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異世界に落っこちたら小さくなってて、森の中でモフモフさんに育てられてます。  作者: 夜凪
子育ては森の中

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10/16

子育ては森の中⑨

少し間があきました。すみません。

よろしくお願いします。

皆さんこんにちは。

久しぶりの温泉にテンション爆上がりしすぎて、湯当たりした挙句ぶっ倒れたナナです。





目をまわして割と直ぐに起きたんだけど、お出かけ強制終了されて家に連れ帰らちゃったんだよね。

子供の体には色々刺激が強かったみたいで、移動中にまた寝ちゃって、起きたら朝だったから、お出かけ中断しょんぼり、とかもなかったけど。


というか、たくさん寝て元気フル充電って感じだし、お出かけの続き再開を絶賛おねだり中だよ。

だって、まだアカネのお勧め行ってないし!

なんなら、探検して私のお気に入りの場所も見つけたい!


ってわけで、渋る母さんに縋りついてオネダリオネダリ。

ちょっと時間かかったけど、どうにかもぎ取ったよ。

最後には三兄弟も加わって「キューンキューン」って大合唱だったし。

多分母さんめんど………根負けしてくれたんだと思う。うん。





で、お出かけ第二弾!

当然、アカネの背中に乗って出発だよ!


「あれ?そっちに行くの?」

意気込んでた割に、出発の瞬間から首を傾げる羽目になった。


なぜなら、アカネが湖とは反対方向へと走り出したから。

今まで、基本行動は湖周辺だったから、そもそも湖の姿も見ないで別方向に爆走するのに戸惑いしかない。


「ワウ!ワフッ!!」

アカネが何か説明してくれてるんだけど、当然ながら伝わらないし。

まぁ、みんな楽しそうだし、いいんでしょ。


行っちゃだめなところなら、そもそも母さんが止めてるだろうしね。

しかし、おウチのこっち側は本当に未体験ゾーンなんだよね。

せいぜいおウチの周り5メートルくらいしか行った事ないの。


で、ビュンビュン進んでるから分かりにくいけど、なんか少しずつ坂を登ってるような?

そして、木の大きさも少しづつ小さくなってきてるみたい?


気づけば、向こうで見てたくらいのサイズの木ばっかりになってて、変な感じ!

それでも高さは5メートルくらいはあるし、太さだって大人が一抱えくらいはありそうだから、厳密には小さい(・・・)わけじゃないんだけど。


そんな事を考えてたら、今度はその木すらもまばらになって気がつけば草原みたいな所に出てたんだ。


「え〜〜!!もりからでちゃったにょ?」

ビックリして叫べば、横を走っていたらシオンが首を横に振った。


「ワウ!グルル〜〜!」

なんか説明してくれてるみたいだけど………。

うん、ちっとも伝わんないね!

さすがにニュアンスぐらいしか読み取れないから。


キョロキョロと辺りを見渡していると、草の中にポツポツと花が混ざり出し、そうして………。


「うわぁ!おはにゃばたけだ!!」

赤、ピンク、青に黄色。他にも色とりどりの花が一面に咲いていたんだよ!

すごい!!


どうやらここが目的地だったみたいで、アカネが花畑の真ん中くらいで、ゆっくりと足を止めて伏せてくれた。

「しゅごいね!きりぇーね!!」

この世界に来てから初めてみる花々に興奮が止まらない。


だって形も色も様々な花が咲き乱れてて、風にそよぐ様はまるで天国か!ってくらい綺麗だし、ふんわりといい香りまでするし。


「ほんとーにきりぇー」

そっとしゃがみ込んで近くにある赤い花にそっと顔を寄せてみる。

スイートピーみたいな可憐な姿に、うっとりと見惚れていたら、どこからかクスクス笑う声が聞こえてきた。


この世界で初めて聞いた笑い声(・・・)に、驚いて辺りを見渡す。


だけど、兄弟以外に人影らしきものは見えなくて、空耳だったのかな?と首を傾げた時、またクスクス笑う声と共にスイっと顔の横を何かが横切った。


「だれ?!」

バッと振り返ると直ぐそこに光るものがあった。

と、いうか近すぎて逆に見えない。

鼻先にチョン、と何かが触れ光るものはスゥーと離れていった。

そして、伏せたままだったアカネの頭の上で止まる。


「ふぇぇ??」

まじまじと見れば、それはとても小さな妖精だった。

5センチくらいの女の子。まるで、トンボのような形の羽は透き通ってキラキラと光ってる。


さっき、光って見えたのはコレのせい?

「よーしぇーしゃん?」

コテンと首を傾げるとアカネと妖精がコクコクと頷いた。仲良いね。

「おともだち?」

ふと思いついて聞けば再びコクコクと2人に頷かれた。


「しょっか。アカニェはお花もだけどおともだちにもあわしぇたかったにょにぇ〜」

お花にお友達!さすがアカネは女の子って感じね!


「にゃにゃでしゅ。アカニェのいもーとにゃの」

ここは、女の子同士、私も仲良くしてくれないかな?

だって妖精だよ?フェアリーだよ?ファンタジーの住人だよ!ぜひ、仲良くなりたい。

まぁ、そんな下心は置いとくとしても、ご挨拶は大事でしょ。


「*******」

ペコリと頭を下げると、妖精さんはアカネの頭からスイーと飛んできて、何かを話したけど……。

残念!分からない。

なんらすっごい早口でルルルルルとしか聞こえない。しかも巻き舌気味。


コレが妖精語なのかこの世界の標準語なのかは分からないけど、後者の場合は喋れるようになる気がしないわ。

巻き舌苦手なんだよな……。LとRの発音、最後まで苦手だったしね………。

ヤバい、絶望しかない。


ひっそりと落ち込んでいると、妖精さんが小さな手で私の髪をツンツンと引っ張った。

ん?と顔を上げるとほっぺにチューされたよ。それから、コッチコッチと手招きして飛んでいく。

アカネにも鼻先で背中を押されて促され、連れられるままに歩いた先には大きな薔薇の木があった。


見上げるほどに大きな薔薇の木は、七色の花弁を持つ不思議な色の花が咲いていた。

花畑の中でも、このバラが別格なのだと一眼でわかる。


私の語彙力が貧困なせいもあるんだろうけど、この薔薇の美しさを讃える言葉を見つけることすらできないんだもん。

人って本当に美しいものを見ると言葉を無くしてしまうのだと初めて知ったよ。


うっとりと見つめていると、妖精が薔薇の木に飛んでいき、花弁の一つにそっと口付けた。

と、ふるりと木が揺れてそこから滲み出すように人影が出てきたのだ。


キラキラのエフェクトが見える。

それくらい美しい人、だった。

9頭身はあるんではなかろうかというスラリとした体にホルダーネックのマーメードラインのドレスを身につけ、とても優しい笑顔を浮かべている。

瞳はまるでサファイアのような澄んだ翠。髪は薔薇の花と同じ不思議な七色のグラデーション。


「ひゃぁ〜〜〜、ばりゃのめがみしゃまだぁ〜〜」

思わず声を上げた私の前までゆっくりと進んだその人は両手を差し伸べてふわりと私を抱き上げてくれた。

途端になんとも言えない芳しい香りに包まれる。

うっとりと目を細めた私の耳に、まるで春風のように柔らかな声が響いた。


「こんにちは。不思議な魂のお嬢さん」


この世界で、初めて聞いた「言葉」。

驚きに目を見開いた私にその人はニッコリと微笑んだ。


「私は花の妖精の女王。あなたを歓迎するわ」




読んでくださり、ありがとうございました。


新キャラ、登場です。

そして、ようやく言葉の通じる人(?)です。

次回、ナナが少しだけこの世界のことを知る予定、です。

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