第36セット さやか、大暴れ
さやかが試合の流れを大きく変えることになります。
登場人物紹介、今回は彩花の親父殿、龍栄氏です。
加賀美龍栄 51歳(アニメーション制作会社「ロストユニット」代表取締役・元「浅羽組」若頭) 9月23日生まれ A型 191センチ101キロ 好きな食べ物 ドラゴンフルーツ 趣味 ランニング
彩花の父で、元暴力団の若頭。
現在は大怪我の影響が深刻で暴力団を辞め、カタギとなってアニメ会社を運営している。
ちなみにそこそこ仕事は貰っているようで、繊細なタッチの作画をするため、業界では評価が高い。
小指の第一関節が欠損し、且つ左腕には刺青が入っているので元ヤクザの影響は少なからず残っているが、人望が厚い。
スキンヘッドにサングラスと、無茶苦茶怖い見た目であるのだが、性格は人見知りで寡黙な性格。
現在も身体中に銃痕が残っていたりする。
第二セットが始まり、哀羅からのサーブでゲームが始まった。
負ければ即敗退という瀬戸際の中、小田原南は秘密兵器であるさやかを投入した。
視線がさやかに注目が集まる中でのサーブは韋蕪樹のところに来た。
レシーブで難なく処理する韋蕪樹。
Aパスになる。
麗奈が選択したのは勿論さやか。
Aクイックに挙げる。
さやかは瑠李にミーティングの時に言われたことを思い出していた。
“最初の一発目を思いっきり打たせて。”
ブロックに椎奈が飛んでいようと、さやかには関係なかった。
目一杯腕を振り下ろし、椎奈のクロスの方向を抜いてコートへ叩きつけた。
これには哀羅は一歩も動けず。
小田原南が先制した。
「いやーすごいね、あの11番!」
椎奈は清々しそうにそう話した。
皮肉でもなんでもなく、素直に褒め称えているのが見て取れた。
しかし、透子がそれに釘を刺した。
「抜かれといて何ヘラヘラしてんの椎奈。集中しなさいよ。」
「透子わかってるってー! ……さて……面白くなってきたね。」
椎奈は次に来るボールに備えて構えていた。
次は麗奈のサーブ。
いつものステップからサーブを放った。
それは作戦通り哀羅にいく。
手元で揺れるサーブを処理するが、朋美のコートサイド側へ大きく逸れた。
朋美がなんとかアンダーハンドで処理するが、紗衣が打てるような二段トスではない。
透子がなんとか繋いで返し、チャンスボールとなった。
桃華が高く上がったボールを軽く腕にポン、と当てて処理し、麗奈に返す。
さやか、韋蕪樹、春希がほぼ同時に入ってくる。
さやかを囮と判断した椎奈は直感で韋蕪樹の方にゲスブロックを仕掛けるが、チラッと麗奈が椎奈の方を見て、さやかにノーブロックでAクイックを打たせることに成功、さやかは思い切り叩きつけて2点目をさやか一人で連取した。
小田原南は喜びに沸き立ち、莉子奈がいい意味で麗奈の頭を叩いて褒め称えた。
さやかが決めたことで会場も、より一層沸き立った。
もはやアイドル級の扱いにさやかはなっていたのだった。
会場の空気を掌握するのは、元芸能人ということを抜きにしても、これができるのはさやかくらいのものだろう。
そのくらいの存在感だ。
会場の空気が小田原南に味方していた、それは紛れもない事実として成り立とうとしていた。
そして麗奈のサーブ。
今度は花蓮に向けてサーブを放った。
手元で揺れるサーブが禊応を苦しめる要因の一つになる。
対応しきれずに花蓮が弾き、朋美は二段トスで紗衣に挙げた。
紗衣は踏み込む。
そして跳び上がった時には3枚ブロックが来ていた。
打ち切れないと思い、紗衣がソフトスパイクを放った時、その打った方向にいたさやかに手首を使って思い切りコートへ叩き落とされた。
これで3-0。
序盤の流れを小田原南が完全に掌握した。
それも、さやかがたった一人で。
マジか、と紗衣がつぶやく。
「ゴメン、私が甘かった。」
と、紗衣がみんなに謝って、次に備えた。
次の麗奈のサーブも、レセプションを崩し、また紗衣への二段トスになる。
紗衣は長いスパイクをクロスに放った。
しかし、これを莉子奈が処理し、麗奈へのAパスとなった。
麗奈は迷うことなくBクイックを挙げ、さやかはそれに呼応するかのように朋美の上からストレートにスパイクを打ち抜いた。
これを花蓮が拾い切れるわけもなく、4-0と、もう一方的な展開となった。
禊応の監督、三島はたまらずタイムアウトを要求した。
禊応サイドからの怒号が聞こえる中、小田原南のベンチはいけるぞという雰囲気が漂っている。
と、ここでさやかが麗奈に話しかけてきた。
「ねえ、麗奈ちゃん、私アレ……移動攻撃、やってみたいんだけどさ……」
突然練習していないことを言われた麗奈は困惑した。
「は? さやか、ちょっと何言ってるかわかんない。なんで急に移動攻撃?? いくら流れ来てるからって調子乗んないでよ?」
これを聞いた夏岡は、笑っていた。
「ハハハ、いいじゃないか。やれるものならやらせてみよう! さやかがいけるって言うなら私はいけそうな気がするよ? 麗奈。」
「まあ……先生がそこまで言うならいいですけど……知らないですよ? 流れが向こうに行っちゃっても。」
一抹の不安を残したまま、タイムアウトを終え、コートへ戻ってきた。
そして麗奈は哀羅へサーブを放つ。
哀羅はこれを処理し、朋美へ繋げる。
トスは紗衣だ。
紗衣はさやかを警戒して韋蕪樹の方のストレート側を打ち抜き、ブロックアウトを奪って4-1とした。
一度流れがリセットされるが、会場からため息が漏れる。
小田原南のペースになっているのが何よりの証拠だ。
「ったく……決めたのにこの空気はやりづらいわ……」
紗衣が頭をポリポリかきながら今の空気を嘆いている。
「仕方ないですよ、元芸能人で注目されてるだけですって、紗衣さん。」
朋美は気にしている素振りはない。
そして朋美がサーブに下がり、花蓮が前衛へ上がってくる。
朋美がサーブを放ち、そのサーブは緩く春希のところに来た。
春希はオーバーハンドで処理し、麗奈にAパスで繋ぐ。
麗奈は一度きり、と決めてさやかへ移動攻撃をライト方向へ挙げた。
さやかは紗衣の方向へ放ち、ブロックに当たって弾く。
ボールは小田原南のインコートに入ろうとするが緩い。
莉子奈がオーバーで処理する。
そして麗奈が選択したのは韋蕪樹へのレフトセミへのトス。
韋蕪樹は椎奈の方向へスパイクを放ち、椎奈がキルブロックで決めるが、麗奈が間一髪でフライングで拾い上げた。
桃華が二段トスを挙げ、春希に繋げる。
春希はゆったり助走し、ストレートにブロックアウトを放つ。
花蓮の指先に当たり、小田原南のコートサイドを割り、ブロックアウトが成立し、5-1。
サイドアウトを奪うことに成功し、流れを渡さない。
一方禊応サイドは。
「まさか移動攻撃まで使って来るなんてね……本当に素人? あの子。」
紗衣は素人特有の読めなさに苦い顔をする。
哀羅も同じだ。
しかも哀羅には屈辱感が滾っている。
(なんで……なんであんな奴に……! 麗奈が言っていたのはこういうことか!! クソ……とんでもないやつを……バレーに誘いやがって……!!)
明らかな嫉妬心も滾っている。
プライドの高い哀羅には、さやかにここまで流れを掌握されるのは屈辱以外の何者でもなかった。
さやかがサーブに下がる。
さやかがサーブを打ったが、ネットにかかって5-2となり、さやかは桃華と交代したのだった。
一人で流れを掴めるのはスターじゃないと出来ないことです。
さやかはそのスター性を持っていることを書きました。




