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本日2話投稿です。

「恐らくだが、間もなく王都は襲撃に遭う」




 衝撃的な情報だ。なんだよ、襲撃って。


「ほう。驚かんか、流石だな」


 いやいやいや、十分過ぎるくらい驚いてるけど!? あんたが威圧なんてかけるから自動施錠が僕に及んだだけだよ。それに流石ってなによ。


「……クーデターでも起こすの?」

「俺たちがか? まさか。襲ってくるのは魔物だ。デラーマ城塞地下で魔物が跋扈していたのは知っているな?」


 経験済みだろう? という感じで問いかけられたから頷いておく。


「ここの地下通路ももう開通するんじゃないかと言われている」


 何に、と問うまでもない。


 ダンジョンだ。


 デラーマ城塞地下にはツルハシを持ったゴブリンがたくさんいた。ダンジョンが広げられているという可能性を見たからよく覚えている。シーダーは続ける。


「各地の地下には王都と同じように地下通路が設けられている。地下牢とは別にな。王族の避難用通路だろう。もともとよく似た9つの国の併合でできたような国だからな。ルクセンってのは」


 初めて聞いたよ。


「で、その避難用通路がどこもかしこも魔物が出始めているというのが俺たちが今掴んでいる情報だ。魔物たちの動きにおかしな点がある」


「おかしな点?」


 何かに突き動かされているような動きだ、とシーダーは言う。確かにデラーマで出会ったゴブリンたちもダンジョンを広げようとしていたけれど、そんな感じはした。


「それと襲撃にはどんな関係が……」


 それだよ、とドンが少し身を乗り出す。


「王都の地下、つまりここだが。ここだけじゃなく、8大公爵家の城塞地下避難通路全てに魔物が湧いて出る。つまりこの国には魔物がわんさかと溢れ出てくるということだ。この王都の通路を始めにだ。デラーマは恐らく試しに開通させたモデルケースじゃないかと上層部はお考えのようだ」


 上層部。王族と政府関係者たちのことをシーダーはそう表現した。


「もうじき避難勧告が出るだろう。その前に移動しておくことだ。7公爵家はもうすでに領地に撤収しているそうだ。後は身一つ帰るだけにしているんだと」


 肩をすぼめてシーダーは、貴族ってやつは引き際ってのをよくもまぁわきまえているもんだとひとりごちる。ほんとだよね。


「避難勧告っていっても普通の人はどうやって、どこに逃げる?」

「それは……周りの村や町、公爵領になるだろうな。領地によっては税が一時的に撤廃されるだろう。告知されるはずだ」


 なるほど。一応の救済策はあると。だけど、フラクシス公爵領やマサテュール公爵領のマグニアス伯爵の元へ行く人は多いだろう。孤児たちや貧民街で炊き出ししていたのをみんな知っている。


「なるほど……混乱に乗じてスキル継承、ジョブ継承を……」


 マグニアス伯爵は善政を敷くお人だけれど、かなりの切れ者だな。まぁ、闇組織と懇意にしているあたり、単なる善人ではないとは思っていたけれど。


 僕の呟きを拾ったシーダーは口端を少しあげただけだったけれど「さぁな」と言っているあたり、大筋僕の考えは当たりだろう。自身の身の安全や【虹色の翅】の安全を考えればそれはもうお引越しするしかないだろう。家も用意してくれているとのことだし。


 ミーナはどうするんだろう? 不意に騎士団にいる姉のことが頭を過ぎる。防衛だろうな。なんとか彼女の強化を図っておきたい。危険の最前線に立たされるのは彼女たちだ。姫騎士所属と言っていたから、王族、姫様の側近くだろうから専ら逃がすことが主な仕事になるかもしれないし、殿を務めなければならないこともあるかもしれない。


 そう思うと不安がこみ上げてくる。


「でもなんで魔物が?」

「恐らくだが、王族が禁忌を犯したのかもしれない」

「禁忌……」


 前に言ったな? と前置きをして闇組織のドンは続けた。


「70年前にここに追われた元王族がいるって話だ」


 彼との会話を思い出すのは容易だった。なんせスキルのない人間がこの通路にはたくさんいたから。頷いて先を促す。


「彼らはとある儀式の反対をしていた。リスクがあるからやめろと」


 危険な香りがしてきたな。聞いていいのか、この話。後に引けないような気がしてきたが、シーダーは僕を巻き込むつもりだろう。はぁ。


「だが、その儀式が決行されて、この地に施されている結界に大きな影響が出始めた。儀式を決行した当時の王族貴族たちは、反対していた王族と配下の者たちを捕えてさらなる儀式を行なったんだ」


 背筋の凍るお話がどんどん投下されていく。


「最初に行われた儀式は『勇者召喚』だ」


 おいおい、まてまて『勇者召喚』!? 異世界勇者いるのかよ!? 70年前にいたってこと!?


「だが、失敗して結界だけが壊れ始めたんだ」


 あれれ、失敗。


「その結果、魔物が跋扈するようになった上に、新しいダンジョンがいくつも出るようになった。結界が壊れ始めたからだ。だが二回目の儀式で結界は張られ直された。多くの犠牲を伴ってな」


「それって……」


「そうだ。捕えられていた者たちのスキルを何らかの方法で奪い、それを糧として膨大なエネルギーが注ぎ込まれた。70年という期限付きの結界のための力として彼らのスキルは奪われたんだよ」


 最低な話だな。勇者召喚という誘拐に、スキル強奪。


「そして今年、失敗したとされている勇者召喚がもしかしたら発動するかもしれない」


 ぇぇぇぇ。マジっすか!?


「推測に過ぎないがな。それに伴って魔族の侵攻が繋がってくるわけだ。魔族は勇者を恐れている。だから勇者攻略のために動き出すんだろう。彼らは本能的に危機を感じているんだろうな。魔物たちの本来の本能での動きが見られなくなっているからな」


 そんなところに繋がっていくなんて一般人のだれが到達できるんだよ? はた迷惑な話だな。


 魔族って、あれだよね? 妖精の秘境で見たやつ。あれの集合体か? そうなると妖精たちの魔力では太刀打ちできんし、どうするよ?


「伯爵は僕に……あ~そういうことね」


 理解したよ。


「それで、シーダーはどうするの?」


「俺もここを出る。【怠惰の蛇】と合流して組織を立て直して、裏から魔族と対抗する手段を探していくしかないだろうな」


「じゃ、僕の行動への隠蔽工作もお願いするね? いいでしょ?」


 もちろんだ、と彼はこちらに手を差し出してきた。握手を交わして僕たちの疲れる会合はお開きとなった。





 はぁ、えらいことになったな。

召喚勇者は出るかどうかは不明です。

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