表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/94

第2セット まずは「基本」から(レシーブ編)

この回は結構ほのぼの回ですw

まあ、さやかが素人だから教えなきゃいけませんからね。ルールも基礎も分からないのはバレーをやる以前の問題なんで。

ちなみに小田原南高校女子バレー部の部員は3年生5人、2年生4人となってます。

これから一年生キャラも続々追加しますが、時系列的には仮入部期間も始まっていないので今いる一年生は麗奈とさやかだけですのでご了承ください。

 ホームルーム後、麗奈とさやかは、バレー部が練習している第三体育館へ向かっていた。


二人の身長差は歴然で、麗奈も引退後に2センチ伸びて160センチとなったが、さやかは189センチもあった。


さやかの目を見張るのは背丈だけではなく、そのスタイル。


脚も細長く、胸も大きい。


そこらへんの女子がその体型に憧れ、男子からは好奇と眼福の目で見られる。


しかも元モデルの芸能人と聞く。


そんなさやかと平然と、しかも無表情で話す麗奈に対して周囲は畏怖の目で見ていた。


普通に芸能人として活動していれば今頃パリコレにも出ていたであろうさやか相手に何の先入観もなく麗奈が話せるのは、さやかの明るい人柄もそうさせているのだろうが、麗奈の温度差もあったのだろう、と周囲は推測していた。


ちなみに麗奈とさやかは、互いの写真動画アップ系SNSも、相互フォロー関係だったことも会話の中で知った。



 そんなこんなで体育館に到着した二人は更衣室で着替えようとした。


そこには先輩が集結していた。


麗奈とさやかは彼女らに挨拶する。


「こんにちは」「こんにちはーーー!!」


声のトーンもノリも全く異なる二人だが、挨拶の基礎はお互い叩き込まれている。


そして3年生で主将の神木莉子奈(かみきりこな)が反応する。


「おっす、麗奈。今日もよろしくー……、、ってデカッッッ!!! え!? 誰!? この子一年生!?」


「ええ。そうですけど。」


莉子奈のさやかを見た瞬間のビビリようにも麗奈は眉ひとつ、頬ひとつ動かさず答えた。


「え、、経験者、、じゃないよね……?」


「初心者とのことです。」


本来ならさやかが答えるべきなのだが、顔見知りの麗奈がここはすんなり答えた。


他のみんなは唖然としていた。


いい意味でクレイジーな選手を連れてきたな、と。


麗奈はさやかに、ホラ、自己紹介、と言わんばかりに肘でつついた。


「一年6組、岡倉さやかです!」


さやかはそう答えた。


初心者なのでポジションもセッターくらいしか理解してないのだろう。


3年生の望月瀬里(もちづきせり)はどういう関係かを尋ねた。


「あのさ、、麗奈とどういう関係なの??」


「え……? 同じクラスで、今日初対面なんですけど……。」


「いや、、普通そこはバレー部になんの考えなく来て偶然会ったとかならわかるけど……。そもそも麗奈がこの『ワラナン』に来る時点で頭痛いし……。ホントに私らの想像を軽ーく超えてくるよね、麗奈ってホントに。良くも悪くも。大体さ、元モデルのさやかが活動休止を2ヶ月前に発表しました、で、麗奈と同じクラスになりました、そっからバレー部入りたいです初心者が。って、私ら変な夢でも見てんのか状態なんだけど。」


「望月先輩。これは現実ですよ。今彼女が満面の笑みを浮かべているのがその証拠です。」


「いや真顔でサラッと答えなくても……。」


そこに中性的な容姿をした2年生の勝又韋蕪樹(かつまたいぶき)が質問をする。


「岡倉さん。とりあえず麗奈と会ってそれで来たのはわかった。けれど何でバレーをやろうと思ったんだい? 君のモデルとしてのスペックならわざわざこんな普通の高校まで来てバレーをやることなんてなかったろうに。」


韋蕪樹の質問にさやかは笑顔のままこう答えた。


「日本代表になるためです!!」


溌剌とした、明朗快活な答えに周囲はドン引きした。


3年生でチームのセッターの亀貝瑠李(かめがいるり)は特に無愛想に答える。


「ふん……。バレーをあんま舐めない方がいいよ。どういったきっかけでバレーやりたいと思ったかは知らないけど、初心者が簡単に日本代表になれるなんてそんな甘い世界じゃないよ。……そんな簡単にアンタがレギュラー取れるほどワラナンはそんなヤワじゃないから。」


挑発とも取れる瑠李の言動に2年生の志崎恵那(しざきえな)が宥める。


「まあまあ、瑠李さんいいじゃないですか。期待の新人が入ったってことでいいじゃないですか。」


「うるさいなあ……私はただでさえ麗奈が入って来てピリピリしてるってのに簡単に日本代表になるって言ってる初心者もいるってのが腹立ってるのよ…」


そういって瑠李は更衣室を後にし、体育館の方へ向かっていった。


この行為に莉子奈はため息をつく。


「さやか、ごめんねホントに。自分の居場所消えるって思ってるからさ、アイツ……。トスとスパイクとの連携が噛み合わないと逆ギレするほどの独裁者的な性格なんだよね……。いっそ麗奈の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ……。バレーに対して真摯なのはわかるんだけど、いかんせんあの態度だからみんな気を遣ってるんだよね……。」


「?? 全然大丈夫ですよ?? モデルの時もああいう人いましたもん。」


超楽天的な答えを返したさやかに3年生でチームのエースの河田春希(かわたはるき)はそのメンタルの強さに呆れていた。


「瑠李って頑固だからさ……マジで。ここ最近度が過ぎるほどアタリキツくなってそろそろ限界来てんだよ。あの態度をサラって返せるアンタのメンタルも異常だよ……。」


春希の呆れにもう一人の3年生、丸山藍(まるやまあい)も無言で頷く。


「だからさ、、もう早く私らはアンタのトスを試合で見たいの。スタメンとして。ホントに切実なお願いだよ。麗奈、アイツからセッターの座取っちゃってよ。」


一際小柄な2年生、澤田桃華(さわだももか)が麗奈を煽る。


裏で瑠李を呼び捨てにしているほど桃華は瑠李を信用していないようだ。これに麗奈は無表情で呼応する。


しかもビッグマウスで。


「……()()()()のセッターなら……楽勝でレギュラー取れますよ。」


皆、オオッ、という反応をする。


流石全中制覇者のいうことは違うな、と。


春希も感心していた。


「まあ、アイツも実力は確かだからね。……態度は鼻につくけど。どうして楽勝って言い切れる?」


たしかにこれだけのビッグマウスが出る時点で奪取できる「何か」が瑠李にあるということだ。


そのワケを説明する。


「……あれだけ()()()()()()()()()()()なセッターは()()()()()()()()()()。そもそも向いてるタイプが違います。完全にスパイカーの思考法です。……私の()()()()()()()()()()です。だから奪えます。何故なら、根本的にスパイカーを信用しておらず、自分の上げたいトスだけを上げる人です。おそらく。それは()()()()()()()()()()()()を意味します。だから次のインターハイ予選でレギュラーとしてコートに立ってるのは私だとそう言い切れます。」


これに2年生の加賀美彩花(かがみあやか)も顔を明るくする。


そしてこんなことを言った。


「瑠李さんからさ、、レギュラー奪ったらどうしようとかって考えてる……?」


弱々しい声の彩花から聞かれた。


皆が訝しげな顔をするなか麗奈は顔色も表情も一切変えずこれに答えた。


「……私は私ですよ。チームの色に合わせてトスを挙げるだけです。……チームに一番献身的にならないといけず、目立ってもいけないのがセッターですから。」


この言葉に全員が沸き立つ中、麗奈の口からKYな一言が飛び出した。


「あの、もう準備できたんで体育館に行っていいですか?」


「い、、いいけど……。」


「ではこれにて。」


ペコっと頭を下げて麗奈は体育館へ向かっていった。


他のメンバーも体育館に向かう。


恵那は麗奈の強心臓ぶりに呆れ顔だった。


「いや……麗奈ってホントに何考えてるかわかんないよね……。韋蕪樹、さやかも入って来たけどどう思う?」


韋蕪樹はこれを笑い飛ばして答えた。


「いいじゃないか。その分楽しみが増えたし、全国へ行く道も見えたんだ。興奮するじゃないか。恵那。」



 そして監督の夏岡宏香(なつおかひろか)が来て練習が始まった。


ウォームアップ後、夏岡は麗奈とさやかを呼び出す。


「麗奈、さやかにバレーを教えてやってくれないか。見ての通り少人数だから私も入らなきゃ回らないんだ。麗奈は()()()()()()()()()()から君に頼みたいんだけどいいかな?」


韋蕪樹よりも男前な夏岡は体育教師で人望も厚く、去年赴任して来たばかりの監督だ。


U-22の女子代表にも選ばれた実力もあり、実績からくる畏怖の念もある。


教え方も下手ではないがどちらかと言えば生徒とともに楽しむを信条にしている監督だ。


そんな夏岡が麗奈に頼み込んでいる。


承諾しないわけがないし、元々麗奈もさやかもそのつもりで今日来たのだ。無論その申し入れを受け入れる。


「お任せください。さやかを日本代表にまでするのが私の役目なので。」


「アッハッハ、やっぱり君は面白いね! それじゃ頼むよ!」


「ハイ。」


そういって、体育館のステージの方にさやかを連れていった。



 そしてステージ上に移動した麗奈はまず、レシーブから教える。


「まず右手を下にして組んで、腕を伸ばして。」


「こう?」


「そうそう。で、その次に足を肩幅まで広げて、爪先は真っ直ぐ、、で、膝を曲げる。」


「こんな感じ?」


「後ろ体重じゃなくて爪先に重心を乗っけるイメージ。」


「これがレシーブの構えなんだ〜。面白いね、バレーって。」


「まだボールに触ってもないでしょ。じゃ、投げるから組んだ腕に当てるイメージで。なるべく腕の間に投げるから。」


「了解!」


そういって麗奈はボールを投げる。


だが、さやかはその投げられたボールを、ボウン!!という音と共に、麗奈の頭の遥か上に挙げてしまった。


何かが悪かったのは明白だった。


麗奈は瞬時にそれを分かっていた。


()()()()()()。腕はずっとこのまま。とりあえず今はまだ当てるだけだから。そこができないと次いけない。」


「なるほど……難しいね、バレーは。」


「感覚を掴むだけだよ、今は。岡倉さんはまだ素人に毛が生えた程度。日本代表になりたいんならそれくらいできて当然。」


「麗奈ちゃん厳しいこと言うねえ」


「別に……志が高い人にはこれくらい言わないとやる気出ないでしょ…?」


「そ、、それもそっか、、アハハ…。」


「ヘラヘラしない。ホラ、次、どんどん行くから。とりあえず100本やるよ。絶対腕振んないでよ。どんな状況でも。」


「わ、、わかりました……」


こうして二人はレシーブを淡々とこなした。


さやかは徐々に感覚を掴んでいく。


レシーブを受ける音もどんどんポンッ、という音に変わっていく。


麗奈はどんどん上達していくさやかに可能性を感じていた。


教え甲斐がある、と。


100本が終わる頃、さやかの足はもうクタクタの状態だった。

序盤はしばらくこんな感じで続きます。基礎というのは全ての道に通ずるので、初心者キャラを書くときは、まあゲームでいうチュートリアルみたいなもんを最初に書かないとただの無双になっちゃうのでね。それだと面白くないので、初心者にでもわかることを書きました。まあ僕自身はポジション的にもレシーブはほぼやんなかったし、レシーブだけは真面目にやってもできなかったんで……(笑)

次はオーバーパスとブロックを主に書きます。お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ