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心霊動画

 シリーズ2作目!!

 「ワクワクする探偵小説」が本作のテーマです。

 なゆちとみなとと一緒に,事件の真相を推理しながら読み進めてくださると嬉しいです。

挿絵(By みてみん) 




 その動画がアップされたのは、20××年12月14日、午前3時頃であった。



 動画のタイトルは、「心霊系YouTuber VS ジェイソン〜TASUKUが都内有数の心霊スポットである例の廃墟に突撃してみた〜」であった。

 アップ主は「TASUKU」。

 彼はこの動画以前にも2週間に1度くらいのペースで、心霊動画をアップしていたが、どれも再生数は2桁程度であった。


 しかし、この「心霊系Youtuber VS ジェイソン」は、アップされた時間が深夜であったものの、加速度的に再生速度を増やしていった。



 それは、その動画の内容が、あまりにも衝撃的だったからである。



「みなさん、こんばんは。本日は12月13日。金曜日です」


 動画冒頭、ニット帽に無精髭の男性——TASUKUは、カメラに向かって数分間話し続ける。

 企画の趣旨説明である。

 陽は完全に沈み切っているものの、撮影機材の照明によって、背景が雑木林であることが分かる。


 

 企画の内容は極めて単純。TASUKUが、奥多摩にある某心霊スポットに突撃し、心霊現象が起こるかどうかを検証するというものだ。


 要するに、肝試しである。



 そして、この動画でTASUKUが挑んだ心霊スポットが、雑木林の中にある廃墟、通称「ジェイソン邸」であった。


 「ジェイソン」とは、かの有名なジェイソンのことである。動画冒頭でのTASUKUの説明文句をそのまま借りれば、「13日の金曜日にチェーンソーで人に斬りかかってくる、マスクをした超ヤバイ奴」である。


 このジェイソン邸は、50年以上昔に建築され、持ち主を失ってから20年近くが経過している住居用の建物である。

 なるほど、たしかに日本ではなかなかお目にかかれない洋館であり、雑木林の中に一軒だけポツンと立っているところを見ると、いかにも曰くが付きそうである。


 誰も住んでいないはずのジェイソン邸では、13日の金曜日になると、ジェイソンが姿を現わす。


 そして、ジェイソン邸でジェイソンに出会った者は、チェーンソーで切り刻まれ、惨殺されると言われている。


 真偽は分からない。


 いわゆる怪談話である。




 話を動画に戻す。


 冒頭の説明の後、TASUKUは、カメラと懐中電灯のみを持ち、ジェイソン邸へと足を踏み入れた。


 ジェイソン邸のドアの鍵は開いていた。


 屋外とさして変わらないくらいに土にまみれた玄関を、TASUKUは外履きのまま進んでいく。


 ジェイソン邸の広間は、まるで廃材置き場であった。

 ヨーロッパ製の家具は、もれなく割れた窓から吹き込む雨風、さらには、野生動物の影響で、壊れているか、もしくはひどく汚れていた。

 いかにも廃墟という感じである。



 TASUKUは、持っている懐中電灯で照らしながら、「これは椅子ですかね」「こっちは戸棚ですかね」などと、原形を保っていない物たちを一つ一つ紹介していた。




 それは、TASUKUが、広間全体を覆う、黒ずんだ絨毯の元の柄を確認するためにしゃがみ、立ち上がろうとしたときであった。



 カメラが、目の部分に大きな2つの穴、それ以外の部分にも細かい穴が複数空いた、例のマスク姿の人物の姿をハッキリと捉えたのである。


 その人物——ジェイソンは、薄汚れた白いシャツに黒い上着を羽織った状態で、TASUKUの目の前で仁王立ちしていた。



「うわあっ!! ……で……出た!!」


 TASUKUは、バランスを崩しながらも立ち上がると、出口に向かって全速力で駆け出した。


 途中、壊れた椅子の足を踏みつけ、転びそうになりながらも、TASUKUは無事にジェイソン邸を抜け出し、そのまま雑木林の中を駆けて行った。


 この間、TASUKUが持っているカメラは、当然TASUKUの進行方向を向いており、背後を映していなかったため、ジェイソンが雑木林の中まで追いかけてきているかどうかは分からなかった。ただし、音声としては、TASUKUが息を切らす音と、TASUKUが地面を蹴飛ばす音以外には入っていなかった。



 TASUKUは、もうジェイソンは追いかけていないものと判断したのだろう。ジェイソン邸から150mくらい離れたところで足を止め、背後を振り返った。


 同時にカメラも背後を映したが、そこには生え放題の木々と、暗闇の中にぼんやりとジェイソン邸があったほか、何も映っていなかった。



 TASUKUは無事に逃げ切った——ように見えた。



 途端、空気が変わった。まるでテレビの砂嵐のような、ザーザーという音が聞こえてきて、それにグオングオンという唸る音が続き、ギーという音に変わる。耳をつんざく、とても嫌な音だ。



 TASUKUが元々逃げていた方を再び向くと、そこにはホッケーマスクを被った怪物がいた。

 


 いつの間にやら先回りをしていたジェイソンが、先ほどと同じように、仁王立ちをしていたのである。



 ただ、先ほどとは違い、右手にはチェーンソーを持っていた。



 そのチェーンソーが空を切り、ギーという嫌な音を立てているのである。



 ジェイソンは、チェーンソーを大きく振りかざすと、そのままTASUKUに切りかかった。



 「ぎゃあ」というTASUKUの悲鳴とともに、画面が揺らぎ、そのまま暗転した。


 TASUKUが持っていたカメラが吹っ飛び、地面に叩きつけられたのである。



 真っ暗な画面の中、ジェイソンによる惨殺ショーが執り行われた。


 チェーンソーが人間の肉を断つ音、TASUKUの断末魔の呻きが、以降約2分間にわたって流れ続けた。


 その音声はあまりにも生々しいものであり、この動画に寄せられたコメントは「作り物とは思えない」と口を揃えた。この音声の「クオリティ」の高さが、動画の異様な再生数に直結したのである。



 やがて悲鳴は聴こえなくなり、チェーンソーが稼働する音も止まる。



 そして、真っ暗な画面のまま、この動画は終了した。



 やらせ動画にしてはあまりにもリアリティがあったため、この動画を見た者の中には、YouTube運営に対して、動画の削除を求めた者もいた。


 しかし、肝心の惨殺の場面は画面には映っておらず、ただ「極めてそれらしい」音声が入っていただけだったため、YouTube側の対応は遅れた。




 結局、動画が運営により削除されたのは、動画公開から5時間後、ジェイソン邸前の雑木林において、 TASUKUこと斑鳩佐いかるがたすくが、あまりにも変わり果てた姿で発見された後のことだった。


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