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第28セット アイデンティティー

この回は結構一方的になります。

前話から見てくださった方ならお察しのことかとは思いますが。

ちなみにユニは小田原南は黒、リベロピンク、平塚大北は青、リベロが白です。

登場人物紹介は、禊応の大黒柱、紗衣です。


御厨紗衣(みくりやさい) 禊応義塾高校女子バレー部三年主将 横浜第一中出身 1月29日生まれ B型 バレー歴は小2から アウトサイドヒッター 右利き 180センチ 62キロ 3サイズB86W59H88 好きな食べ物 焼肉(ハラミが好き) 趣味 イラストを描くこと


禊応の絶対的エースでキャプテンも務める大黒柱。

元JOC神奈川県代表で、全中ベスト8経験者。

中学時代、相模原東を県大会決勝で破ったこともあり、春希や瑠李、韋蕪樹にとっては因縁の相手。

身体を大きく反るダイナミックなフォームから繰り出されるスパイクはブロックを容易くぶち破るほど強烈。

バレーに関しては非常に厳しく、一切の妥協を部員に許さないストイックな性格。

勉強もノー勉でも全教科平均して92点を取るほど。

本人曰く、勉強だけしていても生活に必要な雑学は身に付かないから、とのこと。

オフはオフで切り替えて楽しむので、なんだかんだ部員や監督からの信頼は非常に厚い。

高校ではまだ全国大会に行けていないので、今年に賭ける想いは強い。

 タイムアウトのタイミングになり、夏岡はチームにこう、声を掛けた。


「オッケーオッケー、こっからはレシーブ戦になるだろうから気を引き締めていこう! 現に鮫島のスパイクに迷いが生じてる! 一気に畳みかけるよ、いい!?」


「ハイ!」と、チームは返事を大声で返した。


麗奈が、春希に声を掛ける。


「マイナステンポ、さっきの感じで大丈夫ですか?」


「うん、全然問題ないよ。寧ろ()()()()()()()()()()()()()()だったし。」


「あと、韋蕪樹さん、Dクイックは封印しましょう、今日は。……韋蕪樹さんの良さが死んでいる状態ですし。」


「じゃあオープンで頼むよ麗奈。普通ので早めに決めたいし。」


「了解しました。」


こうしてタイムアウトの30秒が終わり、コートへ戻っていった。



 瀬里がサーブを打ち、白鷺がカットをした。


森北がレフトへ二段トスを挙げ、枝里がそれを打つまいとゆったりとした助走で踏み込んだ。


表情だけみると、落ち着いているように見えていたが、内心はかなり翻弄されているようだった。


枝里に対し、跳ばれたブロックは韋蕪樹、藍の2枚。


真っ向勝負でストレートに打ち込もうとしたが、ふかしてエンドラインを割り、アウトになった。


これで7-3。


完全にもう、小田原南の流れとなった。


その後も平塚大北は、枝里の機能が完全に停止したかのように、ズルズルとミスを連発していった。


枝里が漸く決めた頃には11-4というスコアになっていっていたのだった。


しかし、一点決められた程度でズルズル行くような小田原南ではなかった。


次のサーブレシーブのターンで、韋蕪樹が超インナークロスを決めて、一本でサイドアウトを奪い、主導権を渡さない。


そして春希のジャンプサーブ。


そのサーブが思い切りレシーバーを弾き飛ばし、森北がなんとか繋ぐ。


枝里が焦りからか、無理な態勢でスパイクを放ったが、莉子奈にシャットアウトされ、平塚大北シックスも拾いきれない。


13-4となり、ここで平塚大北監督・西野が動いた。


【7番】の三年生、「笠山亜美菜(かさやまあみな)」がなんと8()()()()()()()()()()


枝里の番号だ。


つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()


苦虫を噛み潰したような顔をして俯き、枝里は渋々交代し、ベンチに下がった。


西野に座るよう促された。


枝里はタオルを首に掛け、歯軋りをし、両拳を握りしめた。


悔しさと不甲斐なさを滲み出しているのは誰の目から見てもわかった。


西野は試合を見ながら枝里にこう語る。


「……鮫島、一回頭を整理してみろ。」


そうして、こう続ける。


「みんなを見てみろ。……ヘタクソなりに鮫島のカバーを全員で埋めようとしているだろ? 確かに引きずっているとは思う。エースがいない異常事態だ。得点がろくにできないのも納得はいくだろう。お前はそれを一人で背負ってたんだぞ?」


確かに平塚大北は徐々に失点を重ねているが、全力で、目の前のボールを追いかけて()()()()()()姿()()が見えていた。


拾えているかどうかは別にして、だ。


「悔しいかもしれないが、鮫島はもっと楽にやっていいんだぞ? 現に上級生が……お前のために前を向いているんじゃないか。たとえ、失点しようと、な。……だから一度頭を休ませろ、鮫島。お前を交代させた責任は俺が取る。……鮫島は……エースは前だけ向いていればいい。」


この言葉に悔しさと、申し訳なさと、不甲斐なさと、いくつ混在したか分からない感情になった枝里は、溢れてくる涙を止めることが出来なくなっていた。


西野の、枝里の交代は英断だったかは分からない。


何せ()()()()エースを下げたのだから。


だが、結果的に平塚大北を奮起させるキッカケにもなっているのもまた事実だった。


枝里は黙って試合を見つめる。


コートに立てない悔しさを、(まなこ)にしっかりと焼き付けながら。


結局、このセットは25-8。


一気に流れを掴み取り、枝里を引き摺り下ろした小田原南が快勝し、コートチェンジとなった。



 第二セットもメンバーを変えなかった両校。


ただ、依然として枝里はベンチだ。


だからといって手を緩めるほど小田原南は()()()()()()()()()()()()


8連続得点を含む怒涛の攻めで17-6と大きく引き離していた。


その後の韋蕪樹のサーブでサービスエースが決まった直後、西野は枝里を呼んだ。



 どうやら交代のようだ。


笠山が下がり、枝里がコートに戻ってきた。


大きく盛り上がる平塚大北だったが、依然として状況は最悪。


どこまで盛り返せるかに掛かっていた。


枝里が入ったポジションはバックセンター。


バックアタックしかない、そのことが小田原南のチーム全体に共有されることとなった。



 韋蕪樹がサーブを枝里に向かって放つ。


枝里はサーブカットを成功させる。


森北がバックアタックをセンターに挙げる。


サードテンポ、当然だ、何せコンビとかいう、小細工は要らないのだから。


枝里は一息吐き、バックアタックの助走に入った。


だが、今までよりも力強い。


大きくドン! と踏み込んだ枝里はこう、考えていた。


(みんなが……先輩たちが、私が戻るまで繋いでくれた……だからここで……全力で私が応えないで()()()()()()!!!)


唸り声を挙げて思い切り打ち下ろしたバックアタックだ。


渾身の一撃で藍のブロックを弾き飛ばし、コートの遥か後ろにボールが行った。


こうなればいくら足の速い桃華といえど拾うことは不可能だ。


18-7。


大量リードという状況は変わらずとも、エースが戻ってきた直後にこの得点だ、かなり大きい。


大きな声を出して存分にガッツポーズを両拳でとる枝里。


鬱憤が晴れたのだろうか、今までよりも、この試合の誰よりも力強かった。


一方、小田原南は。


「ごめん、みんな。止めきれなかった。」


「しょうがないですよ藍さん。……ただ……枝里もここに来て本気(マジ)で来ましたね……」


謝る藍を尻目に、韋蕪樹の表情が警戒する動物のように引き締まる。


「……こっちも全力でやらないと殺られるね。……あの気迫は本物だ。ここ、気引き締めないとダメだ! どんな形でも挙げるよ次!!」


春希が大声を出す。


勝負どころを理解している、そんな気迫が漂っていたのもまた事実だった。



 両校の目に滾るは「不屈」の精神。


ここからは意地と意地のぶつかり合いになるということは、誰もが直感していたのだった。

敵役なのにこの回の主役になる枝里。

枝里が下がった後はマジで見どころないので抽象的にカットさせていただきました。

ただ、世界バレーでもエースを引き摺り下ろすシーンはあることなので、まあこれもあるあるですね。

次回はマジな激闘になります。

枝里対小田原南、どんな結末になるのかお楽しみください。

登場人物紹介では禊応のブロックの要、椎奈をお送りします。

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