第42セット 「天才セッター」の証明
前回が大バズりしたから落ち着いた回になればいいかなー……って思いますwww
今回のトピックスは、「小田原南女子バレー部」学力ランキングでございます。
一位 蓮(禊応を受験するほどの頭脳。ちなみに禊応も合格している。)
二位 瑠李(心理学志望だけあり、現代国語には無類の強さを誇る。)
三位 彩花(ガチ理系)
四位 瀬里(英語が得意)
五位 芽衣(器用貧乏だが、平均が高い)
六位 藍(数学はほぼ満点を取るほど)
七位 麗奈(社会科目が得意。ただ、他は70点台。)
八位 莉子奈(英語がめちゃくちゃ苦手なのだが、他は高い)
九位 韋蕪樹(得意科目はあまりない。)
十位 桃華(数学以外低い)
十一位 春希(国語は毎回赤点寸前だが、瑠李に教えてもらうことでギリギリ救われていた)
十二位 さやか(そもそも義務教育時代にあまり勉強してこれなかったので伸びる余地はあり)
十三位 大幾(統計学がダントツで得意なのだが、それ以外はからっきし)
十四位 恵那(真面目に勉強しても本当に出来ない、センスないやつ)
十五位 真理子(猛勉強したらいけるタイプ。授業の時は毎回蓮に助けられている。)
小田原南一点リードとなったタイミングで禊応が1回目のタイムアウトを取った。
序盤で両チームが一度タイムアウトを使った、ということになる。
禊応サイドは三島が指示を出した。
「11番のバックアタックのブロックは平川だけでいい。」
そして、こう続けた。
「あの11番のアレはレシーブに集中する方がいい。まだ始めたばっかりのやつのスパイクだ、拾えないわけがないだろう?」
これに禊応のメンバーは頷いた。
一方、小田原南サイドは。
夏岡が指示を出す。
「さやかは無理にサーブを決めようとしなくていい。入れるだけでいいよ、まだ。で、麗奈は……今向こうがさやかに集中が行ってるからもっと回していこう! それで忘れた頃にさやかに挙げてぶち込ませりゃいいから。オッケー!? みんなも準備しておくようにね!!」
「ハイ!」と全員が返事を返す。
麗奈がさやかに声を掛けた。
「さやか、向こうがアンタに警戒を強めてるのはあるから……それでもいける?」
これにさやかはボトルの水を一含みした後にこう、答えた。
「大丈夫……任せといて、麗奈ちゃん。」
さやかの目は落ち着いていると同時に静かな気迫が漂っている。
本当に2ヶ月前にバレーを始めた人間の気迫だろうか、一流選手の空気をもう、既にさやかは纏っている。
(ホントすごいな……さやかは。たった2ヶ月であんな雰囲気を纏えるんだもんな……全日本の時も……橋誉にいた時も……あんな雰囲気を纏っている選手は殆どいなかった。だからさやかに会えて本当に良かったと思う……だって……セッターをやっててこんな楽しいことはないからね……)
まだまだ成長途上のさやかがこれほどまでのオーラを纏えることに末恐ろしさを感じながら、麗奈は心の中で笑い、楽しんでいたのだった。
さやかを全日本代表まで押し上げられる、と本人に宣言したからにはこの雰囲気を本物にしなくてはいけない、麗奈はそう、改めて心に誓ったのだった。
そして、禊応に勝つと。
タイムアウトが終了し、再びさやかのサーブのターンが来た。
笛が鳴り、さやかはフローターサーブを山なりに放った。
哀羅がレシーブでカットする。
朋美が宙のクイックを選択した。
瀬里のブロックに当たってワンタッチが取られる。
春希がオーバーカットで挙げる。
麗奈が選択したのは、迷うことなくさやかへのバックアタックだった。
だが、禊応も前回と違っていたのはブロックが宙の一枚だけという事実。
他は全員、レシーブの体勢に入っていた。
しかし、さやかはそんなこととはお構いなしだった。
放たれたスパイクは宙の右側を抜き、花蓮の方に行った。
花蓮がなんとかディグで挙げた。
朋美がランニングジャンプトスで哀羅へ速いトスを挙げた。
哀羅が強い踏み込みで助走して跳び上がる。
哀羅は麗奈のコースへブロックアウトを狙い、打ち込んでいった。
高く打ち上がったボールは禊応コートのサイドラインを割ろうとしたが、麗奈は支柱の外から回ってレシーブで挙げる。
アンテナの外から返されたボールを、韋蕪樹がアンダーハンドで挙げた。
春希が軽く打って禊応コートへ返した。
透子がレシーブして朋美に返す。
ここで朋美が仕掛けた。
フワッというツーアタックを小田原南コートへ返し、意表を突かれた小田原南はなす術なくボールを床に落とした。
これでまた同点。
さやかは役割を終え、桃華と交代した。
ベンチに戻ろうとするさやかを大幾と藍が無言でハイタッチで迎えた。
宙がサーブに下がり、椎奈が上がってきた。
宙がサーブを放ち、韋蕪樹がカットする。
麗奈が選択したのは莉子奈へのレフトセミ。
莉子奈はここまでほとんど決めていない鬱憤を晴らすかの如く、椎奈の指先を狙ってブロックアウトを狙い、体育館の奥まで弾き飛ばして宙のサーブのターンを一本で切ってみせた。
手を一つ叩き、円になる。
そして莉子奈はサーブに下がった。
春希が前衛に上がり、攻勢の準備が整った。
莉子奈がフローターサーブを放つ。
透子がカットし、朋美が選択したのは紗衣のバックアタックだ。
バックレフトからの強烈なバックアタックが莉子奈の位置よりも更に左に突き刺さり、また同点に追いつく。
完全に一進一退の状況になった。
禊応も小田原南の勢いに負けていない。
9-9となる。
まだまだ序盤だが、濃密すぎて、それよりも長く感じる。
互いのエース同士がこの後打ち合う展開になったが、先に13点を奪ったのは小田原南だった。
それも、さやかがBクイックを決めたことによって。
だが、13-12と、依然として全くわからない状況。
コートチェンジとなり、再度ポジションを確認する。
IFのポジション確認、得点順、ローテーション順の確認を終えたのを確認完了したところで、韋蕪樹のサーブから試合が再開された。
韋蕪樹が弾速の速いサーブを放った。
透子が挙げて正確に朋美に返した。
哀羅への速いトスを挙げる朋美。
ゆったりとしたステップからさやかの位置より更にクロスの方向へ打とうとしたが、さやかも同じところに何回も抜かれるほどバカではない。
元々悪意に敏感なタイプのさやかだからこそ、勘の鋭さを持っている。
しかも現在、集中力が高まっている状況。
哀羅の放ったクロススパイクを、さやかは両手でその方向へ持っていき、キルブロックで思い切りコートに突き刺さった。
これで14-12。
膠着状態が解けかけていったのだった。
しかも、ブロックポイントという最高の形で。
中盤でこのポイントは非常に大きい。
このままの勢いで小田原南が禊応を飲み込もうとしていた。
韋蕪樹のサーブがまた打たれる。
紗衣は難なくカットし、朋美にAパスで繋げる。
朋美が選択したのは哀羅だった。
哀羅は麗奈の方向へ打ち抜いて無理矢理にでも得点を手繰り寄せようとしたのだが、麗奈もそれを簡単に許すほどブロックの高さも低くないし、下手でもなかった。
思い切りストレートに打たれたスパイクを麗奈はヒョイ、といった感じで、飄々と、且つ淡々と、さりげなくブロックポイントを決めたのだった。
これで15-12となった。
3連続得点で、しかもブロックポイントに至っては2連続ポイントだった。
三度、韋蕪樹のサーブだ。
韋蕪樹の速いサーブを紗衣がカットする。
トスの選択は紗衣のバックアタックだった。
バックライトから強烈なバックアタックが放たれる。
莉子奈で止められるわけがなく、ブロックを弾き飛ばして、体育館奥にボールは飛んでいった。
ようやっと、サイドアウトを禊応が奪い、15-13となった。
花蓮のサーブとなった。
サウスポーから放たれるサーブが春希の方向に飛んできた。
春希がカットするが、詰まってBパスになった。
しかし、高めに上がる。
だが、麗奈は躊躇うことなく仕掛けた。
シンクロ攻撃を。
Bパスの状態でシンクロ攻撃をするのは「トスを読まれやすい」という危険性を孕んでいたのだが、麗奈の才能はその危険性を軽々と凌駕していた。
さやかへのクイックではないライトへのファーストテンポだった。
長い滞空時間も、高さと共に併せ持つさやかだからこそ選択できたものだった。
宙の左手に当たって弾き飛び、花蓮のサーブを一本で切ることに成功、16-13となった。
会場も盛り上がると同時に、いいペースのまま、終盤に突入することが出来たのだった。
さやかをハイタッチで麗奈は迎え、さやかはサーブに下がっていった。
と、ここで夏岡が動いた。
3番のユニフォームを着た選手____瑠李が「11番」の札を持っていた。
主審の笛が鳴り、主審が手をグルグルと回した。
交代の合図だった。
さやかが瑠李と交代し、瑠李はハイタッチで全員に出迎えられた。
瑠李を鼓舞する声援がギャラリーから聞こえてくる中で、主審の笛が鳴った。
瑠李は一つ、息を吐く。
そして、両手にボールを持ったまま、ゆったりと、ステップしていったのだった。
いいところで次回持ち越しです。
さあ、出ましたね、シンクロ攻撃。
これを高一の段階で使いこなせる麗奈がマジで化け物だと思いますよ、経験者から見たら。
次回、禊応戦決着です。
死闘閉幕となりますんで、マジで期待していてください。




