テーマ「クリスマスの準備」
「クリスマスには赤が似合うと思わないか?」
クリスマスの準備で退屈していた僕のもとに現れた“何か”は耳元で囁いた、気持ち悪い。
それはそれとして確かにクリスマスに赤は似合うと思う、サンタの服も赤いしクリスマスカラーといえば赤と緑だろう。
「あれなんか赤の演出にはもってこいじゃないか?」
そう言って指さした先にはオーナメントを飾りつける少女の姿、ハシゴを使ってツリーのあちこちを彩るその顔は輝いていてまさに天使だろう。大きなハシゴの上に乗っているから落ちたらひとたまりもないだろうし、“これ”が言いたいのはそういうことだろう。
そこにはない口元がニヤッと笑った気がした。指を甲高く鳴らすと後ろのほうで誰かがつまづいた、そいつが他の人にぶつかるとその人が持っていた物が散らばる、驚いた人々が転んだり叫んだり。その波は少しずつツリーに近づいていく。
大掛かりな悪魔の飾り付けが終幕に近づく。失敗させてやろう。そう理由付けてツリーに駆け寄った。
ツリーまで目と鼻の先まで来たところでとうとうハシゴにも悪魔の手が届く。
「わわっ」
ハシゴが大きく揺れる、振り放された彼女が落下する。
さすがに落ちてくる人を受け止められるほどの力は無く、自分が下敷きになることで彼女を守る。無事でよかった。
「あ、ありがとう」
胴体に激痛が走っているが生きているだけマシだろう。彼女の頬は気のせいか赤みがかっている気がしなくもない。
「どういたしまして」
「ほらな、やっぱクリスマスには赤が似合うんだよ」