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みおんと解散した後も、なゆちと湊人はレンタルルームに残り、二人で作戦会議をすることとした。
なお、別れる際、みおんには、「絶対に僕たちが真犯人を見つけてみせますので、安心してください」と伝えておいた。
湊人は、内心では、本当に真犯人がいるのかどうか半信半疑であった。
しかし、湊人が真相を突き止める前に、みおんに警察に駆け込まれたり、別の同業者に相談されたりしてしまうと困る。ゆえに、大風呂敷を広げたのだ。
みおんは、涙を目に浮かべながら、「ありがとうございます」と言って湊人に何度も頭を下げた。
罪悪感を覚えなかったと言えば嘘になる。
「ねえ、みなと、事件の真相は分かった?」
机を前にして横並びに座っていたなゆちが、みおんがいなくなったことにより、その椅子に座ったままで湊人の方を向く。
いつものことながら距離が近くてドキドキする。
「うーん、まだ分からない」
湊人は正直に答えた。
「私、みおんさんの言うとおり、みおんさんをハメようとしている真犯人がいるんだと思うよ」
「どうしてそう思うの?」
「だって、みおんさんが嘘吐いているように見えなかったもん」
探偵を名乗っているくせに、なんて非論理的で直感的な子なのだろうか。
もっとも、みおんがおそらく嘘を吐いていないであろう、という感触は、湊人も抱いていた。
「僕も、みおんさんのことを疑ってるわけじゃないよ。ただ、みおんさんの話をすべて信じようとすると辻褄が合わない部分があるんだ」
とりわけ、最後にみおんが言っていた、TASUKU宅には行ったことがない、という発言は、三木の証言に真っ向から反する。
それとも、三木はみおんの生霊でも見ていたとでもいうのか。
そのとき、湊人のスマホの通知音が鳴った。
湊人は嫌な予感がしたので、気付かないフリをしてやり過ごそうとして、「なゆちは真犯人は誰だと思う?」と話を強引に続けようとしたものの、なゆちとのあまりにも近い距離感が仇となった。
なゆちは、百人一首のような素早さで湊人のポケットに手を伸ばすと、スマホを取り上げた。
「ねえ、やっぱりるるたんじゃん!! この前、通知切ってって命令したよね??」
たしかに、ジェイソン邸からの帰りの電車の中で、なゆちは、湊人に対し、通知を切るように言っていた。あれは「命令」だったのか。
「みなと、そろそろ私も本気でキレるよ?? るるたんが私に似てる?? ふざけないでよね!! 私は世界に一人きりの私でしかないの!!」
この極端にワガママな性格まで込みで考えれば、なゆちに似た女性など他にいないかもしれない。
ただ、顔の特徴が似ているだけであれば、るるたんをはじめ、地下アイドルにも何人かいる。
「ねえ、みなと、どうしてなの?? どうして男は、一人の女で満足せず、別の女に手を出すの?? しかも、その新しい女が元々の女に似てるってどういうこと?? だったら元々の女だけでいいじゃん!!」
いや、そんな単純な話では……
——待てよ。まさにそれこそがこの事件の真相なのではないか。
湊人は、真犯人を、今まで疑いをかけなかったある人物と仮定し、本件について再考してみる。
すると、すべての辻褄が合った。
そして、この人物には十分過ぎる動機もある。
「なゆち、分かったよ!! 新しい女と元々の女は似るんだよ!!」
「え??」
「僕はとんでもない思い込みをしてたんだ。やっぱり犯人は『ジェイソン』だったんだよ」
「は?? みなと、どういうこと?? 私にも分かるように説明して??」
「説明の前に、裏を取らないと」
湊人は、なゆちからスマホを取り返すと、最近登録したばかりの番号に架電をした。
TASUKUの隣人である、三木の番号である。
「もしもし」
「三木さん、僕です。斑鳩佐の従兄弟です。この前話していた女性について、三木さんにどうしても訊きたいことがあって」
「訊きたいこと? 何ですか?」
「バストサイズです。彼女は巨乳でしたか? それとも貧乳でしたか?」
次回,最終回です。
アイドル探偵なゆちがすべての真相を明らかにします。




