第39セット 代償と希望
やっと挿絵の方が完成ということになりました。
第七話にその挿絵が入っていますので、ぜひご覧ください。
2セット目のクライマックスですので、御刮目ください。
今回は「小田原南女子バレー部の歌がうまいランキング」の発表です。
一位 さやか……番組で94点を叩き出したことがある
二位 瑠李……ハスキーボイスの中での裏声が超綺麗
三位 蓮……音域が超広い
四位 莉子奈……裏声の名手。転調多めの曲が得意。
五位 恵那……レパートリーが豊富で、どれもそつなく歌える
六位 韋蕪樹……声が全体的に低いので男性の歌が得意
七位 麗奈……絶対的ではないにしろ上手い部類
八位 桃華……麗奈とほぼ同じくらい上手い
九位 瀬里……麗奈、桃華とほぼ変わらず
十位 芽衣……まあまあ。最高得点が83点。
十一位 彩花……アニソンしか歌えない
十二位 春希……正直言ってそこまで上手くはない
十三位 真理子……普通に下手
十四位 大幾……音楽自体が苦手
十五位 藍……音がそもそも出ない。ただし、楽譜は読めるという謎仕様
藍がフラフラの状態でベンチに戻ってきた。
息が恐ろしいまでに荒く、意識もどこか朦朧としていた。
酸欠の症状なのは誰の目から見ても明らかだった。
これを見た夏岡は即座に藍を抱え、パイプ椅子に座らせた。
「藍! 大丈夫か! 私が分かるか!?」
「……ハイ………なん……とか………」
藍はこう答えるが、この試合、藍を完全にリタイアさせざるを得ない。
夏岡は大幾に命令を下す。
「大幾! バッグから酸素ボンベ出して!」
「ハイ!」
大幾はテーピングやらコールドスプレーやらが入ったバッグから藍が携帯している手に持つタイプの酸素ボンベを取り出した。
「藍さん……ど、どうぞ……」
「…………あり……がと……」
大幾は恐る恐る藍に酸素ボンベを手渡すと、藍はゆっくり受け取り、シュゴーッ、という音を立てて酸素を取り込み始めた。
一方その頃コートでは。
さやかが前衛に上がっているとはいえ、禊応も紗衣が前衛に上がってきた。
哀羅がジャンプフローターでサーブを放つ。
春希がカットし、麗奈にボールが渡る。
現在前衛なのは莉子奈とさやか。
Bクイックをさやかに跳ばせ、莉子奈はセンターに時間差で切り込んだ。
麗奈は迷うことなく莉子奈に挙げる。
椎奈の手に当たってコートに返るが、桃華が難なく処理し、すぐさまさやかがAクイックに入る。
さやかへトスを挙げた麗奈。
だが、さやかのクイックを紗衣が防ぐ。
これを韋蕪樹がリバウンドを取り、また小田原南のターンは続く。
さやかはもう一度Aクイックに入る。
莉子奈もレフト! と大声で呼んだ。
麗奈が選択したのは莉子奈への速いトスだった。
平行で、低いトスを莉子奈へ向けて挙げ、莉子奈も速いステップでジャンプした。
ブロックは朋美と椎奈だ。
いつもの莉子奈ならブロックアウトを狙っていたのだが、跳んだ時に莉子奈は何かが見えた。
花蓮が後ろ目でボールが来るのを待っていたのだ。
しかもトスも完璧。
花蓮のレシーブ力はそこまでではないと判断した莉子奈はフェイントをチョイスした。
フワッッッッッ…………という、柔らかく敵を嘲笑うかのような美しいフェイントだった。
花蓮が飛び込んだが、あまりにもブロックアウトを警戒しすぎていたが故、追いつくことが出来ず、ボールが禊応コートに落ちた。
25点目を小田原南が奪い、2セット目を小田原南が取り返した。
喜びに湧く小田原南。
そして、整列し、自陣へと戻っていった。
莉子奈と紗衣は「IF」のところへ行き、サーブの順を決めた。
禊応のサーブの番ということで最終セットは進行することになった。
「藍! 大丈夫!?」
春希が藍に心配そうに声を掛けた。
まだ体力が回復しそうにはない。
「ゴメン……無理……しすぎた………」
さやかが作り出した熱意に触発されていたにせよ、肺活量の限界を超えてまで動いた代償なのだ、誰も藍を責められない。
しかし、攻撃の要になる藍を最終セットで失うのはかなり痛い。
だが、夏岡は迷うことはなかった。
「最終セットなんだけど、さやかは藍のローテのところに入って。で、瀬里が対角。あとは変わらずで行くよ! いいかい!? さやかのお陰、って言ったらそれは否定はできないよ、だけどさやかがこのホーム的な空気を作ってくれたのは事実! あとは……全員が意地、見せなきゃだよ!? 流れは来てる、だけどこれを維持するには全員が意地を見せなきゃダメだ! 絶対勝つよ、いいね!?」
「ハイ!!!」と、全員が夏岡の檄に呼応する。
小田原南バレー部にとっては初めての強豪相手から奪ったフルセット。
大物喰いするためにもここで気持ちを切らすわけにはいかない。
希望はまだある、だからこそ全員がその希望に応えなくてはいけないのだから。
「さやか……」
藍が細々になった声でさやかを呼ぶ。
さやかが藍に駆け寄った。
「あとは………お願い……私の、分まで……」
そういって、左拳を突き出した。
引き締まった表情でさやかは頷き、右手でグータッチを交わして、さやかはコートに足を運んだ。
笛が鳴り、第3セットが始まった。
と、ここで到着したのが、「小田原南女子バレー部OG会」だった。
心強い応援と共に、激戦のクライマックスが訪れようとしていたのだった。
IFとは、得点記録係の場所のことです。
僕はそこをやったことがないんですけどね……(苦笑)
さて、次回から第3セットの開幕です。
キネノベとネット小説大賞までには終わらせる予定なので、頑張って書き切りたいと思います。




