も処理できず、小田原南がマッチポイントを奪ったのだった。
春希は両手でガッツポーズを取り、円陣の輪に入った。
そして、春希がサーブに下がった。
笛が鳴る。
春希は2秒、深呼吸する。
ボールを挙上するのに1秒、ステップするのに1秒、そして、跳び上がってからジャンプサーブを放つまでが2秒。
しめて6秒の刹那。
春希は渾身の力を込めてジャンプサーブを哀羅目掛けて放った。
ミスの恐れを微塵も感じないジャンプサーブに気圧された哀羅はどん詰まりになった。
かなり短くなる。
透子がアタックライン後ろから二段トスをオーバーハンドで挙げた。
現在ライトにいる禊応の絶対的エースの紗衣。
紗衣は思い切り、渾身の力を込めてスパイクを放った。
莉子奈の上から来たボールだったが、春希が玉砕覚悟で突っ込んでこれをレシーブしたのだった。
莉子奈はネットから跳ね返ったボールを、慌てずにライトにいる韋蕪樹へアンダーハンドで挙げた。
韋蕪樹が得意のクロスにボールを放つが、花蓮が意地を見せ、これを拾った。
しかし、ボールが小田原南に返る。
桃華がチャンスボールを処理し、麗奈に繋げる。
麗奈が最後を託したのは。
さやかだった。
この状況、普通なら確実にエースだと思うはず、その心理を突いたトスだった。
Bクイックに挙げる麗奈、あとはさやかを信じるのみだった。
「決めろさやかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
リザーブ内から、小田原南のリザーブメンバー全員の声が聞こえてくる。
初めての経験、しかし、さやかは落ち着いていた。
麗奈が挙げてくれたトス、絶対に決めると。
ムチのように腕をしならせ、渾身のスパイクをクロスに放った。
ノータッチで抜ける。
しかも弾速も速い。
回転もクイックにしては多い。
哀羅も透子も、これに必死になって飛びつく。
だが、バレーボールの神は、その必死な想いには無情だった。
哀羅、透子で触ることが出来ず、ボールが床に落ちた。
それと同時に禊応の敗北、即ち「ベスト4からの転落」を意味していた。
ゲームセット、セットカウント2-1。
小田原南高校、11年ぶりのベスト8進出となった。
喜びに沸き立つ小田原南。
主審が笛を鳴らし、2チームを分けた。
だが、哀羅は動けない。
コートに伏せったまま。
宙が肩を叩く。
「ほら、哀羅並ぶよ。……もう、終わったんだから……」
哀羅は宙の問いかけに立ち上がり、エンドラインに向かって走っていった。
その目には涙が浮かんでおり、哀羅は止めることが出来なかった。
終了を告げる笛が鳴り、両校握手をした。
両チームサイドだけでなく、見ていた観客全員から拍手が沸き起こった、それくらいの熱戦だった。
禊応は整列し、観客に向かって頭を下げた。
最後まで堂々と、それが禊応が出した答えだった。
そして、引き上げていく。
哀羅はタオルで頭と目を覆う。
止めどなく溢れてくる涙を止めることができず、その目は赤く染まっていた。
これを見た紗衣は、
「……アンタが別に泣かなくてもいいでしょ哀羅……悔しいのはわかる、でも……それはアンタだけじゃない。悔しいのは皆一緒……アンタ1人のチームじゃないよ、禊応は……」
まだ次がある、そう言いたげだった紗衣だったが、紗衣の顔も悔しさでいっぱいの表情だった。
「………すみません……私……役に……立てなかったです……」
言葉を絞り出し、そう、呟いた哀羅。
これを聞き、紗衣は、
「……アンタは私の後継者になれるよ……だから……その悔しさ、糧にしてかないとさ。哀羅はまだ……私たちより先は長いんだから。」
そう、声を哀羅に掛けたが、哀羅は相変わらず泣きっぱなしだったのだった。
紗衣の目は、真っ直ぐに、次の目標を見据えていたのだった。
一方、小田原南はというと。
どこか選手全員、嬉しそうな表情を浮かべていた。
……麗奈以外は。
夏岡も浮かれてはいない。
「今回の勝ちは喜んでもいいよ、でも……次があるからな? 今日は……だからもう一回、気を引き締めていこう。次に勝ってさ、ベスト4、行っちゃおう、勢いのままさ、いいね!?」
これに小田原南は全員引き締まった表情に戻り、いい声で返事をし、控室へ戻っていった。
次の試合は第二試合なので、小田原南は着替えて準備をする。
ユニフォームは黒、リベロがピンクだった。
次の相手は鎌倉市に位置している「頼朝高校」。
ここもまた、ベスト8が定位置の高校で、合宿でも対戦した高校だった。
麗奈が飲み物を買いに自動販売機まで向かっていると、哀羅が声を麗奈に掛けた。
どうやら次の試合でチームがラインズマンをするようで、そのために残るという状況だった。
「麗奈……ちょっと話がある。」
涙に明け暮れた目で麗奈にそう、哀羅は話しかけた。
麗奈も了承した。
2人は飲み物を買い終えた後、近くのベンチに座ったのだった。
はー……やっと禊応戦終わったーー………
濃密すぎて脳内がパンクしそうになりましたね、マジで……
次回は麗奈と哀羅のトークを中心にお送りします。
インハイ予選編、次回から後半に入りますので、お楽しみにしていてください。




