第3話
「おはようございま~す」
美紀は、東京の芸能プロダクション、フルスターズに所属している。
今日は事務所に出勤するように社長にいわれていた。
担当マネージャーの毛利のところに行く。
「あの… 毛利さん… 社長からお話があるって聞いたんですけど…」
「来たな。よし、ちょっと来い」
毛利は会議室に美紀を連れていく。
会議室で美紀は動画を見せられた。
人気動画サイトに投稿されたものだ。
タイトルは、『清水美希 ご乱心?』
この間の商店街のライブである。
美紀の歌うシーンがバッチリと映っていた。
美紀の顔がドンドン青ざめる。
毛利がおもむろに聞いた。
「これ、おまえか?」
「いや… ちがいますよ…」
「おまえだろ?」
「ちがいますよ… 似てますねえ」
「ちがうでいいんだな。社長から説明求められてるんだけど…」
「毛利さん。アタシの味方になってくれます?」
毛利が美紀を見た。
美紀はペロリと舌を出す。
「やっぱ、おまえかよー!」
「いや、清水美希ではやってないですよ」
「あたりまえだよ」
「いや、でも、でも」
「どう社長に説明したらいいんだよ」
「これは私個人でやってることで…」
「そんなの通じるワケねえだろ」
「はあ…」
「正直にいうしかないな」
「え~?」
「え~、じゃねえよ!」
「毛利さんが味方になってくれるっていうから、本当のこといったんですよ」
「いってねえよ! とにかく、オレは黙ってられないから!」
そして社長室。
社長の星 満彦の前に毛利と美紀が並んで立つ。
直立不動の姿勢である。
「やっぱり、おまえか…」
「はい、そうでした」
「芸能界のルールって、わかってるか?」
美紀は2人がジッと自分を見つめているのにいたたまれなくなる。
「えっと、契約解除とかですか…」
「…それぐらいの案件だな」
「でも、私、清水美希名義ではやってないんですよ」
「あたりまえだよ!」
毛利が叫ぶ。
「あくまで高木美紀でやってるんですけど、それでもダメですか」
「おい毛利! ちゃんと教育しとけ!」
「申し訳ありません!」
「ん?」
社長が動画に目を止めた。
「これ? 栗山さんか?」
「はあ、はい。アタシ、栗山譲司さんのバンドに参加してるんです」
「え? あの栗山さん? MFVの?」
MVFは栗山がやっていた日本の伝説的ファンクバンドの名前である。
「そうか… 栗山さん、まだバンドやってたのか… え? なんで?」
美紀は今までの経緯を説明した。
すると社長は考え込んだ。
「そうか… う~ん… わかった!」
美紀は社長を見る。
「今回だけは特別に許してやる。高木美紀名義でバンドへの参加もこの件に関してはOKだ」
「ありがとうございます」
「ただし! 今後の報告は必ず毛利に入れろ! わかったな! あと高木名義の仕事もちゃんと契約内だから、契約書に書いとけ!」
「はい!」
社長室を出た毛利は美紀にいった。
「じゃあ、そういうことで、これからはちゃんと報告入れるように」
「はい」
去ろうとする美紀に毛利は声をかけた。
「まあ… なんだ… うまく収まって、良かったな」
「はあ…」
「10年寿命縮んだわ」
中間管理職の悲哀を見た美紀であった。




