第17セット 闇の先に見えしは、かけがえのない『仲間』という“光”
仲間の温かさは、チームワークにおける最も大事なことです。
多分、3パートくらいに段落が分かれるので結構長くなりますねwww
最後は瑠李の心境の変化を描きます。
登場人物紹介、今回は彩花です。
加賀美彩花 小田原南高校2年 横浜翔稜中出身 5月18日生まれ O型 アウトサイドヒッター、レシーバー 右利き バレーは中1から 161センチ40キロ 3サイズB86W55H83 好きな食べ物 貝類全般 趣味 アニメを観ること、アニメグッズ集め
真面目だが気が弱く、オドオドした性格で、大事な時に実力を発揮できない選手。
チーム内からは空気扱いされているが、それはチーム内であまり彩花を刺激しないようにしているため。
また、急な事態の対応が苦手。
バレーの時以外はメガネを装着している。
ただ一方で、曲がったことが嫌いなまっすぐな性格でもあり、団塊世代のオバサンとトラブルになった時に言い合いになったほどで、怒らせると怖い。
安定したレシーブを持っているので、試合では主に守備固めで起用されている。というのも、メンタルがノミの心臓なので、スタメンで使うには怖すぎるとのこと。(麗奈の助言で改善はされつつある)
実は暴力団「浅羽組」元若頭の一人娘で、父は2年前に命に関わる大怪我を負ったため、現在は横浜でアニメーション制作会社を運営して、カタギになっている。
怒らせたら怖いというのも父譲り。
瑠李と春希の眼前に広がっていたのは、部室で待っている麗奈と大幾以外の女子バレー部員全員の姿だった。
春希は事情を知って勝手に飛び出したのでわかっているのだが、瑠李にとっては想定外だった。
「……みんな……いたんだ……てことはさ……聞いてたってこと?」
この問いに、藍は無言で頷いた。
「……瑠李、なんか私らに言うことあるんじゃない? 別に怒ってるわけじゃないからさ。ね?」
瀬里の顔に怒っている感じはなかった。
ただただ心配をしていたという顔だった。
「……ごめん……見苦しいところ、見せちゃってさ……その……なんて言ったらいいか……」
瑠李は少し俯きながら、全員に謝罪をする。
と、ここで、莉子奈が瑠李に詰め寄った。
そして、「バカッ!!」と言いながら、瑠李の頬を平手打ちした。
「どんだけみんなアンタのこと心配したと思ってんの!! 怒ってるわけじゃないってのはホントだよ!? でもさ……溜まってたとはいえさ! 春希と殴り合うなんてことしなくてよかったじゃん!! チームの迷惑になるようなことはさ! もう金輪際辞めてよ!? ねえ!!」
ブレザーの襟を掴み、涙を見せ瑠李にそう訴えた莉子奈。
瑠李も申し訳なさそうな顔をしている。
そして察した。
麗奈を使って盗聴していたということも。
と、ここで真理子が喋った。
「でも……瑠李さんも、春希さんも、なんかスッキリしてません? その……トゲが消えた、っていうか……」
韋蕪樹もこれに同調した。
「そうだね、真理子。なんだろ、元に戻った感じがする。二人の関係が。」
桃華も悪態は多少吐いていたが、真理子と韋蕪樹に同調する。
「まー……私は瑠李さんとは人間的な相性が悪いし嫌いですけど……でもやっぱり勝つには絶対必要不可欠な人だってのは私も理解してますし。別にすぐには、とは言いませんけど、県大会までに瑠李さんが柔らかくなってくれれば私は文句は言わないですよ?」
瀬里も瑠李に歩み寄った。
「桃華の言う通りだよ、瑠李。桃華はアンタと気が合わないってだけで思ってるのは私たちと一緒。 私らはさ……アンタのこと、嫌いだなんて何一つ思っちゃないよ? 瑠李が努力してる姿をさ、見てきたの私たちだよ? そりゃ嫌いになるわけないじゃん。確かに置かれてる立場はさ、紅白戦終わったから多少変わると思う。でも私らはさ、アンタにいてくれないとダメなんだよ。……大丈夫だよ、私たちはアンタの味方だから。」
瀬里のこの言葉に、瑠李の心境はというと、それまで彼女を覆っていた闇が取り払われたような感覚になった。
「……瀬里……ごめん……私が一番……チームのこと、分かってなかった……」
瑠李はそういって瀬里に抱き着いた。
「いーよ、瑠李……好きなだけ、甘えていいからさ……その代わりさ、瑠李。私たちもアンタのこと、理解するように努力するから。……約束して。もう一回さ、チームメイトとして、頑張ろ?」
瀬里も瑠李を抱え込んでいる。
「ゔん……ゴメン……ありがと………」
瑠李は泣きながら感謝を瀬里だけじゃない、全員に述べたのだった。
その後、春希と瑠李は、保健室にて応急処置を受けていた。
二人は顔を氷嚢で冷やしながら、椅子に横並びで座っている。
二人の眼前には夏岡がいた。
「麗奈から事情は聞いたよ。けど、私は君たちを咎める気はないよ。……君たちが理由なく、殴り合うなんてことはないからね。」
「……そうですか……先生、すみませんでした……ご迷惑をお掛けしました。」
夏岡は優しい顔のまま、二人にそう言ったが、当の瑠李は難しい顔をしていた。
「で、どうだい、春希。……ちょっとはスッキリしたかい?」
春希はこれに苦笑いして答えた。
「アハハ……まあ、そうですね。ちょっと、蟠りは取れたかな、って感じですね。」
夏岡はニコニコしながら頷いて聴いている。
「……瑠李にはさ、さっきも言ったけど、悔しかったら泣いていいしさ、甘えたかったら甘えてもいいんだよ。まあ人間誰しもすぐ出来るわけじゃないからさ、ちょっとずつでいいんだよ。前に進むのは簡単なことじゃない、でもさ……一歩、足を踏み出すことは……誰でも出来ることだから……無理をしすぎない程度にやっていけばいいよ、瑠李は。」
「……善処します……みんなにも、言われたので……。」
しみじみと言った瑠李に対して、春希は瑠李の背中を左手でバンバンと叩いた。
「そんな自信なさげに言うなって! 瑠李さー! 私がいるから大丈夫だって! 遠慮なんてしなくてもみんな分かってくれるって!!」
夏岡は笑っていた。
「やっぱり仲がいいね、ここ二人は。今後が楽しみだよ。……二人ともさ、いっそのこと二人っきりで今日はどこか行ってみればいいんじゃないか? 誤解も解けたことなんだからさ。」
「うーん……そうですね……瑠李、ファミレス、行こっか。小田原駅、ゆーて何もないからさ。無難に行こうよ、今日は。」
「そ……そう……だね、行こっか。二人で。」
珍しく意見が合った二人はお互いの顔を見て笑い合った。
「そんな空気なら大丈夫そうだね。じゃ、私はこの後飲みに誘われてるから先に行くよ。二人も気をつけて帰んなよ。」
そういって夏岡は保健室を後にした。
瑠李は自身のスマホに入ったメールを確認した。
麗奈からだった。
その内容を見て、春希にこう呟いた。
「……ゴメン春希……二人っきりはちょっと無理そう……」
「? どうした? 瑠李。」
「あー……いや、麗奈にも誘われた……。まあ私個人でも麗奈と話あったからいっそ3人で行く? 春希…。」
「瑠李、気が合うね、今日は。……私も麗奈にお礼が言いたかったからさ……」
「お、お礼、って何よ春希……てかアレ仕込みだったの!?」
「そんなんじゃないよ? 気にしすぎだって瑠李。」
「ま、まあいいや。行こうか、春希。」
こうして二人は保健室を後にして、瑠李はカバンを取りに教室へ戻っていった。
二人はファミレスで麗奈と合流した。
そして3人で話し合った。
麗奈が本題を切り出した。
「瑠李さん……これ、勝手に持っていってすみませんでした。」
といい、麗奈は瑠李の日記を瑠李に手渡した。
瑠李は苦笑いしている。
「あー……それは別にいいよ、麗奈。実際アンタには見せてるし。」
「え、瑠李それ何!? 見せてよちょっと!!」
「辞めてよ恥ずかしい!! なんの得があるの! アンタに!!」
「いーじゃんいーじゃん? なんで会って間もない麗奈には見せて、付き合いの長い私には見せないのかな? 瑠李さー??」
「うー………ん……まあ、あんまり拡げなかったらいいけどさ……てかダル絡みしすぎだって春希。」
渋々、瑠李は日記を手渡した。
それを見た春希は大爆笑だった。
瑠李は恥ずかしい気分になった。
「瑠李どんだけ素直になれてなかったのさ、さっきまで!! アハハハハ!! あー、お腹痛い!!」
瑠李はため息をつく。
「はー……他のお客さんいるのに笑いすぎだって……そんな面白い? それ。」
「いやー、ゴメンゴメン……そんなこと考えてたのか〜、ってなっちゃってさ……」
「はー……もういいわ、春希……それは返して。……で、本題なんだけど……」
と、瑠李が切り出した。
「そのー……さ、ありがと、ね。麗奈。ヨリ、戻してくれて。……私のこと、聞いてくれて。」
しみじみとした顔で麗奈に礼を言った瑠李。
だが麗奈は、こう至れたのも二人がぶつかって歩み寄ろうとした結果だと謙遜した。
「瑠李さんに声を掛けたのは……私の好奇心ですから。確かに春希さんにもキッカケを作ると私は言いましたよ。お二人がぶつかって、理解しあったから今こうやって話せてるんだと思いますよ?」
春希もことの顛末を話した。
「うーん……まあ、私もさ、瑠李のことを私が話してなかったら……瑠李、下手したらあのまま辞めてたかもしれなかったから……それが嫌でしょうがなくってさ。だから敢えて麗奈には私たちのことは喋った。……それが上手くいって良かったなとは思うし、私も瑠李に言いたいこと言えたし。……でも瑠李があんなに溜め込んでたなんて思ってなかったけどね、殴られるまで……」
麗奈は頷いてはいるが、相変わらず顔が笑ってはいなかった。
一方の瑠李は苦笑いを浮かべている。
「だからさ……うーん、何て言うんだろ。『ワラナン』に来てくれてありがとね、麗奈。……アンタが間に立ってくれてなかったら絶対ヨリ戻せてなかったと思う。」
春希は改めて、麗奈にお礼を言った。
麗奈は今後の展望を話した。
「まあでも……ヨリは確かに戻ったとは私も思いますよ。でもそれはチームワークでの上ですから。……私が言いたいのは今後の話です。……おそらく私がAチームに瑠李さんと入れ替わりで入ることになると思います。でもそうなると、『私が相棒になる』って言ったさやかはどうなるのか……そうなった時に瑠李さんは絶対欠かせない存在になりますから。……私がこんなことを頼むのはアレですけど、瑠李さん、さやかの教育係になっていただけますか? ……正直、インターハイ予選まで2ヶ月くらいしかないのに、それに合わせるのに手一杯になりかねませんから。それに、私に万が一何かあった時に瑠李さんにはいてくれないと困ります。……今日の紅白戦を見て確信しました。私の代わりは貴女にしか務まらない、と。」
瑠李は驚いた顔をしていた。
だが、了承はした。
「うん……まあ、大丈夫だよ、全然。……でもさ、麗奈。アンタに限ってそんなことはないだろうけど、一応言っとく。……Aチームに対してナメたプレーしたら、私が速攻で戻るから。そこは覚えといて。その代わり、アンタの代わりになれるように頑張るから、私も。……コミュニケーションも、何もかも。」
「望むところですよ。私だって、プライドがありますから。チームを勝たせるトス、挙げ続けますから。」
この二人の熱いバチバチを、春希は頷いて聴いていた。
「やっぱバレーには熱いね、瑠李。でも大丈夫だよ。もし瑠李がコートに入ったとしても、アンタのトス、忘れるわけじゃないから。……気楽にやればいいよ、瑠李。」
「……そうだね、春希……ありがとね、二人とも。ちょっと、気が楽になった。」
こうして数時間、3人の会話が続いていた。
翌日の練習にて。
瑠李は新一年生の教育係として、麗奈はAチームの正セッターとしてコートに立っている。
瑠李は少しずつ、ではあるが、一年生にどういうトスがいいのかという内容でコミュニケーションを取っていた。
それは精神的に余裕が出来ていないと出来ないことだった。
瑠李は着実に成長していく、そんな雰囲気を予感させていた。
そして練習後の夏岡と瑠李の会話にて。
「瑠李さ、ちょっと話すようになったんじゃないか?」
「そう……ですかね……? まだ慣れてないのでアレですけど……」
「それでいいんだよ、最初は。心に余裕が出来たっていう、何よりの証拠だよ。……やっぱり君にいてくれないとチームが困るね。その調子で頼むよ、瑠李。」
「……ありがとうございます……精進します。」
そう言った瑠李に、満面ではなくとも、柔らかい笑顔が浮かんでいたのだった。
紅白戦の終幕は、瑠李の心境が軽くなったところで終わります。
実際、マジでいてくれないと麗奈が怪我した時とか、本当に困りますしね。実際トスだけだったら瑠李は引けは取りませんから。
さて、次回からインターハイ神奈川県予選編になります。
対外試合が多くなりますから、超絶長くなりますが、是非見守ってください。
ただ、最初は日常をお送りいたしますwww
登場人物紹介、次回は蓮です。
お楽しみに。
あと、一点報告があります。
4月10日現在、イラストレーターの「柴た」さんにTwitterのDMでオファーを僕が直々にいたしまして、挿絵を描いていただけることになりました。現在鋭意製作中ということですので、どこかの話数に完成品をそこに挿絵として入れたいと思いますので、今後とも、「黒崎吏虎」をよろしくお願いします。




