子育ては森の中〜閑話
1日開いてしまいました(汗
モフ成分が足りないと突如お遊び回です。時系列的には半年くらい前のつもりです。
ブクマ500突破記念って事で\(//∇//)\
「だりゅましゃんが〜〜こ〜〜りょ〜〜んだ!」
緑の木立の中を幼い声が木霊する。
「あ、アシャギ動いた!」
「ぐうぅ」
楽しげな笑い声と獣の唸り声が交差する。
ココは、子育ての森の中。
『何をしてるのかしら、あの子達』
4人の子供達の様子を見守りながら、母親の銀狼は首を傾げた。
木に寄りかかるようにして目を閉じた末っ子が不思議な呪文を時にゆっくり、時に素早く緩急をつけながら唱える。
その呪文が唱えられている中を三匹がソロリソロリと移動する。
呪文を唱え終わった末っ子が素早く振り返り、その瞬間、三匹はピタリと止まるのだ。
止まったポーズから動いたらそこでアウト。
見咎められた者は名前を呼ばれ、末っ子と手を繋いでいる。
『まあ、ナナ発案のゲームなんでしょうけど……」
「おにごっこ」や「かくれんぼ」など、これまでも様々な遊びを提案しては試していた様子を今までもみていたから、そこは今更驚いたりはしない。
だから、母親が首を傾げているのはそこではなくて……。
『なんであの子達は後ろ足で歩いてるの』
彼らは銀狼の一族であり、当然四足歩行である。
なのだが、現在3匹揃って不器用にヨロヨロと後ろ足のみで歩いているのだ。
バランスがとりづらいのだろう。
前足を前に突き出すようにして歩くというよりはピョンピョンと跳ねるように進んでいる。
「だ〜りゅ〜ましゃんがころんだ!!」
急に早くなった呪文のスピードに対応できず、今度は止まり損なったアカネがコロンと転がった。
「アカニェ、アウト〜〜!」
楽しそうなナナの声に合わせるように、アカネもグルグルと笑いながらその場をゴロゴロ転がっている。
先に捕まったアサギも笑う中、澄まし顔のシオンは上手にバランスを取って、ぴくりとも動かない。
「しお〜〜、上手〜〜。でも、まけにゃいもー」
気合を入れ直したナナと澄まし顔のシオンの一騎打ちが始まる。
「だ・る・ま・しゃん・が・こ・りょんだ!」
「だ〜りゅ〜〜〜まっしゃんがころんだ!!」
「だりゅま!しゃんが!こ〜〜〜〜りょんだ!!」
あらゆるパターンの呪文にも負けず、ジリジリとにじり寄るシオンにハラハラワクワクと言った顔のアサギとアカネ。
そして近くなる距離に焦りを浮かべるナナ。
そして………。
「だ〜りゅ〜〜ま「がう!」」
ついにみんなの元へたどり着いたシオンが短い声と共にナナとアサギの繋がれていた手を前足で切った。
途端に、三匹がクモの子を散らすように走り出す。
二本足で。
「シュトップ〜〜〜!!!」
慌てて叫ぶナナは、バラバラに散らばった3人を見渡し、1番近そうなシオンに視線を定めた。
「始めのい〜っぽ!1・2・3………」
無事に6歩目でシオンへとたどり着き、ナナは満面の笑顔で抱きついた。
そうして今度はシオンが鬼になり、日が暮れるまで子供達はその遊びを繰り返すのだった。
「あにょね〜〜、アレは昔のあしょびなの。二本足はだって普通だったらみんなじょうじゅすぎで、ゲームになりゃないんだもん!」
確かに、三匹とナナの身体能力ではたとえ遊びでも箸にもかからないだろう。
『確かにバランスは取れてた……わね?』
首を傾げつつも頷いてみる。
けれど、あの動きは一族の威厳的に‥…どうなのだろう?
湧き上がる微妙な気持ちは、しかし、満足そうなナナの言葉で「まぁ、誰もみてないのだしいいか」と、飲み込まれた。
「あにょね。アレにゃらおにごっこでもナナ追いつけるんだよ〜〜たにょしいの!」
ウンウンと頷く3匹も満足そうな様子で、母親はますます止めるための言葉を飲み込んだ。
みんなが楽しんでいるのなら、それを止めるのは野暮ってものだろう。
そうして。
器用に跳ねながら二本足で高速移動する術を身につけた子供達に「やっぱり止めとけば良かったかしら……?」と母親が後悔するのは、そう遠くない未来の話。
今日はみんなで鬼ごっこ。
勝負にならないって思うでしょ?
ふっふっふ。
実は大丈夫なんだな〜〜。
確かに、そのままなら無理でしょ。
わたし壁走れないし、宙返りなんて夢のまた夢、だし。
まぁ、それを抜きにしても、普通に走るスピード違うんだけどね。
だからね、アクティブな遊びではどうしても置いてかれるわたしはふて腐れて叫んだわけさ。
「みんにゃは足が4本ありゅんだから、じゅるい!!」
はい、完全に言いがかり。
四足歩行の獣に何を言っているのかと。
だけど、優しく賢い兄弟達はひと味違った。
私の訴えを理解した後3匹で額を突き合わせ、何やらごにゃごにゃ話し合い。
そうして、不意にヒョイっと後ろ足日本で立ち上がったのだ。
いわゆるワンコの「チンチン」状態。
初めての事で流石に一瞬だったけど、確かに立った。
それから何度か立つ練習を繰り返し、ついにはチョンチョンとジャンプするように前に進めるようになり………。
3匹のドヤ顔に嬉しくて笑ってしまった。
八つ当たりな私の言葉に、真剣に考えてくれたことが嬉しくて。
思わず飛びついたら、当然耐えられるはずもなく転んでしまって怒られたり、したけれど。
そうして、始まる楽しい時間。
鬼ごっこ。達磨さんが転んだ。かくれんぼは、優れた嗅覚は塞ぎようがなくてゲームにならなかったけど、それでも楽しかった。
「じゃ、アシャギがおにねぇ〜!」
逃げる私をアサギが追いかけてくる。
最近、だいぶスピードが速くなってきたけれど、急な方向転換にはまだ対応できない模様で、私のスピードでもなかなか捕まらないの。
でも、そのギリギリ感がすごく楽しい!
精一杯走りながら笑ってしまって、息が切れて転んじゃったら、アサギが覆いかぶさるようにして、私の顔をペロリと舐めた。
そうして、「つゅかまった〜〜」と笑う私に怪我がないのを確認したと思えば、すぐに立ち上がり、逃げていく。
二足歩行で。
慣れてきたのかピョンピョン跳ぶんじゃなくて、普通に足を交互に出せるようになってきたんだよね。
そして、それが結構早い。
ま、追いつけるんだけどね!
「まぁ〜ちぇ〜〜」
立ち上がり、周囲で様子を伺ってたアカネをロックオン。
逃げるもふもふを追いかけて全力タックルするのだ!
そうして、遊びを通して私の足も鍛えられ、今ではずいぶん早く走れるようになったんだよ。
まぁ、同じくらいみんなの二足歩行が早くなったのは誤算だったけど。
あっちの世界だったら、サーカスで人気者になれた?とか思ってニヤリとしたのはみんなには秘密。
読んでくださり、ありがとうございました。
二足歩行のもふもふ。想像すると萌えませんか?
しかもバランスうまく取れずにチョットヨロヨロしてるとか^_^
ちなみにツタを編んで大縄跳び、も考えたけど、コレは四足でもいいじゃん、ってのとナナの身体能力じゃまだ辛いと思って却下しました。
そのうちやってそうですけどね。