第35セット エースの意地
めげない春希とブレない麗奈の両者が噛み合う回です。
登場人物紹介は春希の母・真澄さんです。
河田真澄 46歳 専業主婦(6人の子供の母) 10月12日生まれ A型 バレー歴はなし 右利き 163センチ 50キロ 3サイズB89W62H91 好きな食べ物 煮卵 趣味 裁縫
春希の母で、顔がそっくり。
明るく朗らかな性格。
瑠李のことも気にかけており、実の娘のように可愛がっている。
瑠李も真澄のことを母親のように慕っている。
作者黒崎から一言
真澄さん、基本書くことねえ………
タイムアウトが終了し、コートに戻る両チーム。
春希は厳しい表情で一息吐く。
一方で哀羅はこう思っていた。
(おかしい……いつもの麗奈じゃないな……変な意味でアイツらしくない……なんであの4番に託すんだ……? 6番に一本挙げていてもおかしくないのに……)
麗奈のトス回しに違和感を覚えていた。
一方麗奈は。
(ともかく春希さんで決めないと先に進めないのは事実……ここのターンは全部春希さんで勝負する……たとえ愚策だったとしてもエースを信じないでどうする……)
そして笛が鳴り、紗衣のサーブが来る。
伸びるサーブを莉子奈がカットし、麗奈に繋げた。
麗奈がボールの軌道を追い、ライトへオープントスを挙げた。
高いトスになる。
春希が思い切り踏み込むが案の定3枚ブロックが来た。
春希は躊躇いなく哀羅の方向へぶち抜くが小田原南のコート内に弾かれる。
それを桃華がカバーし、また麗奈へ繋げる。
麗奈はもう一度、春希にトスを挙げた。
また同じトス。
そしてまた3枚来るブロック。
春希は跳びながら考える。
(正直言って……私には紗衣みたいな高さも技術もない……けど……気持ちなら絶対負けない!!)
宙のところへ打ち抜くが、またコート内に弾かれる。
桃華は緩く返ったボールを落ち着いて処理してまた麗奈に繋げる。
ここで春希と麗奈の目線が合う。
アイコンタクトで合図を取る2人、ここで動く。
藍、韋蕪樹のダブルクイックで脳内の視界を遮り、春希の動きを花蓮の方以外で見えにくくする。
春希はダッシュでレフトの方へ走り込み、あとは麗奈が挙げてくれることを信じるだけ。
麗奈はクイックを挙げる素振りからギリギリまでボールを引きつけ、指が入った瞬間に思い切りレフトへ弾き飛ばした。
バンチリードブロックには本来なら通用しないことなのだが、ここでトスの緩急が生きている。
あまりのスピードに宙が追いつけない。
花蓮の一枚だけだ。
春希は跳び上がってギリギリまでボールを引きつけながらストレートに花蓮の手目掛けて叩き込んだ。
花蓮の右手を弾き飛ばし、小田原南のコートのサイドラインを割る。
ブロックアウトになり、これで4-6とした。
春希は大きく吠える。
そしてそのまま春希はサーブに下がった。
春希はジャンプサーブを放ち、紗衣のところにボールが行った。
紗衣は右足側に手を構えてレセプションをする。
朋美が選択したのは宙のAクイック。
藍のクロス側に打ち抜かれ、コートに落ち、4-7。
朋美も冷静だ。
そしてここから一進一退の展開にまで縺れ込み、気がつけば21-24。
お互いブレイクポイントがないまま、禊応がセットポイントを取った。
観客にも緊張感が漂ってくる。
流れが掴みきれていない中でどちらが先取するのか、注目がそちらに集中していた。
ここで紗衣のサーブだ。
紗衣がジャンプフローターでサーブを放ち、桃華の方へボールが行った。
桃華が一歩引き、アンダーハンドでカットする。
麗奈がここで選択したのは今日一番決めている韋蕪樹。
ブロックは3枚だが、韋蕪樹にはそれをものともしないインナークロスを得意にする。
通常のサウスポーのブロックの位置、つまりクロス寄りとなったが、韋蕪樹は空中で体を捻り、インナークロスにスパイクをぶち抜いた。
豪速球が突き刺さり、インコートとなって、22-24とまだまだ食い下がる。
チームが上昇気流に乗りかけようとしていた。
そして春希がジャンプサーブを放つ。
威力の乗った、重いサーブが放たれ、それは紗衣の方に行った。
しかし、紗衣の思った以上に伸びたのか、腕に当たったボールが横に逸れた。
朋美と透子が懸命に追うが、届かない。
サービスエースがこの試合通じて初めて決まり、23-24。
もう一点取れればデュースということまで上り詰める。
小田原南が完全に流れを掌握したかに思えた。
しかし、禊応もこれで慌てるほどヤワではない。
透子が紗衣に声を掛ける。
「紗衣……次挙げるよ。落ち着いていこう。」
「大丈夫だよ透子……私は問題ない。」
紗衣も恐ろしいほど冷静だ。
そしてピリついた空気が両者を襲う。
その中で春希は大きく息を吐いてボールを上空へ放り投げた。
空中で思い切り叩き込み、そのサーブは透子の方へ行った。
春希も勝負と踏んだのか、紗衣で逃げるようなことはしなかった。
だが、透子もそれで怖気付くほどヤワにはできていない。
柔らかいレシーブで朋美に正確にAパスを挙げた。
朋美は哀羅にトスを選択した。
哀羅は思い切り跳び上がり、クロスへ打ち抜いた。
取れるか取れないかの絶妙なラインにボールが来て、莉子奈は右側に来たスパイクを体を横倒しになって拾ったが、流石の莉子奈でも取りきれない。
思い切り右に逸れたボールを麗奈が懸命に追うが上げきれず。
23-25となり、禊応が1セット目を先取した。
そして整列し、コートチェンジとなった。
そして夏岡も話す。
「よし……悪くはない、悪くはないけど序盤だね。ここを取り切れるか。そこに掛かってる。ということで……次のセット、瀬里のところにさやか、行けるかい? フルセットまで予想したら瀬里は温存しておいた方がいいって判断した。」
これにさやかは力強く、「行けます!」と答える。
「麗奈、どう考えてる? 次のセットを。」
「さやか中心で展開していきます。その方がサイドも動かしやすいでしょうし。」
「じゃあさやか、思いっきり楽しんできなよ! 万が一止められても全員で挙げる! それだけだよ!」
「ハイ!!」
こうしてメンバーは汗を拭き、次のセットに備えることになった。
一方、禊応ベンチは。
「まさか瑠李が1人変わるだけでここまで違うチームになるとはね……」
透子が呟く。
それもそのはず、冬の新人戦では圧倒していた相手なのだ、麗奈を油断していたという訳ではなかったが、ここまで縺れ込む展開になるとは想像していなかったのだ。
一方で哀羅は、というと。
(麗奈が言っていたことって……こういうことじゃなかったような……麗奈が上手く引っ張っているというのはある。でも……おそらく11番のことだろうけど……「私が麗奈以上に嫉妬する選手」? 素人にそこまで肩入れする奴だったっけ……?)
どうやらさやかのことで疑念がよぎっていた。
小田原南の底知れない不気味さを感じ取っていたのだった。
そして笛が鳴り、コートに戻った。
さやかが出てきた時にどよめきに近い歓声が沸き起こる。
瀬里のところにさやかが入った以外は両チームとも、メンバーに大きな変更はない。
異様な空気に包まれながら第二セットが始まろうとしていたのだった。
予告しときます。
禊応戦、あと8話で終わらせます。
次回は彩花の親父殿、龍栄氏を紹介します。
次回、さやか大暴れ。
お楽しみに。




