第12セット お互いの「相棒」
実際は一進一退の展開になってますが、得点の詳細を書くとテンポがゴミ悪くなるし、アフターストーリーを早く書きたいというのもあるんで、割愛させていただきます。ご了承ください。
さて、今回のキャラ紹介は、春希です。
河田春希 小田原南高校三年 相模原東中出身 バレー歴は小4から 6月25日生まれ B型 右利き アウトサイドヒッター 170センチ 56キロ 3サイズB88W60H87 好きな食べ物 味噌ラーメン 趣味 下の弟たちと遊ぶこと、漫画を読むこと
小田原南のエース。瑠李とは中学時代からの同級生で、中高ずっと同じクラス。
JOC神奈川県代表の最終候補までに呼ばれたが、選ばれず。
パワースパイクとジャンプサーブを武器にする、典型的なパワーファイター。スパイクは、ブロックのタイミングさえ合わなければ止められることはほぼ無い。
社交的で明るい性格のからかい上手で、下の弟や妹と遊んだりするので母性もある。
家族構成は両親と6人兄妹の三番目。一番下の弟はまだ4歳。《25(姉)、21(姉)、18(春希)、11(弟)、7(妹)、4(弟)の姉弟構成》
瑠李の過去や家庭環境を最もよく知る人物。自身もいじめのターゲットになりかけたが、瑠李とクラスのメンバーの間を取り持ったことで事なきを得たが、その代償で瑠李とは距離を置かれるようになった。引退前までは瑠李を自宅に招くほど、仲が良かったが、それ故に見捨てることが出来ないでいた。
瑠李からは、なんだかんだ信頼されているが、中学の時のこともあり、鬱陶しがられたりもしている。
紅白戦をキッカケに瑠李とヨリを戻そうと画策している。
その後、一進一退の状況が続いた。
一瞬でも気を抜いたら流れを持っていかれかねない、そんな状況下で、両チーム冷静に、着実に得点を重ねていった。
現在、19-18。
Bチーム一点リードのこの状況だ。
そして先程、芽衣がスパイクを決め、芽衣がサーブに行った。
Aチームの空気が張り詰めた。
その中で芽衣がサーブを打った。
そのサーブは大きく伸びてアウトになろうかというところだった。
だが、そのサーブは大きく揺れ落ち、エンドラインいっぱいに落ちた。
これがジャンプフローターサーブの不規則性が起こす怖さ。
Aチームはノータッチエースでサービスエースをこの試合初めて奪われた。
Bチームは喜びに沸き立った。
マジか……と、莉子奈は一言呟いた。
だが、呆気に取られている暇はなかった。
連続得点を遂に取られ、これでBチームが20点の大台に乗せた。
あと5点、そのタイミングだ。
と、春希が笑みを浮かべた。
「ヤバい……最高に面白いな……この状況……。」
こう漏らした春希。
そして、瑠李にこう言った。
「瑠李……こっから全部さ……私に挙げて。今なら……全部決められる気がする……。」
瑠李は無愛想な表情を浮かべた。
だが、意図は察していたようで、
「……了解。」
瑠李は春希とアイコンタクトを少しだけ合わせた。
そして芽衣のサーブが来た。
ユラユラと不規則に揺れたサーブを、莉子奈がオーバーカットで処理をした。
Aパスがキッチリ通り、後衛から走ってきた瑠李の頭上にキッチリと上がった。
瑠李はこの時考えた。
一度クイックに挙げようか……、そう思ったら、ライトから春希の大声が聞こえてきた。
「こぉぉぉぉぉぉい!!!!!!!!!」
膝を曲げ、バックトスでその反動を使い、高いトス……、サードテンポのトスを挙げた。
思い切り踏み込んだ春希。
彩花、さやか、真理子の3枚のブロックが来ていた。
春希は歯を食いしばり、渾身の力を込めて撃ち込んだ。
彩花のブロックを思い切り弾き、芽衣も蓮も、取れない位置にボールが落ちた。
渾身のガッツポーズを取った春希。
一方、Bチームはというと。
「……春希さん、本気で打ってきてた……。当たった左手……まだ痺れてる……。」
芽衣は、Aチームがいよいよ勝負所と踏んでいたようだ。
これには麗奈も同じだったようで、
「……こっちはこっちのやり方で行きますよ……。Bにエースと呼べるのがまだいないですし……あれがエースのやり方ですよ。でもこっからは……全員で勝ちに行きますよ。」
この一言に全員頷いた。
20-19。
ここで春希が後衛に下がった。
ジャンプサーブが来る。
笛が鳴り、春希は一息ついた。
そして、高々と挙げたボールを思い切り弓形に体を引き、腹筋を打つ瞬間で力を入れ、渾身の力で春希はジャンプサーブをぶち込んだ。
ゴウッッッ!! という風を切る音と共に、レセプションに入った芽衣の腕を弾き飛ばした。
いくら麗奈でも蓮でも、壁に行くようなボールは取れるわけがなかった。
サービスエースとなり、今度はAチームが連続得点で20-20の同点に追いついた。
エースのプライドを全て込めた渾身のサーブ。
気迫が春希を纏っていた。
「これが……エースの気迫か……。」
真理子がこう呟いた。
「……負けらんないね、尚更。絶対挙げてやる……。」
蓮も闘志を燃やしていた。
そして、再び春希はジャンプサーブをぶち込んだ。
蓮がギリギリのところで挙げて、短いながらも麗奈へと繋いだ。
麗奈は真理子とアイコンタクトを取った。
真理子は思い切り後ろへ下がっていた。
真理子へ挙げる雰囲気を醸し出しつつ、さやかにAクイックを挙げた。
藍がブロックでワンタッチを奪い、後ろに逸れた。
桃華がレシーブで挙げ、ボールが宙に浮いている間に、瑠李は「フレミングの法則」のようなサインを出した。
藍がAクイックに入り、さやかはそのクイックに飛びかけた。
だが、察した。
これは罠だ、と。
瑠李は速いバックアタックを春希に目掛けて挙げた。
さやかは慌てて飛んだが高さが出ていなかった。
さやかの上を通ったスパイクは、麗奈と蓮の間を抜け、インコートに落ちた。
2連続得点で、Aチームが遂に逆転した。
強い……、そんなことを思っていたBチーム。
だが、麗奈に慌てた様子はなかった。
「……大丈夫。ウチには最強の素人がいるから。」
静かながらも、闘気が滲み出ていた。
そして、さやかにこんなことを言った。
「……こっから全部……。アンタに挙げるから。全力で入ってきて。」
これにさやかも頷いた。
「……わかった……。絶対決める……。」
その目にはいつもの天真爛漫さは消えており、勝負師の目をしていたのだった。
そして、三度ジャンプサーブがきた。
今度はネットインだ。
ガシャン、と白帯に当たり、勢いのまま、前衛に来た。
真理子がこれをアンダーハンドで挙げた。
さやかにBクイックを挙げた麗奈。
しかし、韋蕪樹がこれを読んでいた。
これをシャットアウトし、これでAチームが3連続得点。
これで20-22だ。
Bチームはもう、後が無くなってきていた。
事実さやかはまだ、ほぼクロスとセンターの正面しか打てない。
コースのバリエーションの乏しさ。
それがこの勝負所で出てしまっていた。
「さやか……そういう時もある。厳しい事言うけど、さやかはまだ、経験値が圧倒的に浅い。それが出てる。これも経験。だからその経験値、私が作るから。……どんなに止められてもいい。決めきれなくてもいい。その代わり、私は……。私たちは、全力であなたのサポートをするから。」
自分を信じろ______。
さやかに麗奈はそう言った。
さやかは不甲斐なさに拳を握り締めつつ、一息吐いた。
「……麗奈ちゃんを……信じる……。……ごめん、決めきれなくて。正直今の私だけじゃ限度があるし……だから……、みんな……力を貸して!!」
さやかの力強い一言にBチームは全員頷いた。
四度ジャンプサーブが来る。
芽衣は落ち着いてこれを挙げた。
だが、少し短かった。
さやかは構わずクイックに入った。
麗奈はそれを信じ、さやかに縦のクイックを挙げた。
韋蕪樹もブロックに飛んでいる。
さやかもギリギリまで粘り、視界にボールが入った瞬間、ムチのような腕をしならせて、韋蕪樹のクロスのコースを打ち抜き、コートにボールが叩き込まれた。
これで流れを断ち切ることに成功し、21-22。再び一点差だ。
「……ここで縦、か。……麗奈も勝負に出たね。」
莉子奈はこう呟いた。
そして藍も語った。
「………瑠李の『相棒』が春希なのだとしたら……麗奈の『相棒』は、さやか……。二人とも、信頼関係がなければ出来ないことだと思う……。」
まさにお互いのセッター同士の「相棒」の撃ち合い。
紅白戦がクライマックスへ突入しようというところまで来たところで、最大級の死闘が展開されようとしていたのだった。
紅白戦本戦は、あと2話で終わらせます。
今後の予定としましては、アフターストーリーも書くんで、紅白戦編が終わるのが大体あと5話くらいかなーと思います。
結構激アツ展開になってきましたね。エースVS未来のエースという感じで。
登場人物紹介は、次回は寡黙なクイック職人、藍を紹介します。
あと2話、全力で書きますので、これからもよろしくお願いします。