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プロローグ

 三人がけのソファーの真ん中に一人腰掛ける令嬢の背筋はソファーの柔らかさとは相反してピンと伸びていた。緊張しているわけではない。貴族の令嬢としての気高さや叩き込まれた作法によるものだ。もちろん着込んでいるコルセットのためとも言えるが。


「ドマール、王都にいる鍵屋の少年を呼んで頂戴。あの子がいれば解決できるはずよ。そうね、報酬は金貨2枚くらいでいいかしら? いいわよね? うん。手紙を準備してくれるかしら? 商談としての手紙にして頂戴。どんなのが中を見て横槍入れてくるかわからないから……そうね、冒険者ギルド経由にしましょうか。そちらのほうが自然でしょう」


 ドマールと呼ばれた執事然とした白髪混じりの紳士はやや頷いて最後まで令嬢の言葉の終わりを待つ。なかなか終わらない眼の前の主のおしゃべりにうんざりした様子もなく、黙々とただ立って耳を傾けていた。


「ですが、お嬢様。冒険者ギルドで大丈夫でしょうか? 手渡しの方が確実性は上がると思いますが?」


 ロマンスグレーの髪を固めた男性は主に意見することを恐れない。面前の令嬢が「意見があるのなら必ず隠さずに言うよう」求めるからだ。こうした関係が生まれたときから築かれている。高貴な貴族の社会で生きながらも驕りを見せない主の生き方に、男は心酔しているほどだ。自分がお世話してきたという自負もあるため、男女の関係というよりは、親子のような間柄になっている。


「そうなのよねぇ……。ではこうしましょう。二通用意して、一つはギルドから、一つは配下の者に届けさせる」


「御意に」


 退室した男は指示通り二通の手紙をしたためる。かつて自身の命を救ってくれた少年の姿を思い出しながら。


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