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子育ては森の中⑧

皆さん、こんにちは。

この森に落ちてきて苦節1年と4ヶ月。

ついに新エリア解放、な、ナナです。


「いってきま〜〜しゅ」

アサギの背中からこっちをみている母さんに手をふっていざ出発!

今日は湖の向こうの森に探索!と、言うかみんなのお気に入りの場所に連れて行ってもらう予定なの。


自分で走るつもりだったんだけど、初めての場所だし、こっちの方が安全だからって、アサギの背中に乗せられたんだよ。

誠に遺憾です。


なんて、楽チンだから良いんだけどね。

なんせこっちの世界に来てから体が丈夫になったとはいえ、所詮4歳児サイズ。

体力がすぐにつきるもんで。

温存できるところは温存しなくちゃ、体力無尽蔵な兄弟達になんてついてけませんて。





そうしてアサギの背中で移動すること約1時間。

そろそろ疲れたな〜〜って頃に、本日の目的地その1に到着。


「しゅご〜い。見ちゃことないくだもにょ、いっぱい」

誰かが果樹園でも作ったの?と聞きたくなるほどの多種多様な果物や木の実が集まった場所だった。


「食べたことないもにょもいっぱい〜〜」

と、アサギが食べろと言うように赤と黄色のマーブル模様な果実を差し出してくる。


見た目的には桃な感じ。だけど原色マーブル。

綺麗だけど、果物と考えると微妙……。

けど、みんな普通に食べてるし、きっと大丈夫、な、はず。


「………あま〜〜い」

味はマンゴーっぽい。

口の中でとろけて消えて、かなり幸せな味。

意図せず顔がへにゃりと崩れてしまうくらいに美味しい。


見た目はあれでも味は抜群、なその果実に味をしめ、今度は自分で気になるモノに手を伸ばす。木に巻きついてるツル植物になっていたオレンジにブルーの水玉模様。

どんな遺伝子でこんなキテレツな果実がなるのかは不明。ちなみに形はバナナ。でも房でなってるんじゃなく一本だけついてる。


そのまま丸かじろうとしたら慌ててアカネに止められた。

食べちゃダメなの?と不思議に思えば、取り上げた果実を上手に前足で挟んで固定すると口で皮を剥いてくれる。


あ、これは皮を剥くタイプか。

そして、本当にバナナっぽいね。

皮剥いたら中身ピンクだったけど………。


味はなぜか爽やかオレンジっと。

なんか前の世界との記憶のせいで脳みそ混乱する。

深く考えたら、負けだね。

これはこう言うものだと割り切ろう。


頷きながら食べてると、アサギの方からパリパリと良い音が聞こえてくる。

「アシャギ、にゃにたべてるにょ?」

覗き込むとヤシの実サイズの木の実を抱えて中を食べてるみたい。

真っ二つに割られた木の実の中には、薄い楕円形のものがいっぱい入ってた。

1枚摘んでみると1ミリくらいの薄さて………。


パリッ


「ポテチ!!」

なんと塩味のポテトチップ!


久しぶりの食感に大興奮してパリパリ横取りしてると、私の勢いに圧倒されたアサギが素直に譲って、同じ木の実の色違いを割って食べ出した。

もちろん、取るよね。

そっちはコンソメ味。まさに某会社のあの味!!


まさか異世界にきてこの味に出会えるとは!

しかも木の実!

不思議植物万歳!!






お腹いっぱい食べた後は、シオンの背中に乗って移動。

どうも、お気に入りの場所を紹介する人の背中に乗るシステムみたい。

アサギに乗ろうとしたら、シオンに捕まって背中に放り投げられた。


再び、森の中を移動なんだけど、なんだか今までと少し木の様子が変わってくる。

今まではどっちかというと横にも縦にも大きくドッシリとした感じだったんだけど。


ヒョロリと背は高いけど太さはそれほどでもない感じ……。

あ、白樺っぽい。色も形もそんな感じ。

なんか昔テレビで見た北欧の森を思い出すなぁ。


キョロキョロ辺りを見渡しながらそんなことを思ってたら、不意に視界が開けて、小さな泉の辺りへと飛び出した。

うちの近くにある湖の半分もないそこに下される。


「みじゅうみ?」

綺麗ではあるけれど‥‥わざわざ?

不思議そうな私にシオンがコッチコッチと尻尾を振りながら水辺へと誘う。

そうして前足をチャプチャプと水で遊ばせ、振り返る。


「さわるの?」

促されるままに水に手を浸し、そして息を呑んだ。

「あっちゃかい!!」

水と思っていたそれはほんのりと温かかった。


「え?!おんしぇん?!」

と、横から勢いよくアサギが泉に飛び込む。

追いかけるようにアカネも入っていった。

2匹は競うように泉の中心の方へと進んでいくけど、水の深さはそんなにないみたい。

泳ぐというより歩いてる。


「くぅ」

まだ温泉の衝撃から立ち上がれず固まっている私の頬を、シオンがペロリとなめる。

「入らないの?」というように小首を傾げるシオンに、慌ててタンクトップなワンピースを脱いで、水辺より少し離れた木の根本に置いた。


スッポンポン?気にしない!

なぜなら私は幼児だから。

そしてそばには人っ子1人いないから!


そうしてソロリと足をつける。

おお!お湯だ!

この世界に来てはじめてのお湯!


気温が常春だったから水浴びでも辛くはなかったけど、それとコレは別問題。

お風呂大好きな日本人としてはコレはテンション上がる。

しかも天然温泉!!


感動のままにジャバンと飛び込む。座ってもお臍くらい。浅い。そしてヌルい……。

と、シオンがあっちいくよと鼻先で小突く。


そうしてはしゃいでいるアサギとアカネの方へ行くと………。


「はうぅぅぅ………しふく…………」

湖の中ほどからお湯が湧き出てました。

端の方に行くにつれ湯温が低くなっていた模様。


コポコポと湧き出るお湯は、むしろ熱く感じるくらい。入れないわけじゃないけど、ずっといたら逆上せそうだったんで、少し離れた場所へ移動。

適温の場所を探して、ホゥと、ため息が漏れる。


お湯は無臭だから単純泉なのかな?

と、側からいなくなっていたシオンが、大きな丸太を運んでくると私の横に沈めてくれた。

浮かび上がらないように器用に前足で押さえてくれてるけど、コレは………。


「シォーン、ありあがと」

座ればちょうど肩が少し出るくらい。

そう、ここら辺の水深だと深すぎて立ってたんだよね、私。

シオン、なんて気が効く子!!


そのまま、マッタリと久しぶりの温泉を堪能する。

ふと体を見ると小さな気泡がたくさん張り付いててびっくりする。


コレは、もしかして天然炭酸泉?

昔、テレビで見て憧れてたんだよね。うちの近くにはなかったから、そのうち行ってみたいと温泉貯金するくらい。


「しゅごい……ゆめがかにゃった……」






その後、「もう少し」「もう少し」と粘った結果見事に湯当たりを起こして目をまわし、本日のお出かけは終了したのだった。



読んでくださり、ありがとうございました。


と、いうわけで温泉登場。


硫黄泉にしようか迷ったけど、臭いとか周辺の環境が世界観に合わないかな〜と単純炭酸泉になりました。

人によっては天然炭酸泉香りが分かるそうですが、私は気にならなかったです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりの温泉で湯当たり…日本人なら仕方ないと思えちゃうけど、4歳児のカラダには毒ですね(^◇^;) 100数えて出ないとねー、母狼にも叱られちゃうよ。
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