第1セット 「無表情の天才セッター」と「元モデルの素人」との出会い
今回バレーボール小説を書いてみました。
ダブル主人公を何もかも対比で描いていますので、是非ご覧になってください。
元バレーボール経験者として詰め込めるだけ詰め込んでいきたいなと思います。
全日本中学校バレーボール競技大会、通称「全中」で神奈川県代表「橋誉中」で全国優勝を果たし、バレーボール専門誌にも取り上げられたセッターの倉石麗奈。
彼女の武器は正確なトスが一番目を引く。
158センチ35キロの華奢な体格で可愛い顔をしたツルペタ貧乳女子。
そして取材中も試合中も試合前も試合後も、どんな状況でも一切表情を変えないポーカーフェイスの持ち主だった。
取材で受け応えた、「セッターは一番目立ってはいけないポジション。そしてスパイカーを一流にもでき、二流にも三流にも成り下がらせるのもまたセッター」ということを取材で話したことでバレーボール界のインターネットでも大反響を呼んだほどだ。
その後、U-15の日本代表にも選ばれ、JOCの神奈川県選抜にも選ばれた。そして神奈川県を優勝に導き、最優秀セッター賞を獲得した。
日本代表でも韓国との交流試合で超正確かつバリエーション豊富なトスで翻弄し、5セット全勝、しかも全てスタメン出場の、フル出場。それも全てのセットで10点差以上をつけたほどだ。
誰もが彼女が強豪校に行って全国大会で活躍する姿を想像し、将来を有望視されていた。
のだが。
彼女は、麗奈は、80もの高校から、県内外問わず、スポーツ特待生としての誘いを受けたが全て断り、全国に一度しか行ったことのない、10年以上ベスト16止まりの公立校「県立小田原南高校」に進学した。
それも一般受験で。
そして入学式。
麗奈はクラスに入るや否や、男子と比べても一際背が高く、そして端正な顔立ちをしたスタイル抜群の美少女____岡倉さやかと出会った。
今年2月にモデル活動を休止したばかりの、現役バリバリのモデルで芸能人だった。
しかし、麗奈はこう思ったりもした。
なぜ芸能人がこんな辺鄙な高校に来たんだ? と。
まあ麗奈もスポーツ推薦を全て断った上でこの高校に来たので人のことは言えないのだが、さやかは東京の通信制に通っていてもおかしくない。
芸能人がなぜ? と思ってたりもした。
式が終わった後、麗奈はさやかに話しかけてみた。
すると、さやかの方も麗奈と話したかったそうで、すぐに意気投合した。
さやかは底抜けに明るかった。
芸能人上がりはみんなこんなふうに明るいのだろうか。
麗奈はそう思っていた。そしてさやかは麗奈に輝いた目で話し始めた。
「私、バレーの全日本代表になりたいの!」
急に何を言い出すのか、と思った麗奈は、冷淡に喋った。
顔色ひとつ変えずに。
「……岡倉さん……バレー経験、あるの?」
「ない!」
経験がないのにいきなりバレーの全日本代表になりたいと言われても反応に困るだけだ。
そして、さやかはJOCの決勝を見てバレーボールをやりたいと思ったそうで、
「麗奈ちゃんのあのトスを打ってみたいの!! 全日本になるにはあの綺麗なトス打ってこそ、だからさ!!」
「……そう。」
熱い想いに麗奈は淡々と返した。
「なにー? ちょっと冷たいな〜、スターになるべき人がさ〜。」
「私はスターでもなんでもない。……ただのバレーボールをやってきた女子高生だよ?」
さやかの熱い思いとは裏腹に、麗奈は冷めていた。
そして麗奈は言い出す。
「身長だけだったら、岡倉さんは代表には呼ばれるかもね。でも代表は大きいからってなれるほど甘い世界じゃない。」
「え〜……辛辣だなあ……。」
「でも……。」
「でも、って何さー麗奈ちゃーん。」
「あなたをその位置まで押し上げることが私は出来る。だから、、私がトスで引き立て役になるから、あなたは私の上がってきたトスだけを打てばいい。」
「え! じゃあ……。」
「………元々ここでもバレーボールをやるつもりだったし、その気なら、、今日の練習に来る?」
「いいの!? ありがとー!!」
「でもまずは基礎からね。すぐにスパイクを打たせれるほどバレーは甘い競技じゃないから。」
ほくほく顔でさやかは頷いた。
麗奈もどこか嬉しそうだった。
表情は一切変えなかったのだが。
この出来事が、代表入りを諦めた天才セッターと、代表入りを目指す元モデル素人のバレーボール物語の開幕を告げたのであった。
結構テンポの軽い小説を書こうと思い、この話を始めました。バレーボールを題材にした漫画はあっても、小説となると動きが難しいので、エフェクト多めで書こうという換算でいきたいと思いますので、今後とも宜しくお願いします。